レビューメディア「ジグソー」

同じ生楽器×2のインストデュオだが、それだけに二人の違いがよく判る作品。

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。楽器の組み合わせ。異なる楽器で役割や音域を分け合うのも楽しいですが、同じ楽器の組み合わせというのは、より奏者の特徴が出て興味深いものです。ギターという単音でも和音でも、さらに打楽器としても使える楽器を使って、二人の奏者の才能が発揮された作品をご紹介します。

 

Guitar-Momc。もんちゃんこと門馬由哉と、ちぃちゃんこと瀬川千鶴の二人のギタリストからなるユニット。千鶴ちゃんは、最近ではALL女性メンバーのジャズバンドTHE JAZZ AVENGERS

でのプレイや、その昔アニメ番組スピンアウトバンドのフリをしながら?実はプログレインストバンドだったPARADISE LUNCH

等で活躍する凄腕ギタリスト。

 

門馬は、アコギソロでブルーノート東京に出ることを目標に、YouTubeやソロコンサートなどを中心に活動している。

 

この二人のアコースティックギターデュオがGuitar-Momc門馬はアコギが主戦場のようだが、千鶴ちゃんは他ではエレキも弾く。ただこの作品(デュオ)では封印して、アコギ×2のプレイ。ギターデュオと言っても、リズムマシンや打ち込みのキーボードを含めているものもあるが、グループ名を冠した本作では正真正銘2本のギターのみ。

 

ただスラム奏法などを駆使して、「出せる音は使って行く」スタイルなのもあって飽きさせない。

 

曲調も素朴な「ザ・生ギター」という感じの曲もあれば、攻めたコードやスケールを使ったスリリングでジャジィな曲もある。

 

ただどの曲でも同い年の二人の息の合ったプレイを聴くことが出来る。

 

出だしの「Departure」は千鶴ちゃんの曲。後に彼女の1stソロアルバム

にも収録されたこの曲は、千鶴ちゃんのスラム奏法(=ボディを叩いたり指板をタッピングしてパーカッシヴな音を出す奏法)が特徴的。ソロの方では、THE JAZZ AVENGERSで一緒の中園亜美とのギター×サックスのタイマンバトル?だったが、今回は当然千鶴ちゃん×門馬のツインギター。ソロアルバムの方では、中園が加わることで音色的な幅はあったが、サックスが単音楽器でもあることもあってか、ソロパートは中園のサックスソロと、千鶴ちゃんのスラム奏法による「パーカッション」ソロだった。それがこちらのヴァージョンでは、伴奏も出来るギターが2本と言うことで、よりゴージャス。千鶴ちゃんのスラム奏法を伴奏とした門馬のソロも、門馬のアルペジオから始まって力強いストロークへ至るダイナミックな伴奏をバックにした千鶴ちゃんのソロのどちらも、同じ「アコースティックギター」なのにそれぞれの特徴が出ていて良かった。

 

優しい風」は、タイトル通り優しい調べのフォーク調J-POPのような曲。溜めのある柔らかな重奏で、でも二人のセンスとテクニックがキラリと光る曲。メロディ担当の方も単音だけではなく、複数弦弾きやスライド、タッピングなど小技をちりばめ、それをアルペジオやコードストロークなどで緩急付けながら他方が支えるという曲。サビ部分のコード展開でひとひねりしてあるのが、粋。これは門馬の筆。

 

二人のテクニックが遺憾なく発揮されたのが、二人の共作となる「Skyscraper」。これはまさにギターバトルという感じで、ジャジィなコード展開でシンコペーションの緊張感あるリズムに載せて、二人のテクニックを駆使したソロのぶつけ合いという感じでとてもエネルギッシュ。キメのフレーズも、速弾きかつロングフレーズでスリリング!この曲は一発録りのライヴレコーディングだったんだろうか、導入は千鶴ちゃんの♪スリー、フォー..♪というカウントで入り、ラストフレーズを弾ききったあとには、門馬の「イェイ」という声と、千鶴ちゃんの“やったぜ”という感じの含み笑いが聴けてライヴ感もバッチリ!!

 

このGuitar-MomcのCD、2017年の一枚のみなんだけれど、2020年春まではライヴなどの活動が追える(このときは新型コロナで中止となったようだが)。ただ、ここ数年活動が見えない。

 

SNSのアカウントはまだ残しているようなので、ぜひ次なる活動を期待したいなー。

生ギター2本なのに、二人の差がよく判って楽しい!
生ギター2本なのに、二人の差がよく判って楽しい!

 

【収録曲】

1. Departure
2. Shiroku
3. 優しい風
4. Skyscraper

5. 朧月
6. 霧の街
7. Pulse
8. Garden

 

「Departure」

更新: 2024/06/12
必聴度

同じギターなのに表現の差があって楽しい

曲によって、どちらかが主旋律、どちらかが伴奏固定というわけではなく、1コーラスごと、あるいはパートごとに交代しているので、同じ曲でも二人の弾き方・解釈・展開の差が聴き比べられて楽しい。

  • 購入金額

    1,667円

  • 購入日

    2024年05月11日

  • 購入場所

    Amazon

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