前回まででKS-Remastaさんから送られてきた同軸デジタルケーブルの試聴は一通り終わったのですが、実は2本ほどアナログRCAインターコネクトケーブルも同梱されていました。これは私がリクエストしたわけではなく、全4種のラインナップのうち最下位のKS-RCA-001/MR.IIを今まで聴いていないこと、また以前取り上げたKS-RCA-001/STDも改良されて音質が向上していることから改めて聴いて欲しいとのことです。
まあ、率直に言えばKS-RCA-001/MR.IIは聴いていなくても、これまでの経験から何となく音質的な傾向は想像出来てしまうのですが…。
KS-RCA-001シリーズは線材はBELDEN 88760、RCAピンプラグはTOMOCA製ということは公表されています。例によってハンダのグレードによって差別化されています。
外観上はこの型番ラベルでのみ区別できます。
他の試聴機と比べてプラグの擦り傷が多いので、かなり色々な所に貸し出された個体なのかも知れません。
レンジは狭めだがエネルギー感の強さは特筆できる
今までRCAインターコネクトケーブルはTechnics SL-1200GとPhasemation EA-200の間に使う形、即ちフォノケーブルとして評価していました。
しかし、やはり微弱電流を扱うフォノケーブルと、それよりは数百倍増幅される通常のアナログラインケーブルとでは、特徴の出方が変わる可能性が高いでしょう。こちらの試聴環境の事情もあるのですが、今回は通常のアナログインターコネクトケーブルとして使うという前提で、STAX SRM-252Sへの入力ケーブルとして使い、SR-L300で試聴するという形にしてみました。なお、普段はここにはaudio-technica製SUPER PCOCCケーブル、AT6210を使っていますので後日AT6210もレビューを掲載したいと思います。
ソースはデジタルケーブルの時に使った「TOTO IV / TOTO」(Friday Music盤)、「Balluchon / 小川理子」(78rpm)に加え、「Songs About Jane / Maroon5」のLPから起こした楽曲も聴いています。
AT6210の音はとても30年前のケーブルとは思えないほど高解像度かつワイドレンジですから、そういった要素では正直言ってKS-RCA-001/MR.IIは及びません。
しかしKS-RCA-001/MR.IIはKS-Remasta製のケーブル製品に共通するアナログ的なエネルギー感の強さはしっかりと持っていて、ケーブル1本でこんなに音の傾向が変わるのかと驚くほどに表現が変わります。
まず「It's A Feeling / TOTO」を聴くと、ベースラインの存在感やスティーブ・ポーカロのヴォーカルの実在感はKS-RCA-001/MR.IIが上回りますが、主にハイハットの細やかさや金属感はAT6210が明確に上回ります。音場はAT6210の方が少し広く、見通しも良好です。
次に「Smile / 小川理子」を聴くと、ピアノの右手方向はAT6210の方がクリアかつ明瞭ですが、左手方向はKS-RCA-001/MR.IIの方が充実していて、響板の響きも高めの音が後までに残るAT6210に対して、KS-RCA-001/MR.IIでは和音の低い方の存在感が勝ちます。音が細やかなAT6210と音が図太いKS-RCA-001/MR.IIという関係です。この辺りは聴くソースでどちらが有利か変わってくるでしょう。恐らくロック系や大編成のオーケストラならAT6210、アコースティック系や60年代ジャズなどであればKS-RCA-001/MR.IIがそれぞれ有利になりそうです。
さらに「This Love / Maroon5」では、ドラムのキレでAT6210の良さが目立ちますが、アダム・レヴィーンのヴォーカルはKS-RCA-001/MR.IIの方に何とも抗しがたい魅力があります。単純にオーディオ的な性能という意味ではAT6210が上といえますが、音楽の旨味という部分はKS-RCA-001/MR.IIが上手く引き出している感じで、全く違った傾向の持ち主としかいえません。
少なくともごく普通にBELDEN 88760を使った自作ケーブルや通販で作成している業者の製品と比べると、一線を画す表現力は備えているといえるでしょう。実際に音を聴いていただかないとこの違いを実感するのはなかなか難しいかも知れませんが…。
-
購入金額
33,000円
-
購入日
2024年07月06日
-
購入場所
ZIGSOWにログインするとコメントやこのアイテムを持っているユーザー全員に質問できます。