本来高価なマグネシウム素材を活用したオーディオアクセサリーを、価格破壊的な低価格で市場に投入し続ける業界の革命児SUNSHINE。私自身、過去に何度か同社のアクセサリーにはお世話になっています。
いずれもオーディオアクセサリーとしては比較的安価な製品ではありますが、判りやすく違いを表せるだけの能力を持った製品だと思います。ただ、得られる効果が極端な場合もあり、使いこなしや組み合わせが難しいという一面もあります。
実際、低域方向の改善幅が大きいターンテーブルシートSTS-2を使っていたのですが、色々と副作用もあり、結局現在はACOUSTIC REVIVE RTS-30に入れ替えてしまったということもあります。
ここ最近は電源ケーブルSAC-Reference 1.8等がヒット作となったものの、他社からほぼそのままブランドと型番を付け替えただけような製品が出たりと商品展開に色々苦労があったようで、やはり本来の得意分野に立ち戻りマグネシウム素材を活用したアクセサリーの決定版を開発することを表明していました。具体的にはオーディオボードとインシュレーターで、いずれもマグネシウムの特性を最大限発揮するべく、協力関係にあるアクセサリーメーカーTIGLONによる様々な新技術を投入すると共に、高級アクセサリーに見合った外観も追求することを明らかにしていました。過去の同社製品はオーディオ的な効果だけにフォーカスしていた結果、素材を仕上げ無しでそのまま加工して製品化するなど、外観をまるで無視したものが多かったのです。
その進捗は同社公式サイト内のブログで断片的に公表されていたのですが、想定外のトラブル等が重なった結果、当初は6月頃には発売とされていた製品群が9月に入ってようやく量産開始という状況でした。その間にマグネシウム素材の価格高騰などがあり、当初の予定価格よりは大幅に高価になってしまうことが明らかにされましたが、初回ロットに関してはブログ読者へのシークレットセールとしてかなり安価に販売されることとなり、時々そのブログを読んでいた私もシークレットセールへの参加が可能で、そのセール価格であればかろうじて私にも手の届く範囲だったということもあり、オーディオボードを注文してみました。そのような経緯であるため、敢えてレビュー下部にある価格の部分には通常販売店における第一ロット出荷分の販売価格を入れてあります。実際にはそれよりもかなり安価だったとお考えください。
実はこのシークレットセールは10月20日までであり、その存在が判っても良いように敢えて10月21日にこの文章を公開しています。
大型機器の下に敷くにはこの大きさが必要
今回発売されたオールマグネシウムボードAMBシリーズは、以下の3種類が用意されています。
・AMB30 : 395x295x8 (mm)
・AMB40 : 445x345x8 (mm)
・AMB50 : 490x445x8 (mm)
私が使うのであればアナログプレイヤーの下に入れる以外考えられませんので、必然的に最大のAMB50を購入することになります。Technics SL-1200Gであれば幅はAMB40でも何とかなりますが、奥行きが足りません。
製品写真ですが、実物がかなり大きく、背景を写り込ませることなく全体像を撮影することが出来なかったため、部分写真のみでご勘弁ください。
従来のSUNSHINE製品のような、表面無加工の素材のままという感じではなくなり、一応表面がきちんと仕上げられていて塗装もキチンとされています。ただ、率直に言って社長が言うほど高級感があるようにも感じられません。AMB50は他のサイズと比べると仕上げがやや落ちるというコメントはありましたが…。
実物を見ても2枚のマグネシウム板を制振材で貼り合わせたものにしか見えないのですが、実はTIGLONによる様々な技術が投入されているのだそうです。
まず、マグネシウム板は4mmと3mmという厚さの異なるものを制振材で貼付しているのですが、それだけではなく随所にマグネシウムフィルターリングを配しているそうです。この辺りにはノウハウと技術が必要で、初期ロットのこのシリーズは全てTIGLONの沖野社長が自ら製造していたそうです。また、各辺の内側にスリットが設けられていて、これが振動を逃がす役目を担っているとのことです。
従来のSUNSHINE製アクセサリーではアースを確保するとより音質が向上することが知られていましたが、今回のAMBシリーズはアーシング不要のファントム構造と称するものとなっていて、まさに置くだけで効果が得られるそうです。
これらによって、単にオーディオボードとしての制震性能だけではなく、電磁波吸収による高音質化も期待できるとしています。
付帯音が劇的に減り、全ての音の質感が向上
それでは早速、前述の通りTechnics SL-1200Gの下に入れてみることにしましょう。
カートリッジには、その出力電圧の低さによる飛び込みノイズの多さに悩まされてきた、audio-technica AT-ART7を組み合わせて試聴します。
レコードはこの辺りを適当に再生してみました。
なお、この製品はエージングにかなりの時間を要するということです。20kg程度の機材を置いたら最高性能を発揮するのは半年後くらいになるのではないかといわれています。さすがに半年待って試聴するわけにはいきませんが、丸2日程度経てば明らかに変わってくるとのことでしたので、設置から5日ほど経過して本格的に試聴を始めています。
さて、第一印象としては「音数が減った?」というものでした。今までいろいろな音が混ざって聴こえていたものが、シンプルに各楽器やヴォーカル、それに付随するエコーの類だけに感じられるようになったのです。最初に音数が減ったと感じられたのは、それぞれの音がきちんと個別の音に分解されるようになったことで、出所不明の音が消えたためでしょう。ヴォーカルや楽器の質感は格段に向上していますし、付帯するエコーにも濁りが感じられません。
