所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。活動フィールドが広くない人が、1つの世界を深く突き詰めるのも良いものですが、フィールドが広い人が、王道をいく時は、関わってきた世界のフィードバックがあってまた別の良さがあるものです。関わるフィールドが多岐にわたるアーティストの、ジャズ本流の作品をご紹介します。
クリヤ・マコト。すでに何度かご紹介しているアーティストだが、正規の音楽教育を受けたわけではなく、アメリカ滞在で肌で感じ取ってエッセンスを吸収し、それをジャンル問わず表現している人物。
メインフィールドはジャズなのだろうが、映画音楽やCM音楽、
平井堅やマリーンへの曲提供、エヴァンゲリオンの劇伴や、それから発展したアニソンのジャズアレンジ作品
などいろいろなフィールドで自分を表現している。
そんな彼の王道作品か?
ポーランドのサキソフォニストSylwester Ostrowskiと組んだ作品。ライナーノーツの受け売りだが、ポーランドは、過度に前衛の方にいかず、日本と同じくアメリカの源流ジャズへのリスペクトが強い土地らしい。知り合ったSylwesterのライヴに出演するためにポーランドに通ううちに、レコーディングすることになり、機材の良い東京でやることになり、ついでにライヴも行った...という感じらしい。
そのためこのアルバムは、クリヤとSylwesterの双頭バンドになっている(Makoto Kuriya - Sylwester Ostrowski Quintet)。曲も、クリヤとSylwesterのオリジナル(Sylwesterの作品は、全曲バンドメンバーであるPiotr Wojtasikとの共作)に、Herbie Hancockの「Watermelon Man」と、George Gershwinの「Summertime」というスタンダードも収められている。
ただ、定番曲もクリヤ達の感性で新しい扉を拓いている。
「Tokyo」はSylwesterとPiotrの曲。ちょっと童謡チックな節回しで入るクリヤのピアノが一段落すると、SylwesterのテナーとPiotrのペットが同じ節をなぞるが、カラーはブルージィ。実はブルースなどの基本となるペンタトニックスケールと日本の音階で多い「ヨナ抜きの五音階」は同じものなので基本は似ているのだが、装飾で使われるテンションートがたまらなくブルージィでジャジィ。
「Open Jazz」はクリヤの曲。ゴージャスなピアノグリスを伴ったバッキングと複雑なリズム、SylwesterとPiotrのフルユニゾンのテーマとハイテクニックな曲。メンバーのソロも充実していて、Piotr⇒クリヤ⇒ドラマーのNewman Taylor Baker⇒Sylwesterのシメのソロと、ベーシストのEssiet Okon Essiet以外全員ソロをとる。しかもドラムソロのエンディングといった感じのシメのSylwesterのソロ以外は全員ソロがなが~い。クリヤのソロもテンションノートバリバリのスリリングなもの。これぞジャズ!という感じ。
ラストの「Summertime」はGershwinの名曲だが、リズムが凝っている。曲調や「重さ」は全然違うのだが、レゲエ調の♬ゥンチャカゥンチャカ♬というリズムをゆっくりとピアノで奏で、それに弱音器をつけたペットでPiotrがもの悲しい「あのメロディ」を載せる。途中からSylwesterのテナーも加わり、重々しくなり..つ・い・に、キタ-------------(゜∀゜)-------------!!クリヤのぶっ壊れソロ!ラインの攻め方が、「テンションノート(基本和音に緊張感を与えるスケール=音階から外れた音)」なのか、「アボイドノート(そのスケールでは不協和音となる「弾いてはいけない」音)」なのか、もはやギリw
定番曲にはけっこうひねりが入っていて、オリジナルはある程度王道のジャズ。フロントマンが3人もいて、ゴージャス。
クリヤの広い音楽フィールドが感じられる、王道ジャズでありながら、華が感じられる作品です。
【収録曲】
1. Tokyo
2. Open Jazz
3. Always
4. Cherrys
5. Essiet
6. Watermelon Man
7. Polish
8. Soulmate
9. Summertime
「Just Music - Sylwester Ostrowski & Makoto Kuriya Quintet」(断片的だが演奏シーンあり)
0:00 & 0:21「Open Jazz」、1:43 & 2:15「Tokyo」、3:50「Essiet」、4:34「Summertime」
5:44「Soulmate」、6:24 & 6:58「Always」
オーソドックスだが、光っている。尖っているが、痛くない。
クリヤの、わかりやすさと、尖ったセンスの間にある狭い峰を渡るような選曲と演奏。もはや古典の部類である「Summertime」は、古今東西いろいろなアレンジや解釈があるが、リズムが重くて軽い絶妙な感じ。
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購入金額
2,592円
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購入日
2014年05月04日
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購入場所
TOWER RECORDS
mickeyさん
2021/04/07
ジャズに詳しくはないのですが、母親がジャズ好き
だったので、幼いころから聴いたりしていました。
ジャズを聴くとリラックスできます(^^)
cybercatさん
2021/04/07
この盤はクリヤの大衆的な面と尖った才能のいい塩梅の着地点という感じです。
オリジナルはオーソドックスで、スタンダードはむしろ攻めている、という感じで、どちらも楽しめます。