レビューメディア「ジグソー」

結構レアな1988年再発盤

実質リーダーであったギタリスト、テリーキャスを拳銃暴発事故により失った後、低迷が続いていたシカゴが華々しく復活した作品として知られるアルバムです。新メンバーとして多くの楽器を操り、作曲能力が高くヴォーカルにも定評がある事で知られたビル・チャンプリンを迎え、プロデューサーにもビルの人脈から当時売り出し中だったデイヴィッド・フォスターを迎えたことで、当時の最新の音楽へと変貌を遂げることになったわけです。

 

その結果として生み出されたのが、現在に至るまでシカゴを代表する名曲として知られる「Hard To Say I'm Sorry」(邦題:素直になれなくて)でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

また、日本盤ではアルバムタイトル曲となった「Love Me Tomorrow」もヒット曲となりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに、後にTOTOに加入して活躍することになる、映画音楽の巨匠ジョン・ウイリアムスの息子ジョセフ・ウイリアムスが駆け出し時代に提供した「What You're Missing」もシングルヒットとなっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

実際の所、私としてはシカゴのアルバムの中ではさほど気に入っている作品ではないのですが、「Hard To Say I'm Sorry」のおかげで日本でもよく売れたアルバムでした。当然国内盤CD、LPは揃えましたし、米国Rhinoから発売されているリマスター+ボーナストラック盤CDや、Friday Musicから発売されている重量盤LPも揃えています。

 

最近にわかなレコードブームの様相を呈していますが、その中では今でも安定して中古LPを入手できる作品で、レコード初心者の方にも安心してお薦めできます。

 

ただ、ここで注意しておかなければいけないのが、日本の中古ショップで安定して入手できるのは、殆どが当時のワーナー・パイオニアから1982年に発売された、レコード番号P-11219であるということです。当時の洋楽にしては輸入盤の比率が少なめで、普通に探すと殆どの場合このレコードが出てきます。

 

日本では1989年前後から急速にアナログ盤が店頭から姿を消していった訳ですが、実はその直前となる1988年8月に日本国内では再発盤がリリースされていました。

 

これは「Forever Young」シリーズという企画の一環で、洋楽の名盤をCDは2,000円、LPは1,600円と、当時の相場(CDは洋楽アルバムで2,800~3,200円)よりもかなり安価に販売する試みでした。これ以降他のレーベルでも再発時に廉価盤をリリースするという流れが出来上がったという意味で、非常に有意義なものでした。

 

ただ、問題なのがこの第1弾となった本作であっても1988年8月発売なのです。国内盤レコードが1,600円というのは破格ともいえる安さでしたが、この辺りからレコード店のアナログコーナーは駆逐されつつあり、私自身もCDはこのシリーズで買ったのですが、LPは売っているところを見かけることすらないままでした。ましてリリース時によく売れた作品であるだけに、わざわざこの廉価盤を買った人はかなり少なかったようで、中古でもこの再発盤を見かけることは今までありませんでした。

 

それがたまたま今日BOOK OFFのレコードを漁っていると、何枚もある「シカゴ16」の内の1枚だけが、再発盤であるレコード番号16P1-2006でした。これは珍しいと思い、早速購入してきたわけです。

更新: 2024/08/15
総評

音質面でも従来盤より向上

従来盤との外見上の違いは、レコード番号の部分を除けば日本盤ならではの帯にあります。従来のP-11219は黒い帯でしたが、16P1-2006は青い帯が着けられているのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

帯の裏面には同じForever Youngシリーズの第1弾で発売された作品が記載されています。Chicagoは「Chicago 16」「Chicago 17」の2作品で、他にはLed ZeppelinのI~IV、Eaglesの「Hotel California」、Doobie Brothersの「Minute By Minute」、Foreignerの「Agent Provocateur」という錚々たるラインナップでした。だからこそ廉価盤が出ても「もう持ってるよ」という人が多くて売れなかったのだと思いますが…。

 

 

 

 

 

 

誇らしげに「\1,600」と明記されていますが、何しろ売られていること自体滅多に無かったでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

盤面のレーベルデザインは従来のP-11219と変わっていませんし、同梱されている日本語ライナーノートも1982年当時と全く同じ(レコード番号表記を除く)ものでした。

 

 

収録曲も紹介しておきましょう。

 

 

Side A

 

01. What You're Missing

02. Waiting For You To Decide

03. Bad Advise

04. Chains

05. Hard To Say I'm Sorry / Get Away

 

 

Side B

 

01. Follow Me

02. Sonny Think Twice

03. Rescue You

04. What Can I Say

05. Love Me Tomorrow

 

 

実はCDでは何故か「Rescue You」と「What Can I Say」の順序が入れ替わります。初期にはジャケット表記がLP準拠で実際の収録順はCD準拠という事も発生していました。

 

 

レコードの発売打ち切り直前の時期には国内盤の品質が結構上がっていたといわれるのですが、実際に従来盤と聴き比べてみると確かにヴォーカルが一皮むけたような鮮明さとなっていますし、楽器の質感や間接音の豊かさなど多くの点で従来盤のP-11219を上回ります。ただ「Hard To Say I'm Sorry」のイントロでピアノの音が変に揺れるところがありますので、マスターテープの不備があったのかも知れません。他の曲ではメリットの方が多く感じられますので、もし従来盤をお持ちの方がこの再発盤を見つけられたら、入手して聴き比べてみることをお薦めしておきます。

  • 購入金額

    550円

  • 購入日

    2024年08月15日

  • 購入場所

    BOOK OFF

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