所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。ボーカロイドという「歌を歌わせる」プログラムに歌わせない。人間はしゃべることも歌うこともできますが、プログラムは普通決められたことしかできません。その制約を突き崩し、ボーカロイドに叫ばせた作品をご紹介します。
GYARIこと、ココアシガレットP。2008年から活動するボカロPだが、何度か路線変更(というより興味の変遷?)がある。作品発表の場も、当初のニコニコ動画+同人誌即売所での頒布という国内中心の動きから、YouTubeも用いた世界に向けての楽曲発表へと移ってくるのだが、それまでのボカロジャズというジャンルから飛び出して、彼を有名にした長尺曲3部作のラストが本作、“WAAAA!”。
長尺第一弾「abgm」
が、原則A♭とGmという2つのコードの繰り返しだけで進行する曲、続く「tettey-terettey」
は歌詞が♪テッテーテレッテー♪だけの繰り返しと、この長尺シリーズは「何かを延々やり続ける」コンセプトだが、3部作ラストの本作は「ただ叫びつづける」がコンセプト。
ただイントロは♪ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ♪とか♪ポォォォォォォォォォォォォォォウ!♪等と叫んでいたので、歌詞らしい歌詞がない曲なのかな、と思っていたが、そうではなく、言葉として捉えられる歌詞が多い。
....いや、それが意味をなしているかどうかは、また別問題なんだけれどね。
紹介の都合上、まず同梱のイラスト集から。また12Pに戻っているので、曲に関することのみで、前回のようなキャラ紹介はないが(キャラ個別の画はある)、コンセプトやタイトル、参考にした曲などをGYARI自ら解説しており、読む価値は高い資料集。
イラストは和のテイストがあり、今までとはひと味違う。黒と紅、橙を中心としてシックな感じにまとめられているのだけれど....曲はw
ピアノの低音弦と、16ビートのハイハットの刻みでスリリングに始まるイントロ。所々にリンが♪ワッ♪と合いの手を入れる。ベースが入ると共に、リンが♪ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ♪と叫びつづけ、♪ポォォォォォォォォォォォォォォウ!♪とナゾの奇声を発したあとで、動画ではルール説明がある「間」がある(コードはEm⇒G⇒A⇒Bなので適当に叫べば良いらしい)。その後リンの♪いっせーの、ホイ♪で始まるが、♪ドーン♪とか、♪ハッピー♪や♪ヤッホー♪といった短い単語をラップ調にリズムに乗せているだけで、「歌」ではない。途中で例によってレンが巻き込まれる。その後和風の♪ハァ~~~アアアア~~~/たららたらたらんら~らたらんら~/ハァ~ハァ~/テケテンテテン!/ハァ/どっこいせーの/よっこいせーの/でんでんででんでん!♪という、唯一ボーカロイドが「メロディを歌う」部分がある、どこか和風のサビに続く。レンの長いオルガンソロを挟んで、再び中毒性があるサビへ。ベースとドラムスが不気味に刻むブリッジを挟んで、再び脳天気なサビへ。ひとしきり演ったあとは、サンバ調のリズム中心になって、カウベルとコンガ、カバサが加わり、ゆかりの独自機能、ボイスサンプル=exVOICEを駆使したゆかり独壇場に。ラテンな雰囲気のピアノソロを挟んで、中毒性のあるサビへ。このあと、エレピ+ベース中心の半速タ~イムと思ったら、どこからか生ギターの音が。ドラムスも加わり、さらにコーラス(音声は猫村いろは)も加わって、エモーショナルな展開に。続いて静かにミクのスキャット付きのベースソロへと移行。そこからリズムは6/8へと変わり、いろはの透き通るコーラスとアコースティックギターソロに。ある名曲をオマージュしたようなフレーズも挟みつつ、一度静かな展開に。途中でツースリーのカウベルとラテンなピアノフレーズが聞こえてきて.....、も・り・あ・が・っ・て・ま・い・り・ま・し・た!♪ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!♪と繰り返されるなか、ゴーインにサビに持っていき、そのあとはルカ姐さんのスーパー変拍子ラップタ~イム♪たこやきたこやき♪と7拍子で繰り返されるなか、スリリングなピアノソロ⇒サビに行って、これで終わるんか...と思ったら、今度はパーカッションメインになり、和太鼓の音なども入ってサンバ調リズムに太鼓が聞こえるというようなカオスなお祭り騒ぎ~い・つ・も・の~大団円に。
ゆかりのexVOICE機能なども使いつつ、「ボーカロイドにセリフを叫ばせる」という新しい試み。
この延々繰り返す「ボーカロイドたちがただ○○だけ」シリーズは、コミケで3連続で頒布されたが、この“WAAAA!”で一旦終了、およそ1年後の別のボカロイベントでこの3部作を繋いだ「総集編」とでも言える“RRRepeat!!!”
がリリースされた後は、GYARIの興味は「ボイスロイドに歌わせる」という事に移る。でもそれは「ボーカロイドに叫ばせる」本作の試みの裏返しとも言える。
また、この曲から特に表現における動画の果たす役割の比率が高くなっていて、イントロ後の歌?が始まる前のオケだけの部分が長いのは曲紹介の部分があるからだとか、ゆかり急襲時の「間」、ラストの方のリズム狂乱のあたりとかは、「曲だけ聴く」のではどうしてその長さが求められるのかがわかりづらく、やや「間延び感」もある。「動画を観ながら聴くこと」が前提になっている感じを受ける。
そういう意味では、いろんな意味でターニングポイントとなった作品です。
【収録内容】
<CD>
1. WAAAA!
2. WAAAA! - off vocal -
<BOOK>
A5 / 12P / フルカラー / イラスト
「WAAAA!」
ボカロとボイロの垣根を壊す曲
きっと、この曲でボカロに叫ばせられたんだから、ボイロに歌わせることもできンじゃね?と思ったんだろうなー....
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購入金額
3,800円
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購入日
2019年04月16日
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購入場所
駿河屋
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