素直な音質でつい最近までcybercatの基準DAPだったONKYO DP-X1A
だが、バッテリーの保ちが悪くなってきた。バッテリーを交換しても良かったのだが、現在のONKYOは事業ごとの譲渡や合併を繰り返していて、メーカーとしての今後が見通せないのもあって、駆動時間が短くなったDP-X1Aは「おうちDAP」にすることにし、別途入手していた「百合DAP」ことShanling M3X Limited Edition
に、持ち出しにも使うメインDAPを交代させることにした。そうなると、現在ポタオデリスニングの中心となっているバランス接続の接続端子が変更になる。
つまり今までの2.5mm4極バランスから、4.4mm5極バランスに変更というわけ。
2.5mm4極バランス端子は、ONKYO DP-X1Aの他にも、通常現車載DAPとして使用しており、そのコンパクトさから時々持ち出しもしているPLENUE D2も、現在はヴォリュームやボタンが接触不良気味で予備DAPとなっているCayin N5もAstell&Kern AK120+"Balanced Mod"も共通なので、今まで持っているバランス用ケーブルはすべて2.5mmバランス。
ただ、プラグの強度や規格制定の経緯などの問題か、最近は2.5mm⇒4.4mmへとバランス出力規格を乗り換えるメーカーも複数出てきており、今後4.4mm5極バランスが標準になりそうな流れ(ポタオデ機器にコンパクトさの優先順位を上位に置く層は、スマホかワイヤレスに移行したので、DAPをわざわざ買う層にはやや大きめの4.4mmでも問題ない)。そこで、これを機に変換プラグ(ケーブル)で凌ぐのではなく、ポタオデの持ち出し用低価格基準ケーブルを変更し、自分にとっての「バランス接続規格の標準」を選ぶことにした。
「持ち出し用低価格基準ケーブル」とは、「一番持ち出して酷使する」ケーブルのため、満員電車で引っかけられて断線したとしてもドン底まで落ち込まなくて済む「ソコソコ未満の価格」で、音色にヘンなクセがついておらず、出先でイヤホンやケーブルを評価するのに比較対照の「基準となりうる」ケーブル。
この用途では、イヤホン(IEM)としては、素直な音質であまり脚色がなく、コンパクトで持ち出しやすいWestone UM Pro50
を使っている。それに合わせるケーブルとしては、いままでNiceHCK(HCK/Shenzhen HCKexin Electronic Technology Co.,Ltd)の銀メッキ銅線と高純度銅線の8芯線
を使っていた。このケーブル、比較的安価なわりに音が良く、音傾向としてはアタックが強めでややメリハリ調になるとは言え、全体としてはクセがなく使いやすいケーブル。不満はスライダーがケーブルに引っかかるような形状で、スムーズには動かないことくらいだった。
ただこれはMMCX⇔2.5mm4極バランスだったので、4.4mm5極バランス環境に換えると決めたときに刷新する必要ができた。しかし、同じ線材でプラグが4.4mm5極バランスという仕様のケーブルに換えたのではない(つか、このNiceHCKというメーカー、メチャクチャラインアップが広く、バーンと大量生産して数売るケーブルもあれば、100本程度の少量ロットで、多品種展開する場合もあって、無限とも思われるほどケーブルの種類もあり、さらに命名方法に強い規則性が感じられず、極めつけは公式な「カタログ」というものもないので(なにせネットでは有志が一覧表を創っているくらい)、前回購入時から時間が経つと「前と同じ物を買う」のが極めて難しい)。
2023年中盤時点で、NiceHCKで「高コスパシリーズ」と呼ばれているケーブル群があったので、それらを試してみることにした。
それが「Catシリーズ」。当時4種類あったそのケーブルは、価格帯もプラグ類の意匠も統一感がない「シリーズ」だが、複数の「Catケーブル」が内外で好評だった。
そこでそれらを入手して、評価することにした。
まず、一番低価格ながら、「ヴォーカルが明瞭」で、低価格帯ケーブルの中ではメリハリがありつつも、嫌な強調感などが少ないと、2023年初のスーパーハイコスパリケーブルの代表だった黒猫ことBlackCat。
