所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。以前から、レコードやテープに録音されたフレーズやヴォイスをつなぎ合わせて曲に仕立て上げるMOD曲は創られていましたが、最近ではPC上に簡単にサンプリングファイルが取り込めるようになりましたので、以前に比べるとMOD系楽曲の制作の敷居は低くなっています。しかし、その切り貼りデータを「曲」にまで仕上げるのは並大抵のことではありません。関連のVTuberのゲーム実況配信から印象的なワンフレーズを切り取って、印象的な「曲」に仕立て直した作品をご紹介します。
GYARI、ことココアシガレットP(ココシガP)。2008年より継続的に活動する同人アーティスト。活動開始当初は、当時出たばかりのVOCALOID、特に調教(機械臭さを可能な限り廃し、自然な形で歌わせること)が難しいと定評があった鏡音リンを使い、ジャズテイストがある楽曲を歌わせていたが、そのリンが一緒にバンドをやっているのが、同じVOALOIDであるドラマーのKAITOとベーシストの初音ミク、途中で行方不明(つか、引きこもり?)だった双子の弟鏡音レンだというバックボーンストーリーを描いてからは、そのトリオもしくはそのカルテット中心に、残るピアプロキャラクターズである巡音ルカやMEIKOを絡ませストーリーを発展させて、ジャズ調楽曲をリリース、さらにクリプトン・フューチャーメディア社から離れて(つか同社のリリースしたVOCALOIDキャラが尽きた)AHS社の猫村いろはまで加えて、ジャズ調楽曲をベースに「延々と繰り返す系」の長尺曲を3連発でリリース、最後にその3曲のテーマを内包する集大成楽曲を上梓して、このシリーズは一旦休止。
その後、歌を歌わせるアプリであるVOCALOIDではなく、本来文章を読み上げさせるためのアプリであるVOICEROIDに歌わせるという試みに興味が移り、このシリーズを数作連続でリリースする。
この間、VOCALOIDの方は若干脇に追いやられていたが、Bumpyうるしを中心にVOCALOIDユーザーであるボカロP達のグループが企画し、VOCALOIDとVOICEROIDを共通の声音とすることを目標に製作された、結月ゆかりと紲星あかりに関してはVOCALOIDとVOICEROID両方の曲をリリースしていた。
そして、その後GYARIの興味は、VTuberのプロデュースに移る。自身で面接し選定した「ゲーム配信する」VTuberに自身のデザインした姿を纏わせデビューさせ、そのVTuberの活動を支えるというもの。この2020年から始まった動きは、何名かのVTuberの活動終了はあったものの、2024年現在も続いている。
そのVTuner関係のグッズ類はいままでいくつかリリースしているが、設定集
と並んで、VTuber達の配信音声を切り抜いて、再合成して曲に仕上げたものがある。
その“Hello VOMS”は、製作された2021年後半に、GYARIのプロデュースするVTuberグループVOMSに所属していた4名のVTuberの配信音声から切り取られているが、もうひとつ、4人の中では「二期生」にあたる羽渦ミウネル(はねうずみうねる)の声だけを使ったMOD曲が存在する。
それが「私の酸素を吸わないでほしい」。
ボードゲームで遊びたい羽渦ミウネルが、メンツを集めたら、いつの間にかメンツがほぼ固定されて、ミウネルボドゲ部というものが出来たのだが、彼ら(このときのメンツはチェリ子、plan熊野プラン、花丸ちよ、まろ谷、羽奏こはく)が、2022年11月にオインクゲームズの変形すごろくゲーム「海底探険」をプレイした配信、この中でミウネルが発した言葉が切り取られ、加工されている。
面白いのは、切り取られたのはたった3フレーズで、その中でも「この夢の結果が見たいの私は」はCメロで一回だけ、「ゼロ」はラスト付近で連呼はされるものの前半は使われておらず、印象として8割方の歌詞?が「私の酸素を吸わないでほしい」であるということ。
この「海底探検」というゲーム、すごろくによる移動という運要素と、参加者全員で「酸素」を共有していて各メンバーの行動が互いに制限されるという頭脳プレイ要素を兼ね備えたゲームだが、途中でミウネルが冷たく言い放った「私の酸素を吸わないでほしい」という言葉をサンプリングし、メロディに沿わせて再配列して曲として仕立てている。
とくにフレーズの冒頭部分(「私の」くらいまで)は、他の参加V達の声が周辺音として乗っているのだが、苦労してそれを目立たない形にまで下げ、サンプリングしたセリフのピッチを変えて「歌わせて」いる。ミウネルとGYARIは、単に姿をデザインした「ママ」とそのVという関係のみではなく、VOMSグループとして活動の輪の中にいるので、頼めば歌ってもらうことも可能だろうし、少なくともセリフを素材としてクリアな収録をすることも出来ると思うが、あえてそれをせず、配信中の何気ないセリフを切り取って加工し、歌に仕立て直すことで、臨場感・刹那感を大切にしたというか...つか、Mなの?Mなの?
