先日パワー段の真空管を入れ替えたことで、音質面で大幅な改善が見られたCayin製アンプHA-1A。
ただ、後継モデルHA-1A MKIIとは異なりスピーカー接続にも対応しているためか、ヘッドフォンアンプとしては出力がかなり大きいものの、それに伴ってノイズ量も多くなっています。
私の使い方ではこのアンプでスピーカーを使うことはまず考えられません。ですから、出力は落ちても良いので、もう少しノイズを減らしたいという気持ちもありました。
そこでこの製品について調べていると、プリ段の真空管12AX7を差し替えてノイズを減らしたという事例がいくつか見つかりました。
極端な事例では12AX7を12AU7に差し替えるとノイズが消え、クラシック向きの繊細な音になるという話ですが、代わりにゲインがかなり下がり低域のパワー感もかなり弱くなるとのことでした。極端なまでの変化が要らないようであれば、12AT7辺りを使うのが良いのでは無いかという意見がありましたので、私は12AT7を試してみることにしました。
一応調べた範囲で12AX7/12AT7/12AU7の違いを記載しておくと、ヒーター電流はいずれも同等でソケット形状も同じ、主な違いは増幅率で
12AX7:約100μ
12AT7:約60μ
12AU7:約20μ
となります。他に違う要素もありますが、HA-1Aにおいて差し替えは可能とのことです。
この部分はプリ段であり、真空管の音色差も出やすいそうなのですが、私の場合は真空管にこだわりがある訳では無く、HA-1Aを実用レベルに引き上げるための交換ですので、先日のEL84と同様にスロバキア JJ Electronics製の12AT7を購入しました。
真空管マニアの方々によるとJJ Electronics製の真空管は、EL84では標準搭載だったElectro-Harmonix製と比べるとやや高域寄りで音場が広い代わりに、押出しが弱くなるとのことです。まあ、この部分は1本だけ替えれば良いので、真空管の入手性が改善されたら色々と試してみる価値はあるかも知れません。今回は純粋にCayin純正12AX7をJJ Electronics製12AT7に差し替えるだけとします。
多少下がっても十分なゲイン。音質は中庸に近づく
まずは買ってきたJJ Electronics製12AT7を確認してみます。
オリジナルのCayinロゴ入り12AX7と並べてみましょう。
こちらはパワー段で使っていたEL84とは異なり、元々装着されていた方も外観上の劣化は見られません。
恐らくHA-1Aはスピーカーを鳴らすという前提があったので増幅率重視で12AX7を使っていたのだと思いますが、ヘッドフォンアンプとしてだけ考えると、300ΩのSENNHEISER HD650を接続しても音量は出すぎるほど確保されています。スピーカーを鳴らすという前提さえ無ければ、案外12AU7でも不都合は無いのかなという気はします。
私は前述の通りスピーカーは接続しませんが、12AU7に差し替えるとロックを聴くにはさすがに力感が弱いという話がありましたので、間を取って12AT7にしています。
まず音を出して気付くのは、増幅率の数字で感じられるほど実効ゲインの差は表れないということでした。12AT7でもボリュームを半分に上げるのは難しい程度に音量は確保されます。
音質傾向としてはパワー段も変わっているので判断は難しいのですが、異様な厚みのあった低域は少し後退してほど良い程度の厚みに落ち着きました。
音場ははっきりと広くなったと思いますが、密度は少し薄くなったでしょうか。高域方向のクリアさは大きく向上しています。純正状態のHA-1Aはとにかくパワーと厚みで押し切るような音ですが、真空管を計3本入れ替えた後のHA-1Aは真空管らしい質感は残しつつもかなり現代的でオーディオ的にも整った音へと変化したと思います。
ヴィンテージ管に入れ替えるなどして更に上のレベルの音を目指すのも悪くはありませんが、元々1万円のジャンクで買ったアンプに金をかけるのも限度はあるでしょう。現時点で十分価格以上の満足感は得られていますので、程々のところでやめておこうと思います。
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購入金額
1,730円
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購入日
2022年10月15日
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購入場所
ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba
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