廉価帯のケーブルなので、ケースなどはなく、この状態でビニール袋に入って届く
その名の通りちょっとぬめっとした感じの黒い被覆で覆われていて、プラグ類は重量感と実際重量もあるステンレス。コネクターやスプリッター部分に細い筋彫りと金色に着色された部分があり、ケーブルのビニール管があるテラっと光る太めケーブルはやや仏具くさい雰囲気もあり、同じ黒ケーブルでも日本ディックスのNox
のような精悍さはない。
ただ、しっかりとした頑丈そうなケーブルは、外使いでもあまり気にかけなくても良い感じ。
そして何より安い。自分は販売モールのセール時期に、さらにクーポンを使って購入したので2,000円を大幅に切って購入。現時点(2023年11月)では同じモールでの底値2,500円程度、日本のAmazonのNICEHCKショップの値付けは3,000円少々という感じで、わさわざ音質向上のために購入するリケーブルとしては今でも決して高額ではない範疇。
線材としては、「アメリカ製の特殊オイルコーティング亜鉛銅合金ケーブル」を使っているらしい。オイルコーティング=油浸ケーブルというのは絶縁の手法で、海底ケーブルなどに使われている。一般に絶縁に使われているエナメルは、素の銅線にエナメル塗料を焼き付けて絶縁するものだが、これはオイルでコーティングして絶縁効果を得ているもの。そして、導体素材は亜鉛が加えられた銅合金。銅に亜鉛を加えているので、亜鉛が20%以上の比率であれば真鍮となるが、販売元のページのアヤシイ日本語ではなく、英語表記に変更しても“brass”の記載はないので、そこまで亜鉛比率は高くないのだろう。ただ真鍮は銀に次いで電気伝導性が高いので、リケーブル素材としてその効果を狙ったのだと思われる。
ではこのBlackCatはどういう味付けなのだろうか。いつもどおり、メインDAP=Shanling M3X Limited Editionの4.4mmバランスアウトに、直接BlackCat⇒Westone UM Pro50とつないで評価してみた(DAPのセッティングは、ゲイン=Low、DACモード=Turbo(DUAL DAC)、EQ=スルー)。
小編制ジャズのハイレゾ録音(PCM24bit/96kHz)、吉田賢一ピアノトリオの「Never Let Me Go(わたしを離さないで)」をアルバム“STARDUST”から。
これは下の芯がきちんと出ている。ベースが太い。ベースソロなどはアタックも強いが音に重量感があって座りが良いが、高い方はシンバルがかなり優勢で、結構シンバルレガートに引っ張られる。銀系の線の細い感じの高音ではなく、派手めの高音域。ちょっと音量下げめで聴くのが良い感じ。
宇多田ヒカルのハイレゾソース“Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.1+2 HD”(PCM24bit/96kHz)
から「First Love」。これはベースが結構主張するが、ヴォーカルもそれに負けないほど主張する。ギターなど響きはやや抑えめになり、シンバルの広がりなども狭いが、ヴォーカル主役とすれば悪くない。ラスサビのドラムやストリングスが盛り上げる部分も、ヴォーカルとベースが中央にドンっとあって主役とわき役が明確。
おなじ女声バラード、女性声優洲崎綾(あやちゃん)が歌う「空」は、彼女のイベントでリリースされたファンブック“Campus”の付属CDから。
同じ女声バラードとは言っても、エレキギターやキラキラしたシーケンスパターンなど音数が多いので、あやちゃんの声が埋もれ気味になる機材もあるが、このBlackCat+UM Pro50の組み合わせは結構ヴォーカルを目立たせる。ただ周囲も結構面で攻めてくるので、「First Love」ほど「主役」という感じが強くないが。
おなじあやちゃんが歌う音飽和系打ち込みダンス曲「ヴィーナスシンドローム」(ゲーム、アイドルマスターシンデレラガールズより)。
これも結構ヴォーカル目立たせていて埋もれない。ただその他はクリップ気味のキックよりもシンベの音がさらにそれを上回って「来る」のと、ハイハットがシャカシャカと刻む音が攻めてくる。一方環境によってはかなり目立つ音である、ギターや駆け回るシーケンスパータンなどはやや背景に溶ける。