そして今回敢えてAT-ART7を使った理由は、謳い文句の一つである電磁波吸収効果を確認するためでした。KOJO Crystal-Eを活用したノイズ対策でAT-OC9/IIIであればほぼ無視できるレベルまでノイズを低減することが出来ていましたが、出力電圧がかなり低めとなるAT-ART7ではどうしてもまだ少し気になる水準にとどまっていたのです。
結論から言えばこれまでのアース周りの対策を全て活用した上でAMB50を加えたことで、ノイズフロアは劇的に下がりました。ヘッドフォンモニター用に使っているLUXMAN DA-100でボリュームを最大にしてやっと飛び込みノイズが聞こえる程度まで下がったのですから、ほぼ完璧といって良いでしょう。もっとも、従来の対策をどれか一つでも怠ってしまうと、相変わらず弱音時にノイズが聞こえてきてしまいますが…。
また、飛び込みノイズだけではなく、聴感上のS/N比も大幅に改善しました。フェードインの楽曲の時など、ようやく静けさの中からイントロが聞こえてくるイメージとなりました。AT-ART7が実用レベルで使えるようになったのはかなり大きな進歩です。
音質面でもAT-ART7はアタックが甘くなり解像度が落ちる傾向があったのですが、前述の通り付帯音が一気に解消された結果そこそこの鋭さが表現されるようになりました。
もっとも、その反面AT-OC9/IIIの音が少し神経質な印象をのぞかせるようになり、マグネシウムらしい効果の大きさと副作用を感じさせます。とはいえ、デジタルソースと張り合うHi-Fi基調という意味ではカートリッジの持ち味を十全に引き出しているともいえます。
アナログに解像度が低く甘い音を期待する方であれば、このボードの持ち味は正反対であり全く合わないでしょう。しかし、アナログらしい質感を保ちつつ、デジタルソースに迫るような解像度やスピード感も求めたいという方であれば、このボードは確実にその方向に近づけてくれます。
唯一の残念な点は大幅に上がってしまった価格
シークレットセールを開始した時点で、メーカー側が想定していた希望小売価格は、AMB50で56,000円(税別)でした。そこから大幅な値引きがあったという時点で、セールの価格を想像していただけるかと思います。
しかし、この価格を公表した後からマグネシウム素材の価格が急騰して、この僅かな期間で2倍近くの単価となってしまいました。シークレットセールや付き合いの濃い販売店向けの初回ロットの出荷分は当初の価格通りとなっていたものの、結局本日から開始される通常出荷の時点で、AMB50の希望小売価格は81,000円(税別)へと改訂されます。この製品は純度99.9%以上の純マグネシウムでなければ価値がないというポリシーであり、素材の質を落として価格を下げることはしないそうです。
SUNSHINEの社長としては、この製品が10万円未満で買えるのであれば激安に変わりはない、それだけの自信があるとのことですが、本来の値段を知っていると仕方がないこととはいえ、この価格差がどうしても気になってしまいます。
私自身は普段オーディオボードを使うことはないため、他社の同価格帯の製品と比較してこの製品がどの程度の存在であるかは推し量ることが出来ません。しかし、機器の下に入れる素材だけでここまで音が変わった経験もありません。
元々の価格であればお買い得といえたのは間違いありません。しかし、結局税込みであれば10万円に迫ってしまった価格を考えると、それなりに覚悟を決めて買う必要があるでしょう。劇的な効果は間違いありませんので、試聴させてくれる販売店等でこの効果を体感して、それが自分に合いそうな効果であると感じられた方にはお薦めできる製品といえます。
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購入金額
53,800円
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購入日
2021年09月23日
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購入場所
SUNSHINE 直販
kensanさん
2021/10/21
harmankardonさん
2021/10/21
タコシーさん
2021/10/21
制振効果が高いんですね ヘッドフォンボディに使うと良いとか?
カートリッジには使われているようですね
https://www.yoshinotrading.jp/products/clearaudio/mc-cart...
ノートパソコンのボディにも使っていましたけど、あれは軽さだけなのかな...
jive9821さん
2021/10/21
SUNSHINEの社長も中国指導部の思惑で生産が止まったことが大きいと明言していますね。
表向きはマグネシウム生産に関わる環境問題への配慮らしいですが…。
jive9821さん
2021/10/21
SUNSHINEは元々マグネシウム専門ですが、他社の木材やアルミなどの製品と
マグネシウムを一緒にするな、というほどの自信の持ちようです。
マグネシウムは強度や剛性が十分にありつつ、振動吸収率が金属素材として
圧倒的に良いのだそうで。
これが良いか悪いかは、組み合わせる機材の設計によっても大きく変わるのだ
とは思いますが、少なくともSL-1200Gでは素晴らしい効果です。
jive9821さん
2021/10/21
一般的に他社のマグネシウム素材を謳うものは殆どがマグネシウム合金を
採用していて、純マグネシウムを使うSUNSHINEはそれらに対しても優位性が
あると説明しています。
私の場合はTechnics SL-1200Gのトーンアームが純マグネシウムパイプであり、
物理設計がほぼ同一でアルミパイプを採用するSL-1200GRとの顕著な音質差で
マグネシウムに対する信頼感は持っています。