所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。ジャンルの中の立ち位置。ひとくくりに「ジャンル」と言っても、その中には幅があります。「ロック」とおおぐくりではなく、AOR、オルタネイティヴ、ハードロック、ヘヴィメタル、プログレ...と小分けにしてもそのサブジャンルのなかでも各アーティスト/グループの立ち位置は様々です。フュージョンという、ジャズとロック・ポップスを「まぜた」ジャンルであっても、様々な立ち位置がありました。そのなかで、ジャズ寄りのアプローチをしてバックビートが強くないフュージョンの名盤をご紹介します。
天野清継と国府弘子。ジャズ系ギタリストの天野とジャズピアニストの国分が組んだユニットで、通称天国プロジェクトと呼ばれていた。
このコンビでは2作作品を残していて、先に2作目
をご紹介したが、本作“Heaven”の方が先の作品となる。
天国プロジェクト2作目の“Heaven and beyond...”は、バックを日本人ミュージシャンにして、フュージョン畑に属しながらも、いわゆる「ジャパニーズフュージョン」ではないクラシカルなアプローチを採ったが、1作目の本作は国外のミュージャンを起用、こちらも「フュージョンだがジャパニーズフュージョンではない」、小粋な作品となっている。
「Winner’s Circle」。Alex Acuńaの、あまりスネアをバックビート(2拍、4拍目)に入れない軽やかなリズムに乗せて、天野のアコギとGary Herbigのフルートがテーマを奏で、国分のピアノが包み込む。スピード感がありながら、尖っておらず、優しい調べなのは、この作品の特徴だが、時々ハッとするきらめきがあるのはさすが。
「Cry」は、天野と国分が絡み合いながら切なく奏でるメロディが美しいが、ストリングス調の音色で薄くバッキングするDon Grusinのセンスがスバラシイ。また、途中で、複数弦弾きでオッと言う感じのセンスを魅せるAbraham Laborielもなかなか「わかってらっしゃる」。
このアルバム、国分のHPでは国分の6thアルバムとして紹介されているほどの作品なのだが、楽器特性上もあって、メロを取るのは国分よりも圧倒的にアコースティックギター担当の天野が多い。さらにドラムスが、ドラマーと言うよりパーカッショニストとしてより有名なAlexであることもあって、リズムが激しくない。ギターメインでビートが強くないので、ハードな感じにはならない曲がほとんどなのだが、珍しく後半大盛り上がりなのが、「Morning」。出だしはミディアムテンポで、ボサ風のリズムに国分のピアノがもの悲しい調べを乗せているのだが、途中のギターソロの前にリズムブレイクがあり、そこからかけ声(たぶんAlex)が入って、ラテン系のピアノ伴奏になる。また一度もの悲しいテーマに戻るのだが、そこからスピードアップして入るコード多用のピアノソロが激熱く、天野はフラメンコ調のカッティングでバッキング、Alexはティンパレス叩きまくり&サンバキックですっかりできあがっているし、ベースのAbeもサンバ調リズムでグングン引っ張る。一番ノれる曲かも。
この天国プロジェクト、二人とも所属レコード会社も同じで、音楽性の相性も良く、歳も近かったので、もう少し続くかな...と思っていたので、2作しか創られなかったのはとてもザンネン。特にこの1作目のテイストがとても好きだったので、こっち路線を今一度...と思ったのだが...
DonやAlexはすでに、70歳代中盤になっているが、幸いなことに鬼籍に入ったプレイヤーは今のところいないので、お祭りみたいにもう一度立ち上げてくれたら、必ず行くのに...と、そんなことを思ってしまう天国プロジェクトです。
【収録曲】
1. September Song
2. Winner’s Circle
3. Cry
4. For My Friend
5. Simple Pleasure
6. Morning
7. Monet
8. Bahia Skyline
9. A Long Way to Heaven
10. Steppin’ Out
11. Etude
「Cry」
ジャズ寄りフュージョンでは名盤では?
明確なロック調を基調とする「ジャパニーズフュージョン」とは一線を画すが、それはAlex AcuńaとAbraham Laborielのリズム隊というのが一番キモかも。
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購入金額
3,000円
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購入日
1993年頃
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購入場所
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