レビューメディア「ジグソー」

デジタル接続でもここまで違うのかと驚く

6月1日、2日は東京都千代田区の損保会館でコロナ禍による休止を経て5年ぶりにアナログオーディオフェアが開催されました。今回は製品として聴くことを期待していたのはTechnics SL-1200GR2程度でしたので、顔見知りのメーカー・代理店関係者や評論家の方への挨拶がてら参加してきたという感じです。

 

出展社の中には普段から私がシェルリード線を多く使わせていただいているシェルリード専門工房KS-Remastaもあり、実は私も自宅で試聴したことがない、1セット60万円の超弩級シェルリード、KS-VWS-Legend / SR-NVK x8+1を試聴させていただいたりもしたわけですが、話の流れで主催の柄沢さんが使ってみて欲しいと取り出されたのが、新たに開発したという同軸デジタルケーブルでした。

 

以前アナログインターコネクトケーブルは一通り聴かせていただいていて、こちらにレビューも掲載していますが、基本的にはデジタルケーブルも同じコンセプトで作られているとのことです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アナログケーブルは線材としてBELDEN 88760を使っていることを公表していて、独自ハンダと加工技術により差別化している訳ですが、今回のデジタルケーブルは線材の正体は具体的なところまでは教えていただいていません。ただ、BELDEN 88760と同様に1メートル数百円クラスのケーブルであり、これを使っていかに75Ωという規格に準拠して伝送するかに全力を注いだとのことです。

 

 

 

 

 

 

 

率直に言ってしまうと、KS-RCAシリーズのように元線材そのものという外観ではないため、こちらの方がちょっと高そうに見えます。柄沢さんの口ぶりからすると実は88760よりも単価は安い線かも知れませんが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

例によってグレードはここを手がかりに判別するしかありません。グレードはKS-RCAシリーズと同様に下からMR→STD→EVO.I→SR-NVKとなっているそうで、今回は中間の2モデル(STD、EVO.I)を預かってきましたので、この2つを先日取り上げたaudio-technica AT-RD5000/1.0と比較しながら聴いていくことにします。なお、このネームラベルがある側を下流機器に接続するのが推奨の形とのことです。

 

 

 

 

 

更新: 2024/06/25
総評

アナログ的な中低域の豊かさ

このシリーズの肝といえるのは、半田付けの技術であると明言されています。今回使っている線材は内部の絶縁体が耐熱素材ではなく、そもそも本来はアンテナ用の線材ですから半田付けしてこのような形で使おうと考える人が滅多にいなさそうですが…。

 

 

 

 

 

 

 

是非コネクターをバラして中身の状態を見て欲しいとのことでしたので、コネクターを分解してみます。

 

 

 

 

 

 

 

耐熱素材でないはずの絶縁体の際までハンダがふんだんに盛られていながら、絶縁体が殆ど溶けていないというわけです。このふんだんに盛られているハンダもKS-Remasta独自のもので、単体でも結構高価なハンダをブレンドするなどして作られているようです。

 

 

それでは音を聴いてみましょう。AT-RD5000/1.0の時と同様にPCとFOSTEX HP-A8をUSBで接続し、HP-A8の同軸デジタル出力をCHORD Hugoの同軸デジタル入力へと接続し、Hugoにヘッドフォンを接続して音を聴く形です。

 

 

 

 

 

 

 

余談ですがこのHugoはバッテリーが干上がってしまっていて、電源を接続していないと起動しなくなっています…。

 

 

試聴ソースはAT-RD5000/1.0と同様に「Balluchon 78rpm / 小川理子」から起こした24bit/192KHz WAVと、「TOTO IV (Friday Music盤) / TOTO」から起こした24bit/88.2KHz WAVです。

 

機器の組み合わせも聴いているソースもAT-RD5000/1.0と全く同じなのですが、出てくる音はまるで違います。高域寄りだったAT-RD5000/1.0に対して、KS-DIGITAL-001/STDは低域から中低域にかけて厚みがあり、エッジが強調される感じも無くなりどちらかといえば柔らかめのトーンになります。高域方向の透明度や解像度はAT-RD5000/1.0の方が上ですが、ベースラインの厚みや質感、ヴォーカルの肉声らしさといった要素はKS-DIGITAL-001/STDが明確に上回っています。

 

「Smile」では小川理子のヴォーカルにAT-RD5000/1.0とは比較にならないほどの肉声らしさが出てきますし、ベースラインの弾み方も十分です。「It's A Feeling」では冒頭でバスドラムとベースの厚みがスネアドラムよりも目立つバランスとなります。

 

音場はAT-RD5000/1.0の方がやや広く見通しも良いのですが、密度感はKS-DIGITAL-001/STDの方が上で、アナログ起こしの音源がきちんとアナログらしく聞こえるという良さがあります。AT-RD5000/1.0では出来の悪いCDのマスタリングのような音に感じられてしまいましたので…。

 

KS-DIGITAL-001/STDの音は音楽としての味わいが色濃く出ている良さはありますが、弱点といえるのはやはり高域方向、ハイハットの金属感といった要素が一歩後退することです。ハイの伸びも僅かな頭打ち感があり、これはシェルリード線のSTD型番にも共通する傾向です。シェルリード線もアナログインターコネクトケーブルも、そしてデジタルケーブルもハンダによる音質の変化に共通した傾向が見られるのは興味深いところです。

 

ケーブルとしての構造は間違いなくAT-RD5000/1.0の方が高度で、理屈の上でも理想型に近いはずなのですが、ごく普通の線材を使っていながらハンダや仕上げでここまでの音に持ってこられてしまうと、ただ感心するしかありません。

 

この次は1つ上のKS-DIGITAL-001/EVO.Iを聴くわけですが、正直言えばEVO.Iの音はシェルリード線で十分理解できていますので、KS-DIGITAL-001/STDに対してどのように音が変化するのか何となく予想は出来ています。次回はその予想が正しいかどうかを検証することになりそうです。

  • 購入金額

    27,500円

  • 購入日

    2024年06月01日

  • 購入場所

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