レビューメディア「ジグソー」

楽曲的にも、メンツ的にも、熱量的にも、センス的にも優れている、初期黄金期の作品。

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。アーティストやグループにおいて、「黄金期」と呼ばれる時期があります。アーティストの創作意欲とオリジナリティとテクニック、世の流行り廃りと技術のタイミング、グループにおいてはメンバーの構成...そんな要素が合わさって一段と輝く時期、ジャンルにとって代名詞ともなったグループの一番脂がのった時期の作品をご紹介します。

 

jamiroquai。Jay Kay(JK)ことJason Kayを中心とするバンド...というよりユニット。デビュー後しばらくは、Jay Kayを中心としながらも、固定に近いメンバーで活動しており「Jay Kayとバックバンド」という感じだったが、3作目あたりでメンバーの大幅な入れ替えがあり、「Jay Kayの音世界を実現するセッションメンバー」という感じになって、バンド感が薄まった。

 

デビュー当時は、ファンク色が強いながらも、アボリジニの民族楽器Didgeridooをフィーチャリングして、アーシィなテイストと、粋なコード進行から、所属レーベルAcid Jazzの名を冠したジャンルの代表的アーティストともされていた彼らだが、徐々に洗練されてきて、粋なダンスミュージックに昇華していく。

 

ただ本作“The Kids”が創られたころ、つまり1stアルバム~2ndアルバムの間は、まだ初期メンバーがかかわっており、かなり泥臭い感じのファンクであり、熱量が高い。

 

タイトルチューン「The Kids」は、デビュー時から在籍していたが、2ndアルバム前にバンドを去ったドラマー、Nick Van Gelderが最後にプレイした作品。この時は、1stアルバム制作時ぐらいに加わって、その後初期3部作時代のJamiroのリズムを支えたベーシストStuart Zender、そして20世紀時代のJamiroのブレーンでもあったキーボーディストToby Smithはもちろん残っており、「2ndアルバム先行シングル」としてリリースされ、実際に2ndアルバムには収められているが、一番「濃い」と言われている1stアルバム“Emergency on Planet Earth(邦題“ジャミロクワイ”)”

の延長線にある作品。打ち込みではありえない熱いリズムに、結構大きめにパーカッションが乗り、さらにストリングスとブラス隊が生で入っているのが、古のファンクテイスト。Stuartのベースラインは、良く考え付いたな、こんなパターンという感じのぶっ飛びラインでせわしないが、このハイスピードな曲をさらに加速させている。ストリングスとブラスがいい仕事している。

 

続いて1stアルバムの1曲目、「When You Gonna Learn(いつになったら気づくんだい)」が、2テイク収められる。

 

まず、イギリス中部のシェフィールドのライヴハウス兼ナイトクラブThe Leadmillで収録されたライヴテイク「When You Gonna Learn (Live At Leadmill, Sheffield)」。バランスは若干キーボードが小さくてリズムギター大きすぎるきらいがあり、万全ではないが、生のブラス隊も入ったハッピーなテイク。ほぼ10分も続く大作で中間部はDidgeridoo(サンプリングかもしれん)とディスクスクラッチの応酬といったライヴらしいところもあったり、アウトロのエレピのリリカルでジャジィなソロが素敵だったりと聴きごたえはある曲。音質そのものは悪くはないし。

 

ラストの「When You Gonna Learn (Digeridoo Instrumental)」はその名の通り、Digeridooフィーチャリング。...と言っても、全体的にDigeridooの音が入っているわけではなく、イントロと間奏、アウトロだけ。ただその部分は新しいフレーズを加えたり、ループさせたりして引っ張っており、存在感が増している。曲のバランスも、ガイドメロディ?なしのインストになった分変更されていて、ドラムがやや大きくなり、Aパートはストリングスとブラスを上げ目、サビパートはキーボード上げ目で曲を導き出している。今までJamiroの曲にはJay Kayの声と独特の歌い方がないと...と思っていたが、意外にもインストでも十分Jamiroらしい(少なくともこのころの曲は)。

 

この作品、日本だけで発売された2ndアルバム先行マキシなのだが、結構中身は濃くて聴き応えがある。

 

1stのどろどろとした闇鍋のようなエネルギーと、2nd・3rdのポップさが、奇跡的にクロスする、2ndアルバム先行シングルです。

 

このマキシ、日本でしか出ていないので、他作品の使いまわしジャケット
このマキシ、日本でしか出ていないので、他国では別作品に使いまわされているジャケット

 

【収録曲】

1. The Kids
2. When You Gonna Learn (Live At Leadmill, Sheffield)
3. When You Gonna Learn (Digeridoo Instrumental)

 

「The Kids」

更新: 2022/06/19
必聴度

最初期の猥雑さと、初期の前進力とが良い意味でまじりあっている。

初期三部作はいずれも最もJamiroのエッセンスが詰め込まれているが、その中でも1stのカオスなエネルギー感あふれる猥雑さと、2nd~3rdの荒々しい前進力があるポップ感の良いバランスにある。

  • 購入金額

    1,200円

  • 購入日

    1994年頃

  • 購入場所

14人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • MAGNETさん

    2022/06/23

    個人的には「Alrigt」「Little L」なんかも好きです!
  • cybercatさん

    2022/06/23

    「Alrigt」や「Little L」となると、3~5枚目あたりですから、結構「粋」な感じが強くなってからですね。

    曲全体としてのクオリティはそのころの方が上がっているのですが、1st~このシングルまでの、若干レトロで猥雑なエネルギー溢れる作品というのも捨てがたいです。

    ただ自分も楽曲として好きな曲が一番多いのは、6枚目の“Dynamite”だったりしますが。

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