それでは久しぶりにきちんと聴いてみることにしましょう。

イヤフォンは64AUDIO U4＋WAGNUS. Petit NEUTRON Lilyを組み合わせ、比較対象にはHiBy R6 Pro ALを用意しています。

試聴ソースはアナログレコードから起こした、いつも通りのハイレゾWAVを中心に適当に選びました。

他にもいろいろ聴いていますが、レビューがないものもありますので…。

X5の音は一言で言えば、私が普段から好んでいない、いかにもFiiO製DAPという音です。

特定帯域を強調することなく素直なバランスであることには好感が持てますが、音場はあまり拡がらず、レンジも最低域や最高域の方は落ちてしまっている感があります。

解像度は程々に出ていますが、感心出来ないのはヴォーカルの音がとにかく素っ気ないということ。生きた人が歌っているのかあやふやに感じる程生気を感じません。良く言えばモニター調なのかも知れませんが、R6 Pro ALと比べて緻密な音かと言われればそんなことは全く無く、むしろ微細な表現はあまり出来ていない方です。

R6 Pro ALでごく普通のステージ上の音を表現しているとすれば、X5 3rdの音はステージと自分の間にアクリル板が挟まっているかのような遠さを感じるのです。アナログから起こしたソースではこの生気のなさは致命的に感じられます。

強いて言えば、J-Pop系の録音であれば元々空間が平面的であまり生気もありませんので、この製品の弱点はそれほど目立ちません。目立たないだけで納得できる程でもありませんが。

一般的なスマートフォンで聴くよりはオーディオ的に良い音だとは思うのですが、この音でわざわざ単品のDAPを持ち歩く価値があるかと言われると少々考えてしまいます。音楽の楽しさが伝わりにくいというのは致命的だと思いますので。

当時はそこそこ評価されて人気もまずまずあった製品ですから、自分が普段聴くソースによってはもう少し好印象になるのかも知れません。しかし、私としてはこの製品の音に評価する点を見いだすことは出来ませんでした。

その割に評価がそこまでひどくないというのは、購入価格の安さによるものです。機能面だけを見ても5千円なら十分に評価に値するということで、このような評価となりました。