イヤフォンケーブルやヘッドフォンケーブルを中心に高価格帯のオーディオケーブルを得意とする国内ブランド、Brise Audioが抜けの良いサウンドと取り回しの良さ(同社比)を特徴とするシリーズとしてリリースしていたのがSTR7シリーズでした。私もこのシリーズは結構愛用しています。
しかし、より細身かつ柔軟性が高いNAOBIシリーズがリリースされたことによるのか、STR7シリーズは製造完了となってしまいました。ただ、NAOBIはSTR7よりやや高めの価格設定なのですが、導体の細さが影響しているのか情報量や密度感でSTR7よりも落ちる感があって、個人的にSTR7を愛用していたわけです。
そのSTR7はスタンダードモデルのSTR7-Std(モデルチェンジによりSTR7-SE→STR7 As-Isとなった後に終売)、STR7-Rh2+、STR7-Ref.とバリエーションがあり、価格も41,800円→88,000円→110,000円と上がります。ベースケーブルは全てSTR7なのですが、端子類のグレードが異なっていたり、皮膜の構造が差別化されるなどしているようです。
たまたま先日2.5mm4極バランス→CIEM 2pinタイプのSTR7-Ref.が、ヨドバシ.comで34,800円まで値下げされていまして、これなら標準グレードの価格なので惜しげが無いということで、シリーズ最上位となるSTR7-Ref.を入手することが出来ました。
以前購入したSTR7-Rh2+と並べてみましょう。qdc WHITE TIGERが装着されている方がSTR7-Rh2+です。
一見するとコネクターやスライダーの色程度しか違わないように見えるのですが、実は皮膜の構造なども大きく異なっているらしいです。
最も大きな違いは2.5mmプラグの部分で、STR7-Ref.はOFC素材の金メッキ、STR7-Rh2+はロジウムメッキの通常素材となるそうです。CIEM 2pin端子側もSTR7-Ref.は金メッキでSTR7-Rh2+はロジウムメッキとなります。なお標準グレードのSTR7-SE等も金メッキですが、感触としてSTR7-Ref.の方が厚手の金メッキのような気がします。
最上位だけに順当に最も良いが、STR7の限界も見えてくる
現在STR7-Ref.は私のメインイヤフォンである64AUDIO U6tと組み合わせて使っています。
今回はこの64AUDIO U6tとqdc WHITE TIGERを用意して、STR7シリーズ3モデル(STR7-SE、STR7-Rh2+、STR7-Ref.)および上位グレードとなるASUHAのスタンダードモデルを用意して、それぞれの組み合わせでどのように変化するか確認してみることにしました。DAPはCayin N6ii/R01、ソースはレコード取り込みのハイレゾWAVで「Hey Nineteen / Steely Dan」と「Fields Of Gold / Sting」を使います。
なおBrise Audio4製品はそれぞれ以下の価格の製品となります。旧製品は値上げ前の価格であるため現行モデル及び最近まで作られていたモデルよりはかなり割安になります。
・STR7-SE : 29,700円
・ASUHA : 49,500円
・STR7-Rh2+ : 88,000円
・STR7-Ref. : 110,000円
U6tとWHITE TIGERでは当然出てくる音には大きな違いがあるのですが、ケーブルの音だけを評価しようとするとどちらでもほぼ同じ結論となりましたので、ここではまとめてそれぞれのケーブルを簡単に評価します。
・STR7-SE
STR7シリーズのスタンダードモデルの第2世代となります。スタンダードだけに音調も大きな特徴を感じさせるものではなくバランス良くまとめられています。STR7シリーズはややあっさり目の音場表現となり、明瞭度は高いのですが残響音や楽器の胴鳴りなどはやや少なく感じられます。当時3万円クラスであったことを考えればよくまとまった完成度の高い製品ですが、上位製品と比べると情報量はやや少なめです。
・ASUHA
STR7の上位製品ASUHAの初代スタンダードモデルです。STR7-SEと比較すると一聴して音場の密度が濃くなること、間接音が豊かになることが判り、上位製品の格を見せつけます。スティングのヴォーカルなど個々の音を聴いていると、実は今回用意した4製品の中で最も良いのはASUHAです。ただASUHAは主にベースライン辺りの低域が妙に分厚く、特にU6tとの相性に難があるのが惜しいところです。WHITE TIGERではそこまで悪くはありませんが、全体的にちょっと籠もる感覚があります。
・STR7-Rh2+
私が苦手にするロジウムをふんだんに使った製品だけに、かなり癖の強い音です。高域にちょっとギラつくようなアクセントが感じられ、ヴォーカルも子音が強く声が細身に感じられます。Brise Audioの説明ではRh2+はハイスピード系・モニター系となっていますが、リファレンスにするには癖が強すぎます。強いて言えば音の粗が出やすい辺りはモニター系といえるのかも知れませんが…。高域方向が地味なWHITE TIGERではアクセントとして許せる範囲に収まるので、普段はこの組み合わせで使います。
・STR7-Ref.
基本的な音調はSTR7-SEと大きく変わる訳ではありませんが、情報量が大きく増えます。またSTR7系としては間接音も豊かに表現され、STR7-SEの上位モデルといわれて素直に納得出来る音です。とはいえやはり基本性能はASUHAに分があるようで、「Fields Of Gold / Sting」ではASUHAのような濃密な空間を構築するには至りません。これだけ聴いていれば素直に納得出来るのですが、価格が半額以下(値上げ前はほぼ半額)のASUHAほどの基本性能が感じられません。通常価格であれば敢えて買うことはないなと感じる出来です。ただ癖が少なく合わせやすいので、U6tにはこのケーブルを組み合わせます。
ということで、Brise Audioは価格よりもシリーズの上下の方が基本性能に直結するということが判ります。ASUHAは基本性能は明らかに他よりも高いのですが、ベースラインが妙に膨らむのが惜しいところで、これで相性の良いイヤフォンがなかなか見つからないのです。STR7-Ref.はASUHAよりは落ちるもののそこそこ情報量も保たれますし、強調感があまり強くないので大抵のイヤフォンとそつなく合わせられるのが長所といえます。
U6tとの相性はこれまで使っていたWAGNUS. Petit NEUTRON Lilyの方が上なのですが、どうしても情報量に限界が感じられていました。ある意味妥協点を見出したというだけではあるのですが、STR7-Ref.は何とか実用に耐えてくれました。その意味では買って十分満足できました。ただコストパフォーマンスという意味ではなかなか難しいところです。
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購入金額
34,800円
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購入日
2025年01月14日
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購入場所
ヨドバシ.com
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