日本ファルコムの2大看板シリーズ、英雄伝説シリーズで現在展開されている第3期作品群「軌跡」シリーズの最新作から1つ前に当たる「英雄伝説 黎の軌跡II -CRIMSON SiN-」をようやく購入しました。タイトルから判る通り、前作に当たる「英雄伝説 黎の軌跡」の続編です。
PlayStation 4/5ではとっくにリリースされていて、既に次作に当たる「英雄伝説 界の軌跡 -Fairwell O Zemuria-」も発売済みですが、私はこのシリーズをずっとPCでプレイし続けてきましたので、Steamでリリースされるのを待っていて、さらに期待値がそこまで高まっていなかったので値引き販売が始まってようやく購入したというわけです。
「黎の軌跡」の前シリーズに当たる「閃の軌跡」が終盤かなり微妙な出来となっていたため、前作「黎の軌跡」も本当は買うかどうかかなり悩んでいました。ただ意外と評判が良かったので買ってみたところ、「閃の軌跡」シリーズよりは完成度が随分上がったと感じられたため本作「黎の軌跡II」もいずれはプレイするつもりで今した。ただ私は特に入手前に情報をシャットアウトするタイプではなく、評判も当然聞こえてきていました。「黎の軌跡II」はファンの間でも評価が二分される、ある意味問題作だったのです。
結論としては私は「黎の軌跡II」を高評価することは出来ませんでした。それは何故なのかも含め、これ以降解説していこうと思います。
ゲームの都合がシナリオの先に来ている
まず基本的なシステムや設定は続編ということで、前作「黎の軌跡」をそのまま引き継ぎます。

▲「シャード」と称するフィールドを展開することでコマンドバトルに
主人公も前作同様カルバード共和国の首都イーディスで「裏解決屋事務所」を営むヴァン・アークライドで、前作ヴァン1人から始まっていた事務所は半ば押しかけのようなアルバイト助手が次々に加わり、ヴァンのかつての師匠ベルガルドを含めると計8人まで増えていました。
前作エンディングでベルガルドは大陸の他の地域を見に行くという理由で事務所を離れ、また元々首都に住む助手1号アニエス以外のメンバーも、里帰りなどの事情で一時的に不在の状態から話が始まります。
前作で和解した、幼馴染みにして高校時代のヴァンの恋人でもあった遊撃士(民間人の安全を最優先に行動する国際的な組織のメンバー)エレインがヴァンの事務所を訪ねてくることから話が動き始めます。ヴァンは戦闘中ある条件が整うと魔装鬼(グレンデル)という形態に変身するのですが、これに似た謎の犯罪者が各所で殺人を繰り返していて、必然的にヴァンが犯人として疑われているということを教えに来たのです。
自分が冤罪で捕まっては困るということでエレインと共に調査を開始するヴァンですが、ゲーム序盤でそのグレンデルに似た犯罪者(グレンデル=ゾルガ)に、2人は駆けつけたアニエスの目の前で殺されてしまいます。これを見たアニエスが泣き叫んだ途端に、ある装置により時間の巻き戻りが発生して、ストーリーが本格的に始まるのです。
巻き戻った後は同じシーンでも少しずつ条件が変化することで、最悪の展開を避けることが出来るようになります。「黎の軌跡II」では基本的に「デッドエンド」→「巻き戻り発生」→「原因を回避して次のシーンに進む」の流れでストーリーが進行します。
ただ、前作では本人が「匂い」と呼ぶヴァンの第六感によって様々な危機を事前に回避してきた描写があるのですが、本作ではヴァンの第六感は死を迎える直前でも「何か匂うな」程度の反応で、一気にポンコツ化してしまっています。この程度の勘しか働かないのであれば、彼は恐らく遙か以前に命を落としていたでしょう。
ネタバレを避けると触れられる範囲が限られるのですが、散々巻き戻しを繰り返した挙げ句最後はそうなるのか、と脱力するようなストーリーもちょっと閉口します。「黎の軌跡II」というタイトルではありますが、かつて軌跡シリーズ第1作「空の軌跡」の3作目は「空の軌跡 the 3rd」という外伝的な作品だったのですが、「黎の軌跡II」もそれに近い位置付けに感じられます。メインシナリオの薄さを無理矢理ループで補ったような印象しか受けませんでした。
一方でやりこみ要素は大幅に拡充されました。本編シナリオとはほぼ独立する形で仮想空間でのマップ攻略を行う「メルヒェン=ガルテン」が追加されたほか、軌跡シリーズのお約束ともいえる「釣り」など多数のミニゲームが用意されています。
さらに舞台がリゾート地の時には、アクティビティも用意されています。
他にもストーリーに関連した尾行や風船回収などのミニゲームも用意されていますが、個人的にはここまで用意する必要はあったのかちょっと疑問です。基本的にはどのゲームも特別難易度が高いわけではなく、これがクリアできなくてトロフィーが取れないというものがないのは幸いですが。
ちなみにクイズゲームは「軌跡シリーズ」の設定から出題されるのですが、空の軌跡以降全作プレイしている私からすれば殆ど素で答えられるものばかりでした。ただ過去作品をある程度やり込んでいないと景品を獲得するために何回かプレイして回答を丸暗記しなければいけないかもしれません。「1on1」や「ハッキング」は慣れるまでは若干戸惑うと思いますが、ある程度慣れてしまえばむしろ簡単に思えるでしょう。アクティビティの「ドライブ」はいくら何でもステアリングの感覚が悪すぎ(速度が上がると極端に曲がらなくなる)ますが…。
あと一つ追記ですが、私はSteamのゲームを全てHDDにインストールしているのですが、「黎の軌跡」シリーズは読出しにとにかく時間がかかります。私はFPS等はプレイしないのでゲームをSSDにインストールするのは考えたことがなかったのですが、特に「黎の軌跡II」は初めてSSDにインストールした方が良いかもと思ったほどです。描画の細かさなどとトレードオフであることは当然なのですが、それにしてもと思う重さです。
メインシナリオが薄く、サブストーリーも量が不足
システムの方で既に述べた通り、メインストーリーは巻き戻しを多用するため率直に言って薄いです。
続編であることに加えシリーズものでもあることから、前作の設定は改めて説明されることはありませんし、過去作品からのゲストキャラクターも脈絡無く登場します。

