所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。音楽のグループ。人が集まる以上、メンバーの想いが完全に同調することはありません。目指すモノ、やりたい方向性、セールスに対しての考え方...グループはその最大公約数を採って活動しますが、どうしても長い活動の中ではズレが生じていくモノです。永く不動のメンツで活動したフォークデュオの転換点となった作品をご紹介します。
ふきのとう。山木康世と細坪基佳による男声デュオ。北海道で結成され、1974年メジャーデビュー。以降1992年の解散まで、不動のコンビで活動。ふたりともまだ現役であり、ヒット曲もあるのでニーズはあるはずだが、昨今のリバイバル・リユニオンブームにあっても、一度も再結成の話が出てこないグループ。
時代的には、生ギター中心のフォークソング~バンドサウンドが入ったニューミュージックの頃を中心に活動したグループ。合計14枚制作された彼らのオリジナルアルバムの中では、最後の方、12枚目にあたるのが本作“星空のページェント”。
彼らとしては、従前とはかなり路線を修正した作品であり、初期のフォーク色はほとんどなく、音響処理もエフェクターなどが多く使われ、素朴な...というより、粋なという感じが強くなったアレンジになっている曲が多い。
表題曲の「星空のページェント」は、打ち込みの激しめのドラムスに絡むスラップベースが特徴的な曲。故Jake H. Concepcionのサックスソロに続くブリッジ部分が、今までのふきのとうではあまり聴かないようなライン。このあとエレキギターのソロがくるならば、THE ALFEEか、というような感じのロック度の強さ。所々に挟まれるハーモニーはふきのとう節だが...
「汽車は夕陽を」。両方がシンガーソングライターであるふきのとうだが、王道パターンは山木の書いた曲を細坪が歌うパターン。次にそれぞれ自分の書いた曲を自分が中心に歌う、と言うものだが、これは珍しく、細坪の曲を山木が歌ったモノ。山木の深く太い声は、シングル向けの華には欠けるが、力強い。♪人は夢みる/旅人だろう/出会いと別れの/日本のレールが続いている♪という素朴な歌詞には山木の力強い声が合っているのだが、少々アレンジがシャレ過ぎているかも。
細坪が創り、自分で歌った「Time goes by」。バンジョーを思い起こさせるミュートエレキギターのアルペジオや、全編入っているアコースティックギターのコードストロークなどはフォークを思い起こさせるが、ピアノのコードの付け方や、コーラスの付け方は、もはやフォークのカテゴリーのそれではなく、ふきのとうが新たな段階に進んだのがわかる。
先輩・後輩の関係で、山木が先導していたグループが、細坪が力をつけて新しい風を入れていったために方向性にずれが生じ、最終的に解散に至ったようなことがWikiなどには記されているが、それが本当かどうかはわからない。ただ、この作品から明らかに従前の路線とは違うのは確か。それが時代の要請なのか、嗜好・指向の遷移なのか、二人の力関係の変化なのかはわからないけれども。
ただ、リアルタイムに聴いていたファンにとっては「終わりを感じ始めた」作品では、あったようです。
【収録曲】
1. 星空のページェント
2. 木の葉が風に
3. 忘れじの春
4. Twilight
5. 汽車は夕陽を
6. Time goes by
7. おれんぢ ぺこ
8. ガス燈
9. 忘れたくないよ
10. ココナッツ・ムーン
「星空のページェント」
ふきのとうファンとしては★2、ニューミュージックファンとしては★4
かなり曲調が変化しており、以前の「ふきのとう」を期待しすぎると厳しい
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購入金額
3,200円
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購入日
1986年頃
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購入場所
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