所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。音楽、そのなかでも歌詞付きのものは作り手側がなにを伝えようとしているのかというのは歌詞の方に比重が置かれていること一般的です。そんな詩の世界で人間の欲、エゴ、嫉みというような暗部を歌い、真実をえぐった作品をご紹介します。
スガシカオ。今ではファンキーポップなアーティストとして彼を捕らえている人も多いと思われるが、その作風はここ数作。当初フォークファンクというかファンキーなアコースティック路線で出た彼が、かなり独自性(アク)が強まり、サウンドもクロっぽくなったのが3rdアルバムの本作。
詩の世界がとくにいい。そこで歌われるのは人間の昏い部分、欲とか、破壊衝動とか、仕返し、とかそんな思い。
それをさらっと歌ってイヤミじゃない、醜くない、というのが彼のキャラクターか。
「あまい果実」。“甘く”はないね。ギターソロのトーキングモジュレーションの様なアクの強い音、クラビのパーカッシヴなバッキング、少しオフったコーラス。そんなクロいバックに載せて、情念が歌われる。♪受話器のむこうで/音がしているけど/その部屋に誰か/他にいるんじゃないのかい/テレビの音って君はいっているけど/何かが動いた音に聞こえたんだ♪..好きが嵩じて想い人への思いが変質していく。それは嫉妬?..♪あまい果実みたいに/ぼくの中で/くさってしまうよ/君へのこんなにも深い/この想いはかわってしまうんだ♪
「310」ではツアーでもファンキーなベースでスガを支える坂本竜太のブリブリのベースライン、共同プロデューサーの盟友森敏之のパーカッシヴなオルガンとスガ自身のキレのあるミュートカッティング。バックから強烈に浮き立ったオルガンソロや、ワウがかかったギターソロ。すべてが熱く、熱を持っている。そして詩の世界もソコまで歌うかね、というところまで歌う。
「いいなり」はさらにネガ。昔屈辱を受けた(おそらくは年上の)彼女を、跪かせて恐怖を与えている男が歌う。♪君のいいなりになって/ぼくは汚れた/はずかしい姿で/それを受け入れた/あの時の君の/うすわらいをおぼえている♪♪今度は/さぁ今度は/君の番になったんだ/そこにひざまづいてごらん/本当は/本当は/怯えているんじゃないのかい~本当は/本当は/許してほしいっていってごらん♪山木秀夫のヘヴィなドラミングと、羽田一郎(久保田利伸と活動していたギタリスト)のキレのあるカッティングが無機質な合成音のバックに緊張感とアクセントを与えている。
この後スガはメジャーになってポップファンクの比重を高くする。詩の内容も相変わらずエロい部分はあるが、人生肯定の方向性を強くする。この“Sweet”を聴いて自分は昔からのスガのファンが「最近は違う」と言って離れるのが理解できた。この暗さ、この深さ、このえぐり方が好きだったのなら物足りないかも。自分は中期以降にスガを識ったので、逆に今の表現形の根にはこんなのが隠れているんだぁ、と知り興味深かったけれど。
ものはオークションで落とした。初期アルバム3枚初回盤特典付きが合計2千円以下という価格。もとの所有者は、そんな離れていったファンだったのかな..
【収録曲】
1. あまい果実
2. 正義の味方
3. 夕立ち
4. ふたりのかげ
5. 310
6. 夜明けまえ
7. 師走
8. グッド・バイ
9. いいなり
10. ぼくたちの日々
「あまい果実」(↓一見動画なさそうだけど、観られます)
この詞の世界を聴け!
スガの醸し出す昏い精神世界が良く表されている
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購入金額
400円
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購入日
2010年12月01日
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購入場所
yahooオークション
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