レビューメディア「ジグソー」

高さの調整だけではなく音の変化も楽しめる

私がレコードを聴く際に最も使われるのは、ターンテーブルTechnics SL-1200Gに、カートリッジaudio-technica AT-OC9/III(ヘッドシェルはaudio-technica AT-LH15/OCC)という組み合わせです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SL-1200Gのレビューでも触れているのですが、この製品はトーンアームの高さ調整は容易に出来る設計ではあるものの、初期位置が高すぎて最大限下げても現代的なカートリッジの多くで高さが不足する傾向があります。

 

私はその対策として純正よりも約2mm分厚いターンテーブルシート、ACOUSTIC REVIVE RTS-30を使っているのですが、普段メインで使うAT-OC9/IIIやAT-ART7、他にもDENON DL-103RやZYX R50 Bloomなど多くのカートリッジでまだ0.5~1mm程度不足があるのです。

 

まあ、元々SL-1200Gの前に使っていたKENWOOD KP-9010は高さ調整がかなり面倒で、特に調整すること無く使っていたわけですから、その程度まで追い込めれば十分という考えもあったわけです。

 

それでも、せめて普段からメインとして最も良く使っているAT-OC9/IIIくらいはきちんと水平が出せるようにしておきたいという思いもありました。そこで検討したのがカートリッジ用のスペーサーを挟むことです。

 

この類のスペーサーとして知られているのは、オヤイデ製のカーボンスペーサーMCS-CFだったのですが、カーボンを挟むことで音にどのような変化が現れるのかちょっと予想が付きにくいことが引っかかっていました。

 

そんな中昨年辺りから見かけるようになっていたのが、Serenityというブランドで発売されたマグネシウム製スペーサーです。

 

Serenityは新潟県の株式会社ワンロードのオーディオ関連製品に付けられたブランドです。元々ワンロードは金型製作を手がけてきた会社で、顧客の要望により金属加工事業も立ち上げていたそうです。そのワンロードの代表者である井上氏は自身もレコードを聴くオーディオファンであり、レコードの音をよくするためには振動対策が大事ということに気付き、本業で培った金属加工技術を活かしたマグネシウム製のアクセサリーを製品化したというわけです。

 

マグネシウム製のオーディオアクセサリーといえば、私も普段から愛用しているサンシャインが先駆者的な存在で、実際にコストパフォーマンスでいえばサンシャインは圧倒的です。ただ、サンシャインはあまり精密な加工にこだわるタイプではなく、他の部分ならまだしも精度を要求されるカートリッジ用のスペーサーなどは用意していません。Serenity SRP-1もサンシャインが同種の製品を作ったら価格は1/3以下なんだろうなと思いつつも、これを入手してみたわけです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

率直に言って、SDカードでも入っていそうなパッケージと思ってしまいました…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結構きちんと研磨されていて、マグネシウムは削った粉塵で発火することもあることを考えると、自分ではなかなか出来ない仕上げであることは実感できます。

 

 

 

 

 

 

 

 

早速AT-OC9/IIIとAT-LH15/OCCの間に挟んでみましょう。SRP-1は厚さ2mmですので、当然ですがAT-OC9/IIIを固定しているビスも2mm程度長いものが必要となります。幸いAT-OC9/III添付の最も長いビスが丁度使えました。

 

更新: 2023/06/22
総評

間接音が鮮明に表現されるように

SRP-1を挟み終わったら、1.33gほど増えているためゼロバランスを取り直し、さらにアームの水平を出します。

 

 

 

 

 

 

このような水準器があれば割合容易に水平を出すことが出来ます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実は私の環境では、敢えてSRP-1を向かってやや右寄りに取り付けています。これは再生するレコードにより、内周のブランクエリアがラベルギリギリまで彫り込まれている場合があり、スタビライザーと接触する危険性を排除するためです。

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりにLP「The Nightfly / Donald Fagen」を通して再生したのですが、今までと比べて音場の明瞭度が増した結果、ヴォーカルに付帯しているエコーが今まで以上にハッキリと存在感を持つようになりました。

 

マグネシウムの傾向からちょっと力押し的な傾向が強まるのでは無いかと思っていたのですが、実際には低域方向の主張はさほど変わっていません。むしろ高域のキレが増して、本来のAT-OC9/IIIらしさが少し出た感があります。

 

写真にあるのが「Random Access Memories / Daft Punk」ですが、このアルバムに収録され大ヒットを記録した「Get Lucky」 (feat. Pharrell Williams and Nile Rodgers) などは今まではキレが不足してハイレゾの方が明確に良かったのですが、SRP-1を挟んでからはキレが良くなった一方でアナログらしい質感はきちんと残されているため、ハイレゾとは少し違った傾向で魅力を持つようになりました。

 

 

他にも数枚聴いてみたのですが、あまり目立った副作用は無く安心して使えそうという感想を持ちました。弱点は「この小さなマグネシウム板1枚で6千円か」という絶望感がある程度でしょう…。

  • 購入金額

    4,840円

  • 購入日

    2023年06月18日

  • 購入場所

    サウンドハイツ

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