そんなネタみたいな生い立ちの楽曲だが、曲そのものは意外に?ジャジィで良曲。中間部とアウトロのソプラノサックスソロは、ネタ系の歌詞との対比として、より際立っていて、耳を惹く。
そして今回面白いのは、この楽曲の提供方法。以前はGYARIも物理CDを頒布していたが、最近はダウンロード提供になっていて、製作した楽曲に使ったキャラのストーリー(結局それが歌詞そのものになっている)をまとめた同人誌に、ダウンロードアドレスを印刷した形の提供方法になっている。
...ということは、アドレスさえ「頒布出来れば良い」わけで、メールなどでのアドレス販売でも良いわけ。物理的なアドレスが記された「モノ」を用意するにしても、それは紙(同人誌)じゃなくても良くね?となったのか、今回は「アクリルフィギュア」が頒布物。そのフィギュアの裏面に、楽曲音源やMVを収めたdropboxへのアドレスが記されているという誂え。
楽曲提供の方法が「羽渦ミウネル “私の酸素を吸わないでほしい” DLCアクリルフィギュア」
裏にはデータダウンロード用のアドレスが...(赤枠部分、加工済み)
アクリルフィギュアの方は、全身像だが高さ10cmほどで、大して大きいわけではない。
この曲のMVにも登場する、水中に着底しようとしている感じのミウネルの姿の裏に記されたダウンロードアドレスを辿ると、曲としては「私の酸素を吸わないでほしい」がインストなど3形態が2ファイル形式で収められ、そのMVでも使われたイラストが2種も添付されている。さらにこの曲のMVが「文字あり」「文字なし」の2種収録されている。
「私の酸素を吸わないでほしい」は、文字通りミウネルが♪私の酸素を吸わないでほしい♪と繰り返すだけの?曲なのだが、妙な中毒性があり、気がつくと口ずさんだりしてたりして??
「私の酸素を吸わないでほしい」は、ミウネルの声が収められたものの他に、ミウネルの声抜きのモノも収録されているが「off vocal」ではなく「off voice」となっているのが特徴的(MV冒頭のクレジットも、「歌:羽渦ミウネル」ではなく「声:羽渦ミウネル」となっている)。メロディーラインの音階の高低差はついているものの、元はゲームの途中に発した言葉なので、「歌」に仕上げる際にかなり加工が入れられてヴォイス部分は人工的なテイスト。なので、それらがない曲の部分だけを聴くと、それはそれでかなり高品位なジャジィで粋な曲になっている。
同人誌同梱曲と違って、「マンガ」はないので、illustフォルダはサムネイルとそのトリミングアップだけなのだけれど、movieフォルダにはMVが2種、YouTubeにも公開されているもの(の冒頭の台詞が削られたモノ)と「ノンクレジット版」として、題名以外すべての文字が表示されないモノとが収められている。
最近ダウンロード販売やサブスク販売の比率が増加して、以前に比べてモノが残りづらくなってきているけれど、アクリルフィギュアというブツが残るような販売方法は面白い。以前大所帯アイドルグループが華やかなりしころ、推しのCDの売り上げを支えるため、ひとりで何十枚もCDを購入するドルファンもいたようだが、ダウンロードになってからは以前より難しいことになっているようだ。
このDLCつきアクリルフィギュアは、そう言った層にもアピールできるアイテムかも知れません。
【仕様】
アクリルフィギュア
高さ約100mm
ダウンロードコードつき
ダウンロード内容
audioフォルダ
私の酸素を吸わないでほしい - off voice - limiterOFF.wav
私の酸素を吸わないでほしい - off voice.mp3
私の酸素を吸わないでほしい - off voice.wav
私の酸素を吸わないでほしい.mp3
私の酸素を吸わないでほしい.wav
Lyrics.txt
illustフォルダ
artwork_私の酸素を吸わないでほしい.png(動画のサムネイル正方形変型データ-2142×2142-)
thumbnail_私の酸素を吸わないでほしい.png(YouTubeのサムネイル画像~-3808×2142-)
>__MACOSXサブフォルダ
._thumbnail_私の酸素を吸わないでほしい.png
movieフォルダ
・私の酸素を吸わないでほしい.mp4
・私の酸素を吸わないでほしい - ノンクレジット映像.mp4
「私の酸素を吸わないでほしい」
「酸素」という言葉の座りの良い音感と、危機的な意味?のとのアンバランスさが...
聴けば聴くほど洗脳される。
最強
そして気が付かないうちに、酸素、酸素と繰り返している...
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購入金額
1,530円
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購入日
2024年02月20日
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購入場所
メルカリ
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