所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。 こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。流行りの音楽を取り入れることは、自分の音楽を守るのと同様、人々に受け入れられていくには重要なことです。リズムに乗せづらい母音が多い日本語という言語を、リズミカルにビートに乗せるために、常に最新の音楽を取り入れていた先駆者の作品をご紹介します。
久保田利伸。言わずと知れた、日本でファンキィな音楽と言ったら...という第一人者。...とは言っても、彼の音楽にも年代によって多少のブレはある。初期の(今で言う)J-POPにブラック風味を効かせた軽いモノから、アフリカンリズムを強く入れたり、カリビアンだったり、レゲエが濃かったりしてマニアックな方面に行った時期もある。さらにソウル、ファンクといった彼の芯に、ヒップホップやラップと言った当時最先端の音楽を取り入れ、それでいて「日本語」で表現して、自分のモノにしてきた。
そんな彼が20世紀末公開の映画「メッセンジャー」のオープニング/エンディングテーマとして書いたのが本作。映画は未見なのでマッチングなどは不明だが、ターンテーブルと陽気なかけ声も入ったラップ曲と、静かに流れるムーディなソウルという毛色の違う2曲が収められる。
映画のオープニングテーマ「Messengers' Rhyme ~Rakushow, it's your Show!~ featuring NAOMI SHIMIZU」は、盟友柿崎洋一郎がリズムギターで、DJ hiroがターンテーブルで加わるが、あとは全部クボタの打ち込み。付け加えられているNAOMI SHIMIZUなる人物は他のクレジットにはなく、担当はわからないが、サビのラップ風のコーラス部分に入っている女声なのかな(ラップのコーラスもクボタの重ね録りだけでは得られなさそうな声も入っているので、クレジット外の人物も参加しているのかも)。日本語を「リズム」にしたクボタ独特の日本語ラップ。今でこそ、このテの音楽は珍しくもなんともないが、20年以上前の20世紀末の作品と思うと開拓心に驚愕する。ラストの♪楽勝!楽勝!/It's your Show!♪と繰り返されるコーラスが、和洋チャンポンの尾韻踏みでクボタらしい。
エンディングテーマの「No Lights... Candle Light」は、淡々とした打ち込みのスローなトラックに、クボタ粘る歌声が乗るソウルチューン。♪Baby, come close to me/Let me touch your soul/夜に甘えて/Just candle light♪と静かなグルーヴで歌われるのだが、文節一つ一つが「ベイビイ」とくっきり歌われるのではなく、「ベイビイ」とふわっと入って、スッと抜く感じで歌われているので浮遊感がある(文字で書くと伝わらんなw)。ここでも英語と日本語を同列に扱って、子音の多い英語と母音が強い日本語を上手く融合させている。
まだラップ文化など根付いていない前世紀末の日本で、果敢に母音が多く切れの悪い日本語という言語をビートに乗せた作品。彼がこのとき採った日本語の文節分解やアタックの移動などは、この後日本語ラップのスタンダードになっていく。
そういう意味では、クボタはまさに、自分の力で風を切って世を切り拓いていったサイクルライダーだったのかもしれません。
【収録曲】
1. Messengers' Rhyme ~Rakushow, it's your Show!~ featuring NAOMI SHIMIZU
2. No Lights... Candle Light
3. Messengers' Rhyme ~Rakushow, it's your Show!~(Original Karaoke)
4. No Lights... Candle Light (Original Karaoke)
「Messengers' Rhyme ~Rakushow, it's your show!~」 [Official Video(Short)]
当時なかった新規性にこそ意味がある
曲そのものは、シングル曲としては強烈なアピール力はない。
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購入金額
1,223円
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購入日
2000年頃
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購入場所
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