ビートコンシャスなジャパニーズフュージョン、ロック調の「RADIO STAR」はオリジナルではなく、ゲストベーシストにJINOこと日野賢二を迎えたセルフカバー集“虹曲~T-SQUARE plays T&THE SQUARE SPECIAL~”ヴァージョンで。
ベースとキックの絡むタイトなリズム、ハイハットの細かいテクニックなど個々が結構目立って分析的に聴ける。ただバックに回った音はやや背景に沈む感じで、持続音のシンセやソロ以外のピアノ、2本入っているリズムギターなどは、他楽器が盛り上がってくると掻き消され気味。
一転、ロックの古典スタンダード、Eaglesの「Hotel California」は同名アルバム(24K蒸着盤)から。
Don Henleyのヴォーカルは今一歩前に来て欲しいところだが、Randy Meisnerのベースはしっかりと前に出て、ピラミッド型音造りのあの頃の楽曲をしっかりと支える。ティンバレスの響きなどの高音・金属系の音にはさほどにハッとする響きはないが、Don Felderのレスポールはいい音してるな...
ゲーム艦これのBGMをフルオーケストラアレンジした交響アクティブNEETsの“艦隊フィルハーモニー交響楽団”の中から、
戦闘シーンで使われたという「鉄底海峡の死闘」。これは下の力があって悪くない。金管やシンバルなどの攻撃力も高い。ただ、上はヴォリュームによってはやや五月蠅い感じの攻撃力、そしてそれらの音に掻き消されてバックの音はあまり明瞭ではない。ちょっと荷が重いか??
高ビットレートのmp3(269kbps)は、YOASOBIやももいろクローバーZのサポートベーシストとして注目されているやまもとひかるの2nd配信シングル「NOISE」。
このラウドな曲、ベースとヴォーカルが目立って欲しいので、結構相性が良い。それだけでなく、ピアノのバッキングやバスタムのドゥンという力感もあってご機嫌。この曲にはかなり合う。
上手く狙えば2,000円程度で購入できるケーブルとしては、かなり上出来。ただ、ぬめっとした太めで粗い編みのケーブルと、金色と銀色で、重めのプラグ類という癖の強いアピアランス、そして実測も4芯としてはかなり重い約47.4gの重量と、太めで「沿わせづらい」ケーブルの硬さは、やや押しが強すぎる感じ。
ま、2,000円程度でこれだけ個性がありつつも音が良いケーブルには過剰要求かも知れないが....
ただ音的にはコストパフォーマンスが非常に高く、4芯⇒8芯へと進化した“BlackCat Ultra”が後に追加されたくらいなので、市場の評価も高かった。
中域の「味」が面白いケーブルです。
【仕様】
線材:亜鉛銅合金油浸ケーブル4芯
プラグ素材:ステンレス
スプリッター素材:ステンレス
ケーブル長:約1.25m ± 3cm
超高域はないが、高域は結構主張する
銀線のような開放感ある高域というよりは、中高域あたりに弱いピークが合って、シンバルレガートや女性ヴォーカルなどは目立つ味付け。
中域~中低域の力強さ
上下はさほどに広い感じはしないが、中域は充実しており、ヴォーカルが力強い。
高め低域の弾む音色が良い
重低音域まではないが(というか、中低音域が前に出るのでマスク効果?)、ベースの低次倍音やドラムのキックのアタックなどは十分あり、グルーヴィ。
全体としてドンシャリというよりは、中域の落ち込みの少ない「M字」の周波数特性イメージ。
重め、ゴツめ、滑りが悪い
太めの割には柔らかさもあるが、ケーブルの滑りも悪いので、フィッティング自体はそんなに良いわけではない。
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購入金額
1,680円
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購入日
2023年06月13日
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購入場所
NiceHCK Official Store (AliExpress)
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