レビューメディア「ジグソー」

SHURE M44系を継承した国産カートリッジ

米国SHUREが2018年に交換針を含むアナログ全製品の製造を完了すると発表したときには、大げさに言えば全世界のアナログユーザーに激震が走ったといって良いほどの衝撃がありました。

 

MMカートリッジの大定番といえるV15シリーズは古くから多くのユーザーに愛されてきましたし、M44シリーズは低価格ながらDJプレイにも耐える耐久性と、アナログオーディオの入門機にふさわしい音質とで、全世界で広く使われてきていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

既存のカートリッジの交換針については、日本のJICO(日本精密宝石工業株式会社)が多くのバリエーションを取りそろえていて、完全に元と同じ音になるというわけではないものの、今後もカートリッジを使い続けることが出来る状況ではありますが、カートリッジ本体に関しては市場に流通しているものがなくなった時点で供給は絶たれてしまいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

しかし、近年のアナログブームの加熱に加え、製品開発に意欲を増していたJICOの熱意によって、M44シリーズと形状や特性の互換性を持つというSHUREユーザー待望の新カートリッジ、J44シリーズが発売されることとなったのです。

 

私は殆ど使っていなかったものの、一応M44シリーズの一つであるM44-7を持っていますので、J44シリーズがオリジナルに対してどのような特徴を持つのか検証してみたくなり、M44-7互換でリスニング用に位置付けられているJ44A 7 IMPを購入してみることにしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近年のJICOはパッケージデザインなども以前より随分洗練されたような気がします。1万円でおつりが来るカートリッジとして、見た目はかなり良好ではないでしょうか。本体デザインはSHURE M44系そのままという印象です。

 

 

 

 

 

 

 

今回は可能な限り条件を近づけて試聴するために、本来このカートリッジに似つかわしい組み合わせではないのですが、同じもののストックが複数あったヘッドシェルにaudio-technica AT-LH18/OCCを使いました。リード線もaudio-technica AT6101で統一しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更新: 2021/08/11
音質

さすがに全く同じではない

それでは実際に両者を比較してみましょう。

 

Technics SL-1200G+Phasemation EA-200といういつも通りの組み合わせで、LP「Chicago 17 / Chicago」A面の2,3,4曲目を同じように聴いてみました。なお、その再生内容はMOTU 1296で同時に録音してデータ化しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もっとも、いくら条件を揃えたところでJ44A 7 IMPはおろしたて、M44-7は推定40年近く前の製造分であり、コンディションを考えても同等とは言いがたいでしょう。M44-7は古さの割に実働時間は短く、むしろ適度にほぐれているといえる状態だと思います。

 

 

まず一聴しての印象は、M44-7の方がちょっと派手でJ44A 7 IMPの音が相対的に地味に聴こえるということです。「We Can Stop The Hurtin'」で比較すると、ロバート・ラムのリード・ヴォーカルの出方は結構似ているのですが、恐らくM44-7の方が100~200Hz辺りの音がやや多めなのでしょう。J44A 7 IMPは声が少しだけ細く感じられます。

 

ハイハットの量はM44-7の方が明確に多めで、これと低域方向のふくよかさが相まってM44-7の音の方が派手な印象につながっているのでしょう。ただ、M44-7の低域方向のふくよかさはどちらかといえば付帯音であり、オーディオ的な正確さはJ44A 7 IMPの方に分があると思います。解像度はJ44A 7 IMPの方に分があります。

 

高域方向も量はM44-7の方が出ていますが、透明度や金属音の質感はJ44A 7 IMPの方が上回っていて、良くも悪くもソースに対する忠実度がオリジナルを上回っているような気がします。M44の音に惚れ込んでいる人が聴くと物足りなさを感じる可能性はありますが、M44系の音は決してオーディオ的な正確さに優れているわけではありません。

 

 

聴感上の音量感は上記の理由もありM44-7の方が上だったのですが、実際にところはどうだったのか、録音しておいたデータのピークレベルで確認してみました。どちらもピークレベルに影響が出るようなノイズ等は発生していません。

 

 

 

 

▲JICO J44A 7 IMP
▲JICO J44A 7 IMP

 

 

 

▲SHURE M44-7
▲SHURE M44-7

 

 

 

これはなかなか見事な結果です。何と僅か0.01dBの誤差でしかなく、特性面での互換性は素晴らしいものがあります。SHURE純正のM44-7を数個並べて比較しても、これより誤差は大きい可能性もある程です。

 

 

音質的にはある程度の違いがありますが、これはひょっとすると交換針部分の違いなのかな、という気もします。今回は時間不足で試せませんでしたが、後で交換針を相互に入れ替えてもう一度試聴してみたいと思っています。ボディー部分の互換性は見事でした。

 

  • 購入金額

    9,900円

  • 購入日

    2021年08月05日

  • 購入場所

    池部楽器店 パワーレック

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