所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。映画などのフィクションの中には、ストーリーや設定にリアリティを持たせるためにか、そのお話の中で劇が演じられたり、楽器演奏などがされる場合がありますが、その部分を切り出して劇中劇や劇中ライヴの形でリリースされることもあります。実際にすべての曲が劇中で使用されたり演奏まではされなかったものの、主人公の少女の母親をメンバーの一員としたロックバンドがかつて出したアルバムという設定で、映像作品の世界観を固めた楽曲集があります。そんな作品をご紹介します。
スタジオジブリの宮崎吾朗作品「アーヤと魔女」(TVとそれを再構成した劇場版あり)。その主人公アーヤの母親はかつて「EARWIG」というロックバンドを組んでいて、そのバンドが解散前にリリースしたていの作品が、劇中にチラと映るが、そのアルバム、もしくはそのアルバムに入っていたであろう曲(のいくつか)を収めたという設定と思われる作品が、この“アーヤと魔女 SONGBOOK ライムアベニュー13番地”。原則宮崎吾朗監督が詞を書き、半分ほどの曲の作曲と、ほとんどの曲の編曲を武部聡志が手がけ、4人の女性ヴォーカリストが2~3曲ずつ歌うという作品。
レコーディングに参加したのは、プロデューサーかつほとんどの曲の編曲担当で、キーボーディストの武部聡志、「アーヤと魔女」に出演した声優でもあるシェリナ・ムナフ(Sherina Munaf)、ヴォーカリストでドラマーでもあるシシド・カフカ、ギターコンビのGLIM SPANKY、そしてベースにはYOASOBIやももいろクローバーZでのプレイで、注目度急上昇中のやまもとひかるちゃん(楽曲によっては、ゲストプレイヤーによるパートの追加や入れ替わりあり)。
スタート曲の「Don’t Disturb Me」は、かっけぇオールドロック。曲とオルガンは武部。とにかくこのオルガンがかっけぇ。ドラムスはシシド・カフカ、ベースは元Mrs. GREEN APPLEの髙野清宗、ギターはGLIM SPANKYの亀本寛貴。これをバックに歌うのは、アーヤの母親、つまりかつてロックバンド「EARWIG」のヴォーカル兼ギターだったという過去?持つ人物を演じたインドネシアの声優兼シンガーソングライター、シェリナ・ムナフ。ラウドなバックに負けない、力がある声。日本での活動歴が長いのもあってか、シェリナも訛りをほとんど感じさせない発音で、日本語の詞を歌う。この曲は劇中で主題歌・挿入歌として歌われたので、まさに「EARWIG」の楽曲。
カントリーチックで、ウエストコースト~サザンロック系のテイストもある、アコースティックな「The House in Lime Avenue」。この曲ではギターコンビGLIM SPANKYの二人、松尾レミと亀本に、武部という布陣。武部がキーボード、亀本がエレギで、松尾がヴォーカルに加えて、アコギとシンセ、パーカッションなどを担当。低い音域は少しダミる松尾の声がむしろ「それらしい」。
そして今回の目当ての「Belladonna」。ひかるちゃんがライヴで複数回演奏したこの曲、ベースとヴォーカルはひかるちゃんで、ドラムスはシシド・カフカ、ギター亀本、キーボード武部という布陣。他の曲に比べると現代的なロックで、タムをリズムパターンに入れたヘヴィなドラムとギターのリフでゴキゲン。ひかるちゃんもソロで使うよりドスの効いた声で歌っているのだが、いかんせん地声がカワイイ♡w。ただ他の曲との色合いの違いはともかく、曲そのものはキャッチーでロック!
この作品、ひかるちゃんの1stソロライヴでも、2ndソロライヴでも「Belladonna」が取り上げられていたので、どこでリリースされているのか調べてたどり着いたモノ。ま、「Belladonna」1曲目当てに買ったわけだが、もうひとつのひかるちゃんの曲「One Brown Eye & One Blue Eye」はベースとギターとユニゾンリフとオルガンが入っていることで、他の曲との親和性が高かったし(相変わらず声は一番カワイイので、ドス効きダミめに造った声質が多い他曲とはやや浮きだがw)、10曲中7曲でひかるちゃんがベースをプレイしていて、それも堪能できたので、買って正解。
アニメ主人公の母親が、かつて組んでいたバンドの楽曲が収められた作品、しかもそのバンド、「EARWIG」の楽曲として劇中で使われたもう1曲(エンディングテーマの「あたしの世界征服」)は含まれていないと、サントラではなくイメージアルバム+α、さらに言うと「作品全体のイメージ」ではなく、「作品に登場する人物たちがかつて組んでいたバンドのイメージ」と非常にニッチな作品。しかし楽曲の質は高く、主人公の「親世代の音楽」ということで気持ちオールディな作風の曲が多いという凝った造り、歌詞にも映像作品を読み解くヒントがあるなど、造り込みも深くて、映像作品から入った人もより世界を楽しめる作品になっています。
ま、自分としては「Belladonna」が聴けてそれで満足だったのだけれど(レビューだいなし
【収録曲】()内ヴォーカル担当
1. Don’t Disturb Me(シェリナ・ムナフ)
2. Sweet Little Boy John(シシド・カフカ)
3. One Brown Eye & One Blue Eye(やまもとひかる)
4. He Has Long Ears(シェリナ・ムナフ)
5. Twelve Witches(シェリナ・ムナフ)
6. The House in Lime Avenue(松尾レミ<GLIM SPANKY>)
7. On the Long Dirty Table
8. A Black Cat(松尾レミ<GLIM SPANKY>)
9. Pie and Chips(シシド・カフカ)
10. Belladonna(やまもとひかる)
「Don’t Disturb Me」
やや説明不足の「アーヤと魔女」の世界観を拡張をしたい人や、参加アーティストのファンなら是非に
ま吾朗監督の歌詞を読んでも、「アーヤと魔女」自体が原作者(Diana Wynne Jones)の遺作となってしまったのもあったか、伏線(と思われるもの)が結局回収されずに終わるのは変えられんが。
ただ、シシド・カフカ+亀本+武部+ひかるちゃんのバンド「EARWIG」は結構強力。
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購入金額
2,682円
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購入日
2023年09月02日
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購入場所
Amazon
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