私が現在メインのDAPとして使っているのが、中国Cayin製のN6ii(N6MK2)です。
これは元々N6ii専用オーディオマザーボード、T01を単品で持っていたことから、出荷時に同梱されていたオーディオマザーボードが欠品していたN6iiの中古を購入して、T01を活用するようにしたというものでした。このN6ii/T01の実力にある程度は満足できたため、それまでのメイン機であったHiBy R6Pro ALと交代させたわけです。
その後試聴イベント等でN6iiに対応するオーディオマザーボードは一通り聴かせていただいたのですが、T01は全体の中で見てもなかなか好バランスにまとまった製品であるということを実感しました。他にE01という製品もなかなか気に入ったのですが、これはシングルエンド接続専用であり汎用性に欠けます。
それ以外では価格が他の製品よりも大幅に上がるR01もオーディオ的な性能の高さを実感できるものでした。しかしR01は私が最も愛用しているイヤフォン、64AUDIO U4との相性がもう一つであったこと、価格が他よりも頭一つ以上抜けて高価であることがネックとなり、当初は買うつもりはありませんでした。
それが何故急に買うことになったのかといえば、実は今年の頭に購入していた某所のイヤフォン福袋で、希望していなかった品が出てきたことが大きな理由となっています。金銭的な損得勘定で言えば悪くなかったのですが、音の好みが全く合わない製品であったため、持っていても仕方ないと思い売却することにしたのです。
そして単なる買取よりも下取り交換の方が買取額が大幅に良くなるため、それならついでに何かを買おうと思ったときに、たまたま少し値下げされていたこのR01が目にとまり、勢いで買ってしまったというわけです。ちなみに同時にもう一つ全く使っていなかった品を買い取りに出した結果、R01の支払額は約1万円でした。
箱の外観はT01とほぼ同じでしたが、ラベルに書かれている文字でR01であることが確認できます。
中には書面の他に、R01本体と着脱作業に必要なT5トルクスドライバー、真空管を模したネジケースが入っていました。
このケースには真空管オーディオを得意とするCayinらしさの演出が感じられます。
やはり目立つのは型番などの上に大きく印刷されている「Discrete R-2R」の文字でしょうか。
一般的に現在のデジタルオーディオ機器では、D/AコンバーターにはLSI化された高性能のDACチップを使います。この方が安価に高精度の変換が可能となるためです。コストを潤沢に使うことが出来るハイエンドの据え置き機では、より理想の音質へと近づけるためにこれを抵抗器等の部品の組み合わせで構成することがあり、これをDiscrete(ディスクリート)と呼びます。R-2Rはラダー型とも呼ばれる方式を表していて、この辺りは説明すると長くなりますのでロームの解説辺りをご覧いただければと思います。
T01とR01を並べてみました。互換性があるので当然ではあるのですが、書かれている文字以外は外観上の違いはほぼありません。
出力端子は4.4mm5極バランスと3.5mmシングルエンドの2種類となります。なお、元々N6iiの4.4mm5極バランス対応オーディオマザーボード同梱品には、Cayin製の4.4mm-2.5mm変換アダプターが添付されています。
N6iiとしてはこれが最上
それでは早速音を聴いてみることにしましょう。使うイヤフォンは前述の64AUDIO U4とUnique Melody MAVERICKです。他も数種類組み合わせましたが基本的な傾向はどれでもあまり変わらないと思います。
まず、元々のT01も私が聴いて十分納得できるものとして使っていたわけです。それを踏まえた上でもやはりT01とR01の間にはそれなりに大きな差が感じられました。
まずは低域方向のエネルギー感や密度が充実することが感じ取れます。これがはっきりとしたローブーストモデルであるU4との相性の悪さに繋がっていたのですが、U4の方に手を入れて低域の量を少し減らした結果、R01の持ち味が発揮されるようになってきました。
私は普段アナログ盤からハイレゾファイル化したソースを聴いていることが多いのですが、T01ではまとまっているものの少し薄味という印象があったソースが、アナログ本来の濃厚さを感じさせるものへと変化します。音場の広さなどはそれほど目立って変わるわけではないのですが、その中での密度感や質感については間違いなく1グレード以上向上します。
一方、MAVERICKは普段から書いている通り、プレイヤー側の質が低くてもそれなりには音楽的に鳴ってしまうイヤフォンですが、R01ではこれまでの印象とは大きく異なりMAVERICKから太さと力強さを兼ね備えた良質な低域となりますし、MAVERICKならではの広い音場も濃い密度で満たしてくれます。T01もR01も適度にバランスを保っているという根本は同じですが、音楽に臨場感や躍動感を求めるのであればR01の優位性ははっきりと感じられるでしょう。
現在N6ii/T01の新品が10万円程度で購入できることを考えれば、オーディオマザーボードだけで7万円台は正直割高感はあります。しかし、N6iiの実力を最大限引き出そうと思うのであれば、R01は最適な選択肢となり得ます。
現実的な予算で入手出来る高品位R-2R DAC
この製品以降、R-2R(ラダー型)ディスクリートD/Aコンバーターを採用する製品が各社から少しずつながら発売されるようになってきました。Cayin自身もスマートフォンとの組み合わせを想定したスティック型のRU6を発売しましたし、ライバルとなるHiBy MusicからはハイエンドのRS8、N6iiと競合するRS6、そして10万円以下の価格帯にもRS2と発売され、R-2R DACの製品だけで幅広いクラスをカバー出来るようになっています。
しかし、本機よりも安価なHiBy RS2辺りでR-2Rの良さをきちんと発揮出来ているかといわれると、正直言ってなかなか厳しいと思います。確かにR-2Rらしい低域方向の力感などメリットを感じる部分はあるのですが、部品のコストが音質に直結する方式であるだけに、高域方向の緻密さや解像度はIC型のDACに大きく劣っています。
さすがにN6ii/R01やHiBy RS6以上の価格帯であれば、デメリットよりはメリットが上回るだけの実力は発揮してくれます。据え置きであれば、先日発売されたXIAUDIO K-DAC(20万円を少し超える程度)辺りまで行けば、既存のDACチップとはひと味違った音が楽しめるでしょう。
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購入金額
69,993円
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購入日
2022年02月01日
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購入場所
FUJIYA AVIC
harmankardonさん
2022/06/11
でも,精度を出すのにお金がかかりすぎるので,高くて買えないという現実.
jive9821さん
2022/06/11
さすがにR01よりは精度は落ちるそうですが、同じCayinの
小型DAC、RU6もR-2Rらしい音は出してくれますね。
安売りされれば2万円台前半辺りまで下がることもありますので、
コストパフォーマンスはなかなか良好だと思います。