所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。「××縛り」。アーティストにとって、自分の思うとおりに何の制約もなく、創作するというのも楽しいことですが、使用楽器やジャンル、リズムなどを指定された制約の中で、自分らしさを出す、というのも挑戦しがいのあるものです。使うボーカロイドと曲調に制約をつけた、ボカロPコンピアルバムをご紹介します。
GYARIことココアシガレットP。これまで、彼がソロでリリースしてきた作品を、幻の同人第一作を除いて2作目から最新作までご紹介してきたが、続いて数作コンピ系の参加作品をご紹介。
本作は、アルバムタイトル名の“acoustic beatlog feat. Hatsune Miku”の通り、「初音ミクを使った」「アコースティック」系の楽曲、というのが縛り。GYARIをはじめ、whoo、手タレPなどボカロブーム初期から活動するPたちが、そのレギュレーションに沿って曲を持ち寄った。しかし、当然のことながら、各クリエイターの個性が出た楽曲が詰め込まれることになった。
冒頭の「CIGARETTE★STAGE」がGYARIの曲。「シガレット」というと、彼の使うキャラクターでは、ココアシガレットがアイコンとなっている(鏡音)リンが想い出されるが、ここではレギュレーション通り、この作品の1年ほど前に手に入れた
というミクを使う(シャベッタァァァァ)。この時代のGYARIらしく、フュージョン寄りのジャズで、結構ソロ廻しも長い(つか、イントロやエンディングまで含んだ曲全体がおよそ4分半なのに、ソロ廻しが2分半もあり、半分以上を占める)。ソロの前にはミクが「オン“楽器”、“キャラクター名”!」と紹介している声が入っていて、よりジャズライヴっぽい感じ。廻しは、トランペットルカ⇒サックスMEIKO⇒ベースミク⇒パーカッションGUMI⇒ピアノリン⇒ドラムスKAITOと続き、バンド感出てる(もちろん、ヴォーカルを兼ねるミク以外は発声していないので、ボーカロイドたちが演奏しているていなのだが)。小粋でスウィンギィな曲調にミクの爽やかカワイイ声が乗り、聴きやすい曲になっている。
手タレPの「輝く世界のジンガ」は、若干オリエンタルというか、エスニックというか、民族音楽的アプローチの曲で、ギターのようなマンドリンのような音の楽器(南米チックなのでロンロコ?)と、様々なパーカッションを中心として組み立てられている、ほのぼのとした曲。主旋律にはミクを使っているが、コーラスにはKAITOを使った混声曲。曲調としてはジンガというほど、カポエイラっぽくはナイケド。
クラシカルで、荘厳な感じさえするのは、ラストの「der Ursprung (reedit)」。創ったのは西島ソーンダイクこと西島尊大。若干オフぎみに聴こえるピアノの優しい調べに、フルートをはじめとした木管系楽器が絡み合い、そこにハミングで歌うミクの癒やしの声が載る。実験的な音楽を多く手がける西島らしく、フワッと始まり、曲調が移ろいゆき、フッと終わるという感じで、構成が掴みづらい。ただ、ミクの声との相性度は屈指のレベルで、ミクの声の電子臭さを抑え、周り全て非電子音の淡い世界に、良く溶け込ませている。
この作品、どうやら当時ボーカロイドとのコラボをよく企画していたファミリーマートが、当時運営していた「ファミマ.com」専売品として企画したものらしい。
ボカロ黎明期には、こうしたコンピアルバムがしきりに企画されたが、電子界の歌姫たる初音ミクの企画としては珍しく「アコースティック」にこだわっていて、でもその解釈が5人のPそれぞれで全く異なっていて、むしろ「縛り」の妙になっている感じ。
GYARIに関しては、「いつもの」方向性ながら、珍しくミクでのボカロジャズ曲となっていて、楽しめる作品です。
【収録曲】
1. CIGARETTE★STAGE(GYARI)
2. トイパレードは終わらない(whoo)
3. 輝く世界のジンガ(手タレP)
4. モネの宇宙(ATOLS)
5. der Ursprung (reedit)(西島ソーンダイク)
「輝く世界のジンガ」
GYARIという意味では「突飛な」方向ではない
ただ、「アコースティック」「ミク」縛りに対する、それぞれのPの解釈=作品の差が面白い。
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購入金額
1,444円
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購入日
2017年09月18日
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購入場所
ヤフオク!
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