レビューメディア「ジグソー」

ポータブルユーザー好みの整ったHi-Fiサウンド

今までイヤフォンのレビュー内では何度となく出てきていたものの、DAP本体のレビューをまだ上げていませんでしたので、ここで取り上げておきたいと思います。

 

韓国のオーディオブランド、Astell & Kernが、製品ライン毎にサブブランドを導入したのが2017年6月の「A&ultima SP1000」(ハイエンドライン)からでしたが、SE100はそれに続くプレミアムラインとして「A&futura SE100」というサブブランドを与えられて登場しました。約50万円のSP1000よりは大幅に安かったものの、発売時点での想定価格が219,980円だったのですから、それなりには高価な製品といえます。

 

SE100の下には「A&norma SR15」が用意されましたが、これが99,980円でローエンド扱いとなっていました。この当時はまだオーディオ関連のイベントはフルキャパで制限無く行われていましたので、「A&」の3機種が揃った時点で私も一通りじっくりと試聴することが出来ていました。

 

このときの印象では

 

 

・音楽性寄りのSP1000(但しやや表現が浅い感あり)

・とにかくオーディオ的でHi-Fi志向全振りのSE100

・AK70MKIIの順当なブラッシュアップ版のSR15

 

 

で、50万円のハイエンドであるSP1000の印象がさほど良くなく、自分が買うならSE100かSR15かな、と思っていました。SE100は音楽を楽しむよりは、イヤフォンの試聴に良さそうだなという感想でしたが…。

 

 

SP1000の半額以下とはいえDAPに20万円は決して安いものではありません。気になりつつも実際に買うことが無いままSE100は製造を打ち切られ、後継のSE200が発売されます。

 

SE200はD/AコンバーターをESS ES9068AS×2またはAKM AK4499EQのいずれかに切り替えられるという2in1モデルとして発売されました。SE100の後継として期待していましたので、販売店に試聴機が並んだ時点ですぐに試聴に行ったのですが…。

 

ESSモードではヴォーカルに生気が感じられず、AKMモードではバランスが作為的でどちらもしっくり来ないという、割合残念な印象となってしまいました。そのためSE200は早々に検討対象から外すことになります。

 

さらにA&futuraの第3弾モデルとして発売されたのが、現行モデルであるSE180となります。これはD/Aコンバーターおよび出力アンプ部をモジュール化していて、各メディアのレビュー記事などでは画期的などと絶賛されていましたが、これはCayinがN6iiのオーディオマザーボードで遙かに先行していた方式であり、画期的でも何でも無かったと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

このSE180も期待を込めて発売直後に試聴に行きましたし、代理店アユートの試聴イベント等でも聴き込んでみたのですが、発売時のモジュールSEM1で聴いてみたところ、SE100と同じESS ES9038PROを搭載しているにもかかわらず、やはりヴォーカルの生気が乏しく感じられたのです。現在はSEM4まで発売されていますが、私はSEM3までしか聴いていませんので、最新の状況については何ともいえませんが。

 

というわけで、オーディオ的な音作りに終始しつつも、まだヴォーカルの生気が感じられるSE100が最も良かったと思っていると、いつの間にかSE100の中古価格が随分手頃になっているということに気付きました。当時ちょっとしたセール価格だと5万円台が出る程度まで下がっていたのです。そろそろ買っても良いかと思っていたところで、eイヤホンの中古シークレットセールを見ていたところ、打痕がある以外は特に問題ないというSE100が4万円丁度まで下がっているものを見つけたのです。ポイント等も使えば送料込みでも4万円を大きく割り込むということで、この個体を購入しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画面保護シート等細かい欠品はありましたが、外箱や説明書はきちんと残っていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

減額理由となっていた打痕はさほど目立つものでは無かったのですが、ケースに入れてしまえばそもそも見えないだろうということで、MITER製のSE100用ケースを別途購入しています。打痕以外に目立つ問題点はありませんでしたし、Astell & Kern製のDAPの泣き所であるボリュームの不具合等も見られませんので、実用上の問題は全くありません。

 

更新: 2023/01/18
総評

とにかく細かい音を表現するのが得意だが、深みは無い

既に購入から約半年使っているわけですが、現状では手持ちのDAPの中では、車載用で常用されているSONY NW-A45HNを除き、Cayin N6ii/R01の稼働率が約5割、SE100が3割弱、HiBy R6Pro ALが2割弱、残り数%をそれ以外のDAPで分け合っているという状況です。

 

私が普段よく聴くソースでは、やはりN6ii/R01の質感の高さや密度感が魅力的に感じられ、SE100は緻密で高解像度ではあるものの、生っぽい質感に欠ける部分があり、どうしてもメインの座に座るところまでは行きません。

 

 

 

 

 

 

 

強いて言えばHisenior T2 Customなどの、特に高域方向の明瞭度に欠けるようなイヤフォンを組み合わせる分にはSE100の長所が活きてきます。質的には全然違うものの、傾向としてはJH Audio Angie+WAGNUS. aenigma Variationsも相性は良いといえます。

 

 

 

 

 

 

 

ソースとしてはSE100に似合うのは明らかにAngieの方の写真にあるようなJ-Pop・アニソン系の音です。私のメインターゲットである70~80年代の洋楽では総じてN6ii/R01の方があるべき音がきちんと出てきます。

 

 

逆に普段使うイヤフォンではUnique Melody Mini MESTやqdc 3SH SE辺りはSE100との組み合わせはあまり楽しめませんでした。Mini MESTでは微細な音が強調されすぎ、3SH SEではこのイヤフォンの高域方向の癖が極端に強調される印象がありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ、3SH SEはケーブルを交換すれば癖の部分は大幅に抑えられますので、印象が大きく変わる可能性もありますが。先日のポタフェスで聴いたLuminox Audioの試作ケーブルや、WAGNUS.の試聴会で聴いた数種類のケーブルではそこまで悪印象はありませんでしたので…。

 

恐らくJ-Popやアニソンをハイレゾで聴いて「音が良い」と素直に感じられる人であれば、SE100は絵に描いたような高音質DAPと感じられるでしょう。逆に私のようにアナログ音源主体で古めの洋楽ロックやジャズを楽しむような人が聴くと、とても整った音だけど妙に素っ気ないと感じてしまうような気がします。もっともこの傾向はAstell & Kern製品の多くに通じる傾向のような気もします。強いて言えば最新のフラッグシップモデルSP3000ではアナログ的な音も随分良く鳴るようになっていますが…。

 

とはいえ、私の場合は既にメイン機としてN6ii/R01が存在していますので、明確にキャラクターが異なるSE100を所有する意義は十分にあったと思っています。

  • 購入金額

    40,000円

  • 購入日

    2022年07月28日

  • 購入場所

    eイヤホン

17人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • harmankardonさん

    2023/01/18

    今,密かにAK380を狙っていますが,なかなか値落ちしないので待ち状態です.
  • jive9821さん

    2023/01/18

    > harmankardon さん

    むしろAK380とSP1000の価格差が詰まってきましたね…。
    AK380はもう基板やバッテリーも修理不能というのも痛い
    ところです。

    AKは結構サポート終了が早いので、高額モデルはなかなか
    手を出しにくいんですよね。

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