HIDIZS(ヒディス)AP80といえば、2018年8月に、クラウドファウンディングサイト「Kickstarter」で、支援者1795人からHK$1,880,825を集めて製品化されたことで知られる、小型高音質DAPです。
このAP80はそのまま一般販売へ移行すると共に、バリエーションモデルを増やして発展を続けています。AP80初代モデル(AP80 Aluminium)は現時点でも日本国内代理店の飯田ピアノから15,950円で購入出来るのですが、デュアルDACかつバランス接続に対応した改良モデルAP80Proは筐体の違いなどでアルミモデルの23,100円から、チタンボディの限定モデルAP80Pro Titaniumの49,500円までと幅広く展開されています。
とはいえ、ご存じの方もいらっしゃると思いますが、私自身は無駄にDAPの台数を所有している訳で、メイン機を置き換えるような高音質モデルであるならまだしも、DAP入門クラスの本機を今更買うメリットがあるのかと言われれば、正直難しいところです。これは単に3,980円という格安中古を見つけたことで何となく手が出てしまったというものです。
付属品は全無しですが、何故かボディの保護フィルムは表裏両面揃っていました。同時期に飯田ピアノ取り扱いの比較的古い製品が一斉に多数放出されていたことから考えると、デモ使用機などを引き上げてきて中古販売に回したのではないかと思っていますが…。
販売価格の割に外装のコンディションは良好です。この個体は難あり品という扱いだったのですが、その難点はボリュームの動きが若干怪しい(下に回しても上がってしまうことがある)という程度でしたので、その程度だったら何とでもなるということで購入したのです。
上位のAP80Proとの違いは、DAC(ESS9218P)が1基のみとなり、シングルエンド出力のみとなること、Bluetoothのバージョンがやや落ちることといった程度でしょうか。普通の価格で買うのであればAP80Proを買った方が間違いありませんが、この価格ならAP80でも全く不満はありません。
なお、HIDIZSのDAPでは、私が以前から高く評価しているHiBy Musicが開発するDAP用OS、HiBy OSを採用しているため、HiBy R3系やR2系とGUIは似通っています。
価格なりの限界はあるが、音も操作系も上手くまとめている
購入前に動作確認をした時点でバッテリー残量は90%を超えていましたので、自宅に持ち帰った後は早速音を出してみることにしました。丁度以前Astell&Kern A&Futura SE100で使っていたmicroSDXC(256GB)が浮いていたので、これをそのままAP80で読み込ませます。
私が自分で使っているHiBy Music製のDAPはいずれもAndroid OSを採用しているのですが、HiBy OSの本機でも基本的な使い勝手や動作感に大きな違いは感じられません。
イヤフォンにはJH Audio Michelleを組み合わせて音を確認してみましょう。
ランダムで再生して出てきた曲を流し聴きしてみたのですが、思いの外上手くまとまった音であることに感心させられます。
さすがに10万円オーバークラスのDAPと比べれば、レンジの広さ、楽器やヴォーカルの質感、表現の深み、分解能などあらゆる点で大きな差はあるのですが、レコードから起こしたソースのアナログらしい質感はきちんと表現出来ていますし、意外なほど細かい音もよく再現してみせます。
レンジの狭さをごまかすために低域のやや高い部分を少し盛っていたり、高域も割合低い辺りに軽いアクセントを作ってあったりするのですが、その塩梅が絶妙で、何というか少しオーディオ的に進歩したiPodの音といえば良いでしょうか。まとめ方の巧みさが光ります。
そしてより感心したのはBluetoothの音質でした、SBC/AACのみに対応するカーナビ内蔵のオーディオと接続してみると、何とその用途で普段使われているSONY NW-A45やHiBy R2よりも高域方向の濁りが少なく、ヴォーカルや弦楽器の質も良好なのです。Bluetoothではヘッドフォン出力とは異なり低域方向はやや薄めですが、それ以外の点ではこれで十分なのではないかと感じられるほど良く出来ています。
さすがにDAPとして高音質という次元に到達している訳ではありませんが、手軽に音楽の雰囲気はきっちり味わわせるという使い勝手の良さは本機の大きな魅力です。鞄の隙間に入る程度の大きさからも、1台持っておくとサブ機として重宝するDAPと思います。
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購入金額
3,980円
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購入日
2022年12月11日
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購入場所
フジヤエービック
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