レビューメディア「ジグソー」

ジャズの音に見事にマッチ

今では主にヘッドフォンメーカーとして知られている米国GRADO LABS(グラド)ですが、元々はフォノカートリッジから始まったメーカーです。それもOrtofon SPUよりも前の1953年にMCカートリッジを開発したことから始まっています。

 

現在はMI型の発電系を極限まで軽量化することが出来た結果、MCよりもMIが優れているという思想で、ラインナップ全てがMI型(MM互換)としてリリースされるようになっています。

 

現在のラインナップでは低価格帯のPrestigeシリーズ、中~高価格帯のTimbreシリーズ、ハイエンドのLinageシリーズ、モノラルやDJ特化モデルなど特殊用途のSpecialityシリーズという構成になっていますが、Timbreシリーズは同一モデルに出力電圧の高低が用意されています。実はTimbreシリーズは前世代まではReferenceシリーズとStatementシリーズに分かれていて、Referenceシリーズが高出力、Statementシリーズが低出力という位置付けでした。つまり現在のTimbre高出力モデルはReferenceシリーズの後継、Timbre低出力モデルはStatementシリーズの後継というわけです。正直ややこしいですね。GRADO製カートリッジの中にはMI型でありながらMCという型番のものもあり、余計に紛らわしいことになっています。某販売店のレビューに至ってはStatementシリーズをMCカートリッジと表記しているものもあるくらいですし…。

 

以前Timbreシリーズの各製品を試聴会で聴かせていただいたことがあり、聴くソースによっては素晴らしく魅力的な音が出ていました。その時に中心に聴いたのがTimbre Master 3という製品で、その前身となるReference Master 2がかなりの安値で処分されているのを見つけてしまいましたので、思わず購入してしまいました。ここ1ヶ月くらいの間に額の大きい買い物が連続していて財布の中身が恐ろしいことになっていますが、中古でもこの価格はまず出ないだろうということで…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビックカメラの店頭で購入していますので、当然ながらナイコム扱いの国内代理店正規品です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紙箱の中には、このかなり立派な木製ケースが入っています。カートリッジの箱にしては妙に重い訳です…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カートリッジとしてはかなり大柄です。本体はGRADO製のミドルクラス以上のカートリッジで採用されている木材であるオーストラリア産のジャラ材で作られています。このボディ構造を見れば一目瞭然と思いますが、MI型でありながら針交換は出来ません。もっとも楕円無垢針でありながら寿命の目安は800時間以上(これは特殊ラインコンタクト針を採用する私のメインカートリッジ、audio-technica AT-OC9/IIIと同等です)ですから、破損するかよほどこのカートリッジだけを使い続けない限りは針交換が必要になることは無いと思いますが…。

 

さて、ヘッドシェルに装着しようとしたのですが、このカートリッジはビスの穴が本体上面にしか用意されておらず下まで貫通していません。ネジ穴も溝が切られているため、ヘッドシェルも上側からビスが貫通するものしか使うことは出来ません。私の定番であるaudio-technica AT-LH/OCCシリーズは駄目というわけです。そこで上面貫通型でそこそこ質の良いものと思い手持ちのヘッドシェルを見回してみると、Ortofon LH6000程度しか残ってなかったので、これを使うことにしました。ちなみにLH6000はOrtofon Cadenzaシリーズの形状に最適化されていて、先頭部が丸みを帯びているため、大柄なGRADOのボディには全く似合っていませんが、まあ仕方ありませんね。

 

 

 

 

 

 

 

シェルリード線については、これも手頃な在庫が無かったため、試聴用のリファレンスとして使おうと用意していたKS-Remasta KS-Stage121EVO.Iを組み合わせることにします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作業が雑だったのであまり綺麗に仕上がっていませんが、そこはご勘弁ください。

 

 

 

 

 

 

 

Technics SL-1200Gで使うため、針先は根元から52mmにセットするべきなのですが、LH6000では最も前に出しても51mm少々しか確保できていません。場合によっては先日Clearaudio Virtuosoと組み合わせたOrtofon LH8000と入れ替えるかも知れません。木製同士で見た目の相性もこちらの方が良さそうですし…。

 

更新: 2024/02/23
総評

ピアノやウッドベースの芳醇さは見事

まだそれほど長時間使っていないので本領を発揮しているとはいえないはずですが、現時点での音を確認してみましょう。いつも通りTechnics SL-1200G+Phasemation EA-200で聴きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずはすぐ近くに置いてあった「Hell Freezes Over / Eagles」を聴きます。

 

ライブ盤の雰囲気は良く出ていますし、低域方向のゆとりはそれなりに高価なカートリッジであることを実感させるだけのものがあります。ただ少しスネアドラムが大人しいことや、ヴォーカルのサ行の抜けが少し地味な感じあり、総じて少し主張が弱い感じがします。振動系がほぐれてくればもう少しダイナミックさが出るかも知れません。

 

次に「HYMN / Sarah Brightman」を聴いてみますが、少しこの辺りからほぐれてきたのでしょうか。決して録音の良い盤ではないのですが、サラ・ブライトマンのバックのオケのスケール感がなかなか見事です。ただ、やはりここもヴォーカルの主張が少し弱めです。もっとも、このレコードの場合あまりヴォーカルの主張が強いと録音の粗がはっきり感じられてしまいますので、このくらいのバランスの方が意外とまとまりは良好です。

 

今度は「Chicago 18 / Chicago」です。こちらは思ったよりはアタックにもきちんと反応していますし、ホーンセクション、特にA面2曲目「Forever」におけるウォルト・パラゼイダーのサックス・ソロがハッとするような生っぽさを感じさせます。このレコードもお世辞にも音が良い訳ではないのですが、予想以上に上手く聴かせてくれました。シンセドラムにもう少し豪快さが出てくれればより満足度は高まるはずです。

 

そして「The Newest Play Bach Volume.1 in Digital Recording / Jacques Loussier」です。実は試聴会のTimbreシリーズで素晴らしかったのはこのレコードでした。それだけに期待を込めて聴いてみたのですが、その期待値を超えてくるほど素晴らしいのです。ピアノは倍音の豊かさとタッチの明瞭さが見事に両立していますし、ウッドベースの質感は私が所有するカートリッジの中でも最良でしょう。高域方向もやや地味ではあるものの緻密さは十分にあり、このレコードを聴いている限りは何の不満もありません。

 

 

 

 

 

 

 

というわけで、実際に試聴した製品の先代に当たる製品ですが、それでも期待したとおりの音はきちんと出してくれました。一般的なMM系カートリッジと比べるとGRADOの主張通り緻密さや繊細さは十分に出ていますし、こだわりのジャラ材ボディのおかげか、楽器の音色に生々しさが感じられます。

 

打ち込み系の音やハードロックはあまり合うとは思えませんが、録音の良いジャズ系のアルバムなどとても合いそうです。この価格でこの音が得られれば納得するしかないでしょう。

  • 購入金額

    29,430円

  • 購入日

    2024年02月18日

  • 購入場所

    ビックカメラ

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