所持する音楽データに対する私利私欲．．．イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。同人作品では、刷り切り、プレス1度というものも少なくなく、あとから識ったファンにとっては遡るのが大変です。そのため人気が出てきた同人作家は、既リリース作品をまとめて、「まとめ本」や「全作集」を作ることがあります。今では高い人気を誇る同人アーティストの、初期楽曲集をご紹介します。

2008年から活動するボカロP、GYARI(ココアシガレットP)。最近ではVTuberのプロデュースに活動の中心が移り、自分ではあまり楽曲などを発表しないが、初期はニコニコ動画で作品を発表し、それをまとめたCDをコミケで販売する．．．という同人活動をしていた。

その初期の全曲集が本作“AURORAYER ”。既リリース作の中でカラオケやショートヴァージョンなどの一部は収録されていないが、ニコニコで発表された曲に関しては、全曲網羅されている。

また、このあたりではGYARIは確固たる人気を得ていたのか（自分が識ったのはもう少し後なので、「推理」だが、ニコニコの殿堂入りのタイミングや中古流通数から推理すると）、比較的入手しやすく、「GYARI初期作品集」をモノとして手元に置きたい場合には最適な選択となる。

そして、この作品にまとめるにあたって、音が変わっていたりプレイ（プログラミング）が変わっていたりと、今までの作品を網羅していても楽しめる。

「evening glow」は、GYARIが「ボカロジャズ」という分野を確たるものにする前の作品で、発表順としては、2番目となる曲（投稿曲順としては3曲目だが、初投稿曲は2曲目の「リハーサル」という位置づけで途中でフェードアウトしてしまう）。構成としてはピアノ＋ウッドベース＋ドラムス、つまりリン＋ミク＋KAITOのいつものトリオなのだが、曲調はかなりJ-POP。ドラムスのリズムパターンはサビではカップの4つ打ちまである紛れもないポップス～ロック系のエイトビートだが、それに絡むベースがウッベの音なので、ちょっとチグハグ。ただ、ジャズテイストの近いGYARIの他の曲ではソロが長くて「ボカロ」の部分が少ないが、この曲は長さが4分ほどで中間部の20秒ほどのブリッジソロ以外は全て、ヴォーカルが入っていて「ボカロ曲」としてはむしろ正統派。．．．ソロがウッドベースソロなのがジャズへの未練？を感じるけどｗ

この作品、歌詞カードには9曲しかクレジットがないが、プレイヤーに掛けると11トラックが表示される。10曲？目「_」は「_」。だから、「_」だってばよ。何・も・聴・こ・え・な・いｗ。つまりブランク。しかも5分にわたっての。つまりトラック数表示に気づかず、9曲目の「ボーカロイドたちがオリジナル曲をセッションしたようです」演奏終了後、すぐに停止してしてしまった人はラストの曲にたどり着けないというシカケで、GYARIの茶目っ気？

歌詞カードには9曲分（右上の9つに区切られたマス）しかアナウンスがない

真の「Bonus Track」である11曲目は、彼の出世作「ボーカロイドたちがオリジナル曲をセッションしたようです」、つまり「Moonlight Stage - JAZZ SAMBA REMIX -」

の別テイク。元曲では途中でレン、つまりエレピが加わるアレンジとなっているが、このアレンジではヴォーカルレスになる代わりに最初からエレピが加わり、カルテット構成でよりジャジィ。4分少々の小粋な感じの小品。小品と言ってもジャズらしく、ピアノソロ⇒エレピソロ⇒ベースソロ⇒ドラムソロとソロ回しは行われる（ちなみに、ドラムソロはピアノ→ドラム→エレピ→ドラムの掛け合いソロなので、KAITOアニィはぶっ壊れていませんｗ）。

後の作品に比べるとまだ「同人臭」はあるものの、こうしてまとめてみると、改めて彼のソングライティング能力の高さを感じることができる。

彼の初期作を手元に置きたいなら、揃えておいて損はない作品です。

このトリオによる？初期作品集

【収録曲】

1. NicoNico Jiho Jazz
2. evening glow
3. 夏影 Vocaloid JAZZ version
4. ボーカロイドたちがひぐらしのYOUをセッションしたようです
5. ボーカロイドたちがCLANNADライブをはじめたようです
6. 月光ステージ
7. 星巡りのワルツ
8. ニジイロ
9. ボーカロイドたちがオリジナル曲をセッションしたようです
10. _
11. Bonus Track

「GYARI（ココアシガレットP）】AURORAYER【C82クロスフェード】」