今回KS-Remastaさんからお送りいただいた試聴機は、私が「予算が乏しいのでStageシリーズの安価な方のラインナップ」とお願いしていたため、Stage3の製品が最上位ということになります。
その中から取り上げるのは、先に紹介したKS-Stage102EVO.IIの導体の鏡面加工をStage1からStage3に向上させただけ、つまりそれ以外の材料や製造法は全く同じということになる、KS-Stage302EVO.IIです。
全く同じ素材を使っていながら、希望小売価格はKS-Stage102EVO.IIの15,000円(税別)に対して30,000円(税別)と丁度2倍の価格となります。これはつまり、この差額は工数の増加による工賃と技術料ということになるわけで、その差がキチンと感じ取れるかが問題となるわけです。
以前銅単線を使った同一グレードのKS-Stage301EVO.IIは取り上げていますので、そちらとも読み比べていただければと思います。
この辺りから少しずつ作業に慣れてスムーズ着脱出来るようにはなったのですが、普段から不自由な左手に加え、右手の腱鞘炎も悪化して力加減が少々怪しく、リードチップを破損しないかかなりヒヤヒヤしながらの作業となりました。
低域方向の余裕と間接音が明らかに向上
今回はaudio-technica AT-OC9ML/IIとの組み合わせに良いものを探すのが目的ですので、当然試聴カートリッジはAT-OC9ML/II、ヘッドシェルはaudio-technica AT-LH15/OCCとなります。
試聴楽曲は全モデル共通で以下の3曲です。
・Together We Run / Journey (LP「FREEDOM」収録)
・Like Someone In Love / Diana Krall(LP「Turn Up The Quiet」収録)
・Born For This Moment / Chicago (LP「Born For This Moment」収録)
まずは「Together We Run」を聴きましょう。
出だしからKS-Stage102EVO.IIとは明らかな違いがあります。低域方向が抑えめだったKS-Stage102EVO.IIとは異なり、KS-Stage302EVO.IIは低域の押出しが感じられるようになります。バスドラムの存在感が一気に増しました。
またヴォーカルの距離が近くなり、声の太さも出てきます。さらにヴォーカルに付加されたエコーの量が全く違っていて、それ以外の音も含めて間接音が一気に豊かに出てくるようになりました。ただ、少し低域方向が膨らんで締まりがやや落ちる感じがすること、ヴォーカルの口が大きく感じるという辺りがStage3の傾向なのか、KS-Stage301EVO.IIとも共通する特徴となります。
次に「Like Someone In Love」では、まずイントロからベースの深さがKS-Stage102EVO.IIとは段違いであることを感じさせられます。ウッドベースらしい響きがきちんと出てくるようになります。ダイアナ・クラールのヴォーカルは明らかに距離が近づきますが、やはり口が大きいという印象はどうしても受けます。KS-Stage102EVO.II比では、ヴォーカルが一気に3歩ほど前で歌い、ベースも1歩手前に来たという感じです。ピアノやギターは距離感は殆ど変わりません。
そして「Born For This Moment」でも、冒頭のベースに重さが感じられます。「Like Someone In Love」とは違いエレキベースですが、音の出方自体はどちらもぐっと前に来て深みが出るという意味で変わりません。少し締まりには欠けるかも知れません。
シカゴのホーンセクションはKS-Stage102EVO.II比で質感が向上します。PC-Triple C導体ではちょっと安っぽさが感じられるのですが、銀線ではホーンセクションの質感は良好です。パーカッションのキレは少し大人しめでしょうか。
シェルリード線の店頭試聴など、お茶の水のオーディオユニオン アクセサリー館など極めて限られた場所でしか出来ないのですが、このKS-Stage302EVO.IIとKS-Stage102EVO.IIのように全く同じ素材・同じ構造でこれだけ音が変わるというのは、是非多くの方に体験していただきたいものです。オーディオ界の常識では素材で音が変わることはあると理解できても、表面の平滑度まで気にする人はまずいませんが、現実問題として2倍の価格差が妥当に感じられるほど明確な違いがあります。むしろ実際に聴かないとなかなか納得できない差です。
自身でシェルリード線の着脱が出来る方であれば、KS-Remastaさんに試聴機を貸し出していただいても良いかも知れませんが、まずは聴く機会を得ることでしょう。
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購入金額
33,000円
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購入日
2023年10月03日
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購入場所
KS-Remasta
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