▲前々作「創の軌跡」のメインキャラクター、スウィンとナーディア
また彼らに関わる過去作品の登場人物は声やテキストだけで登場することもあり、この辺りは「黎の軌跡」シリーズから始めたプレイヤーはほぼ理解不能と思います。軌跡シリーズ初代「空の軌跡」発表から既に20年以上経過しているわけで、何人のユーザーが脱落することなく付いてきているのか…。
前作では各キャラクターを掘り下げるミニストーリー「コネクトイベント」が充実していたのですが、本作では巻き戻りが発生するため時系列の整合性がとれなくなることもあったのでしょうが、メインストーリー中には組み込まれておらず、「断章」「最終幕」にとってつけたかのように用意されているだけです。

▲エレインのコネクトイベント。ストーカーを捕まえるべく花嫁に扮している
それぞれのストーリーは良く出来たものが多いのですが、メインストーリーとの関連が薄く、本編からは浮いたように感じられるのはマイナス要素です。まあ、メインストーリーが薄いことが全てのバランスを崩してしまっているということになるわけですが。
さすがの部分もあるが、全体的に作りが強引すぎ
次作に当たる「界の軌跡」のストーリーを知っていると、この巻き戻りの意味も理解できるようにはなるのですが、それで「黎の軌跡II」のストーリーの薄さに納得出来るわけでもなく、ループものという大前提が全てのバランスを崩してしまった感が強いと思います。
しかも巻き戻りがあまりにも頻繁に発生するので、途中から「ああ、ここで死んでまたやり直しか」とうんざりするようになります。特に最後の巻き戻りを体験してしまうと「今までプレイしてきたのは何のため?」という徒労感を覚えずにはいられませんでした。
メインストーリーが薄いのに、やりこみ要素やミニゲームが充実しているということで、周回ゲームであるという性格はよりはっきりしたわけですが、ゲームにどっぷりと浸かるタイプでなければ面倒くささが先に立ってしまいそうです。
ちなみに2週目以降ではコネクトイベントの閲覧数制限や釣り餌の不足など面倒な要素は全て解決されますので、1週目をハイスピードモードなどを多用して適当に流して、2週目で本格的にプレイすることで快適にプレイできるようにはなります。ただこのシナリオの薄さで周回プレイをする気になるかどうかです。
ファルコムの大きな特徴である音楽の出来については、ゲーム内のBGMの質は相変わらず高いと思います。ただヴォーカル曲については、歌手を佐坂めぐみに固定してからどうもぱっとしない印象が強いです。下手ではないのですが、歌唱法があまり広い曲調に対応できるタイプでないためか、似たような展開の曲ばかりになってしまっています。
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購入金額
4,224円
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購入日
2025年07月01日
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購入場所
Steam
















タコシーさん
07/28
シリーズで35年位経ちますよ
ゲームもAIが出現してどうなるんでしょう
WINDOWSのAIもそれらしく返答するし、あっているかどうかは
不明ですけどね 新しい波が次々来ますね。
jive9821さん
07/29
初代イースはPC-9800版の5インチFDでまだ持っていますが、CPUがi486でも速すぎて低速モードに切り替えて遊んでいたものが、最新作ではPlayStation 4/5やWindows 10/11向けですからね。良くも悪くも長いなぁ、と。英雄伝説シリーズも初代の「ドラゴンスレイヤー 英雄伝説」は平成元年発売ですからね。
個人的にAIに傾倒している最近の状況には疑問を持たざるを得ません。現状で利用されているAIは何かを生み出しているわけではなく、主にWebに蓄積されたデータを再生成しているに過ぎませんから、これを盲目的に信用するのも危険だなと。
後日レビューを掲載しますが、Google Pixel 9 Proを使って一般向けのGeminiに「Pixel 9 Pro」のレビューを書いてと指示したところ「そんな機種はまだ発売されていません」(要はフリー版は参照データが古い)ですからね。Gemini Advancedではきちんと出力されますが。