所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。シングルカット。以前はその名の通りアルバム収録曲として製作した楽曲をシングルの長さに合わせて編集したものでしたが、20世紀の終わり頃からMIXを換え、よりアピールするような音色にしたり、長く踊れるよう尺を伸ばしたりといった工夫がされるようになってきました。日本のファンク界の黎明期に強い足跡を遺した男のシングルとその曲の別MIXを収めた作品をご紹介します。
久保田利伸。何度かご紹介しているが、J-POPにファンク、ソウル、ゴスペルといった黒人音楽要素を持ち込み、融合させるのに多大な功績があった人物。アルバムでの最大の売り上げはベストアルバム1作目
だが、オリジナルアルバムとしては3枚目のアルバム“Such A Funky Thang!”が最大の売り上げを誇る。
その大ヒットアルバムのリリースの後を追うように、2ヶ月おきに3枚のシングルがカットされた(これらは公式サイトでは「MINI ALBUM」と分類されているが、3枚とも表題曲のみヴァージョン違いが3曲入っているだけであり、maxiシングルに他ならない)。一発目は硬い打ち込みがCOOLな“Such A Funky Thang!”を代表するダンスチューン“Dance If You Want It”、2枚目は切なく染みるハチロク(6/8)の名曲“Indigo Waltz”で3発目が本作“High Roller”。一応CFソングではあったのだが、他の2曲と比べると少し地味なのは否めない。
しかしそれはアルバムでの話。このシングルではミックスが深くて/弾けてて楽しい!
順に聴くと「High Roller('Rock It Tonight' Mix)」。こっちは「深い」方。実はぱっと聴き「Album Mix」とあんまり違いが分からない。分数も2秒しか違わず、Extendしているわけではない。ソロなどが差し替えられているわけではない。でもこっちの方が高揚感がある。違いはベースの音質とパーカッションのキレ、コーラスの音量か。ベースの音質はこちらの方がむしろ低域が少なくて音圧としては低い。でもスラップの「ビヨン」という弦の震えが強調された刺激的な音で硬いノリを出し、パーカッションは両端に広げられたタンバリンなどが広さを出している。アウトロのコーラスが少し大きめにミックスされているために、特にヘッドホンで聴くと気持ちよいミックス。「Rock It Tonight」と言うのが何を表しているのか分からないけれど街で聴きたいミックス。
弾けてるのは「'World Beat' Mix」。こっちは1.5倍ほどに伸ばされている長さはカンペキ遊びに使われている。久保田の声のサンプリングループのフェードインで始まり、元曲にはないヴォイスベースやクラビ風のシーケンスパターンが豪華に付け加わったイントロ、Aメロに入ると逆にむしろリズム以外を大胆に削ってリズム+久保田のヴォーカルという感じのソリッドさに。2ndコーラスに入ると左右にパンするコードがバッキングに入り、遊びまくり!さらに間奏は「World Beat」らしく、レゲエ⇒祭り太鼓⇒オールディーズと数小節ずつの展開を見せ、遊ぶ。アウトロのギターソロも長いなー...ラストの唐突な終わり方も凝ってる。
最後の「Album Mix」はやっぱり基本。スピーカーで音出しするならこっちかな。ベースの音圧が高く、一番ピラミッド型に構築されている。左右のパーカッションは「'Rock It Tonight' Mix」に比べると地味だけれど、充分広がってはいるし。
今となってはシングルリリース時にMIX違いを入れてシングルを構成する、というのは決して珍しいことではないけれど、それが根付く時代より前に本作はある(だからミニアルバム扱いなのかな)。
そういう意味ではmaxiシングルの奔りの奔りとも言える本作、ここでも久保田は時代を先取りしていた、そんな作品です。
【収録曲】
1.High Roller('Rock It Tonight' Mix)
2.High Roller('World Beat' Mix)
3.High Roller(Album Mix)
ミニアルバム(もしくはMaxiシングル)全てが同一曲、の奔り
その後よく採られた手法であり、今となっては当たり前だが、シングル=ドーナツ盤(45rpmアナログレコード)のA面/B面のイメージが強い当時は画期的だった。
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購入金額
1,300円
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購入日
1989年頃
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購入場所
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