所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。アーティストのデビュー当時は、そのアーティストのコアとなる部分が強く出ていることが多いものです。いわゆる「テクニック」は無くても、そのアーティストの一番出したい部分が強く出ていて、後から聴き返すと強い魅力を感じるものです。今ではポップス界で、独特な地位を確たるものにしたアーティストの、強い色を持つ初期シングルをご紹介します。
スガシカオ。1990年代中盤から活動を続けるシンガーソングライター。ファンクが強くベースにありながらも、ファンクとしてメジャーなクラブ~ダンスミュージック系だけではなく、フォークファンク~アシッド付近の「濃いあたり」の薫りが強く匂い立ち、そしてそれに独特な詞の世界が築かれていて、特別な世界観を醸し出している。
シングルヒットよりもアルバムとして評価されることが多い、典型的な「アルバムアーティスト」だが、後にはシングルとしても1桁~2桁前半の常連となる。そんな彼もまだほとんど「知る人ぞ知る」だった2ndシングルの時代。あまり売れていないから好きなことをしているのか、世間に媚びてないので売れていないのか、でも、新人アーティストがリリースする2枚目のメジャーシングルとしては、ずいぶん主張が強い。
「SWEET BABY, Half」は、スガの一人多重録音とプログラミングで奏でられる約2分の小作品。ギターの音が、20世紀末としても垢抜けていないのが逆に強烈。すごく強い個性。曲は解決されないままスピードアップして、次の「黄金の月」に繋がるのが、シングルにおいても切り売りではなく、「作品」を聴かせようというスガの取り組みに感じる。
現在でも繰り返し歌われる名曲、「黄金の月」。ただ最近では、アコースティックコーナー(ライヴの中でギター1本で歌う弾き語りコーナー)で取り上げられることが多く、これほどまでにバックが入ったのは珍しい。キーボードはスガ初期のサウンドブレーン=森俊之。パーカッションはディレクターも兼ねる高橋良一だが、それ以外は、ねちっこく結構印象深いベースも含めて全てスガの多重録音。♪ぼくの情熱はいまや/流したはずの涙より/冷たくなってしまった/どんな人よりもうまく/自分のことを偽れる/力を持ってしまった♪からの♪君の願いと/ぼくのウソをあわせて/6月の夜/永遠をちかうキスをしよう♪そして♪君のあしたが/みにくくゆがんでも/ぼくらが二度と/純粋を手に入れられなくても♪この頃のスガの詞は、詞だけ読んでも確実に情景が目に浮かぶほど叙情的。
生ギターのカッティングがファンキィな「これから むかえにいくよ」。ファルセットで通すBメロと、ダミ声を張り上げ、リズミカルに畳みかけるサピの対比がイイ。ここでキーボードとマニピュレーションを担当するのはミックスも手がけた中村文俊。
結局このシングル、森以外はディレクターとミキシングエンジニアの手を借りて、スガが独りで世界を創っている。
この作品がリリースされた1997年は、メジャーデビューシングルの“ヒットチャートをかけぬけろ”
から、4枚のシングルが比較的短期間にリリースされたが、いずれもチャート100位内外で、そんなに強烈に注目はされていなかった。
しかし、その尖り方はまさに原石。
情景の切り取り方、誰にも似ていない歌い方、そしてデジタルビート優勢の世紀末に、こんなにもアーシィな楽曲。
歌の「上手さ」は後年の方が遙かに上だけれど、この頃のアクの強さはすごかったな、と。
後に大成するアーティストの、初期から放つきらめきを感じ取れる作品です。
【収録曲】
1. SWEET BABY, Half
2. 黄金の月
3. これから むかえにいくよ
「黄金の月」
「黄金の月」は今でも繰り返し歌われる名曲
現在のアコースティックアレンジも良いけれど、このシングルヴァージョンも改めて聴くと、イイナァ...
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購入金額
400円
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購入日
2010年12月01日
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購入場所
yahooオークション
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