レビューメディア「ジグソー」

ADELモジュールの効果を実感

EMPIRE EARSは2015年にアメリカ・アトランタで設立された、カスタムIEM(インイヤーモニター)を中心に製造しているメーカーです。特にBAドライバーを多数搭載するハイエンドモデルで有名になった訳ですが、実はさほど有名ではないもののドライバー数の少ない製品やユニバーサルモデルも手がけています。

 

ただ、今回紹介するのは、恐らく生粋なユニバーサルIEMではなく、カスタムIEMのサンプルとして製造されたのではないかと思われる個体です。

 

 

現在は既に生産完了となっていますが、以前はEMPIRE EARS製のカスタムIEMに、聴覚保護技術ADEL(Ambrose Diaphonic Ear Lens)モジュールを搭載した「ADEL Series」という製品群がありました。これはEMPIRE EARSの通常ラインナップをベースにADELモジュールを組み込んだ仕様のものです。

 

ADELモジュールについては、かつて64AUDIOがモジュール化して発売したものの、ADELの技術開発元であるAsius Technologiesとのトラブルにより独自技術による同種の効果を持つ「apex」に切り替えて、自社の製品群を一新して発売し、その中に私が所有しているU4/U3/U2が含まれているということは、U3のレビューの中で書いた記憶がありますので、詳細はそちらをご覧ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先日、主にBeat Audio製のイヤフォンケーブルや64AUDIO A18sの音を聴いてみたくなり、秋葉原のeイヤホンで開催されていた試聴会に足を運んだのですが、試聴を終えて処分品コーナーを眺めていると、EMPIRE EARS製の旧製品のサンプル品処分が多数並んでいるのを見つけました。

 

特に低価格帯の製品ではベースモデルとADEL搭載モデルが両方並んでいましたので、何となく興味が湧いて、3BAのCERBERUS-III、4BAのSPARTAN-IVで、共にADELの有無も含めて試聴させていただきました。

 

すると、率直に言ってSPARTAN-IVは全く私の好みには合わないので早々に除外となり、CERBERUS-IIIのADELの有無を比較する形となりました。ベースは同じなのでどの程度差が出るのかと思っていたのですが、はっきりと別製品と言える程度の音の差は見いだすことができました。中域~高域の質感や解像感など、多くの点ではっきりとADELありが上回りましたので、ついつい意味なくCERBERUS-III /w ADEL(B1)を購入してきてしまったわけです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

完全に本体のみで販売されていて、イヤーピース一つ付属していません。ちなみにEMPIRE EARS製品をごく普通に新品で購入した場合には、ケーブルとしてEFFECT AUDIO製Ares IIが付いてくるそうです。イヤフォン添付用としては結構高めのケーブルであり、比較的安いイヤフォンを買った場合にはかなりお得感があるかも知れません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後の試聴では、ケーブルとしてLuminox Audio 85-Filter(アンバランス時)、ORB Clear Force(2.5mmバランス)、イヤーピースにはSpinFitを組み合わせています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更新: 2020/12/19
音質

音場は広めで、そこそこよくまとまった無難さが特徴

それでは早速試聴に移りましょう。

 

DAPはいつも通り、Acoustic Research AR-M2(アンバランス)とAstell&Kern KANN(バランス)をそれぞれ利用します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

割合価格帯や構成が近い製品として、以前から64AUDIO U3を使っているわけですが、U3は弱ドンシャリ程度のバランスで、見通しの良いすっきりとした音が特徴となります。

 

それと比べると、CERBERUS-III /w ADEL(B1)はややハイ落ちで、中低域~中域の密度が濃く、高域方向にやや閉塞感を感じるというのが第一印象です。組み合わせているケーブルが2本とも高域方向に強い製品であるのは、それをケーブルで補正する意味合いがあります。以下の評価はそれを踏まえた上でご覧ください。

 

 

特にバランス接続時にはBAらしさを活かした音場の広さがあり、豊かな中低域~中域に支えられて空間の密度も十分に感じられます。EMPIRE EARSというブランドから想像していた音よりは遙かにリスニング寄りの傾向です。最低域や高域方向はさほどしっかりと伸びているわけではなく、ヴォーカルものの雰囲気を得意としているようです。

 

ただ、弱点となるのは中高域に妙なピークがあるのか、ヴォーカルも声質によっては妙に声に固さが出る部分があります。丁度AR-M2の方の写真で再生している「The Only Living Boy In New York / Simon & Garfunkel」のポール・サイモンの声があまり良くないのです。「10 Miles / Champlin Williams Friestedt」などは結構良い雰囲気なのですが…。

 

逆にKANNの方で再生している「Determination Symphony / Roselia」はヴォーカルがきちんと存在感を持っていてなかなか良いのです。不思議なことにこの曲が収録されているRoseliaのアルバム「Wahl」はこのイヤフォンと素晴らしくマッチしています。耳障りな音がなく、密度と広さを併せ持つ音場がピッタリと合っているのです。

 

ジャンルによる得手不得手ではなく、構成されている音の質によって上手く合うかどうかが極端に変わるイヤフォンという印象を受けます。以前から使っている64AUDIO U3とは持ち味が極端に違いますので、使い分けは十分に成立するでしょう。

 

購入時に試聴した、ADELモジュール無しのベースモデルと比較すると、音場の見通しと中域~高域のバランスが大幅に改善されています。ADELモジュールは必須といえるほどの違いがありました。

 

 

今回の購入価格であれば文句なくお買い得だと思いますが、本来の価格でこの音を聴いて、カスタムでオーダーするかといわれると、正直なかなか難しいかなと思います。

  • 購入金額

    26,300円

  • 購入日

    2020年12月12日

  • 購入場所

    eイヤホン

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