レビューメディア「ジグソー」

フュージョンらしさが前面に出ているが、実はリズムトラックは打ち込み...というのが他にはあまりない

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。機械やコンピュータを使った音楽。ジャンルによって合う/合わないがありますが、一般的に奏者のテクニックを魅せる一面があるジャンル=「フュージョン」との相性はあまり良くありません。そんな中、曲調は正統派の「ジャパニーズフュージョン」でありながら、リズムトラックを全て打ち込みで製作した意欲的な作品をご紹介します。

 

DIMENSION。遅れてきたフュージョンユニット。「フュージョン華やかなりしころ」というのは、世界的に見れば1980年前後。Chick CoreaやLarry Carlton、Lee Ritenour、David Sanbornといった個人や、Weather ReportやBrecker Brothersと言ったグループまで、ポップス/ロック風味を入れてわかりやすい方向を目指したジャズ、もしくは、ジャズロックに民族音楽、クラシックの手法まで取り入れて、音楽を「fusion」させ、新しい音楽を創ろうとした。

 

その後海外では、1980年代中盤に掛けてKenny GやYellowjacketsのような明快なメロディラインがあるわかりやすい方向性に行き、さらにそれはスマートで刺激の少ない「スムーズジャズ」に遷移する。

 

一方日本では、1980年代中盤までは、ロック寄りの高中正義や、かなりジャズ寄りのナベサダ(渡辺貞夫)や渡辺香津美、ラテンな松岡直也やアーシィなネイティブ・サンまで幅広く展開していたが、90年代に入ると、良くも悪くもF1ブームとそれに取り上げられたテーマソング「TRUTH」が万人に識られることになり、「フュージョン」とは、ロックが基調で、ジャズ以外の他の音楽の要素がほぼない、独特な「ジャパニーズフュージョン」に進化、その方向性で固定化された。

 

DIMENSIONはそうして市場が出来た後、1990年代になってから出てきたグループ。そのため、ナベサダや香津美時代からのファンはすでにだいぶ熱が冷めており、「ジャパニーズフュージョン」になってからのこのジャンルのファンにとっても半周遅れのグループ。

 

しかし、フュージョンブームが明らかに去ってから出たグループだからか、彼らは性根が据わっており?1992年のデビューから2020年の2月まで不動のメンバー固定で活動した。メンバーはイケメンサックスプレイヤー勝田一樹、ギターマエストロ増崎孝司、DIMENSIONの頭脳=キーボード&マニュピュレートの小野塚晃の3人。

 

そんな彼らの1994年の作品、3枚目のフルアルバム“Third Dimension”。

 

元々「上物(うわもの)3人組」で、リズム隊レスのグループのため、レコーディングでは凄腕スタジオミュージシャンを入れることが多い彼らだが、この作品では打ち込みで全て乗り切り、自分たちのテクニック見せ見せ(魅せ魅せ)に吹っ切れている作品となっている。

 

Lost In A Maze」。リズム的には見るからに(聴くからに?)打ち込みでバスドラ多め、それに合わせてキーボードはキメキメの嵐で、ギターはそれに延々ライトハンドで合わせるというテクニック前面押し出しのイントロから、曲に入るとハイノートを使ってサックスが、激しくもポップなテーマを奏でる。この間もリズムは変拍子風譜割りや複雑なキメを使って、これでもかとテクニックを見せつけてくる。フュージョンというものは「ヒトのテクニックを聴く」という側面もあるので、本来打ち込みは相性が良くないはずだが、ここまでキメキメの嵐の曲となると、ヒトの演奏の部分が際立って、いっそすがすがしい。

 

続く「Fly Into A Passion」も難曲。長いキメキメのフレーズを多く挟んだハイスピードハードシャッフルで、オルガン調の音のバッキングとベンドやモジュレーションを多く使った小野塚のハードロックな長いソロが魅せ場。短いが勝田と増崎のソロもハードでロックしている!!

 

Illusion」はGino Vannelli

を彷彿とさせるような、スロー目のハチロクのロッカバラード。歌心溢れ、泣きが入った勝田のメロディラインが沁みる。Aメロでは比較的クリーン目の音でオブリを入れていた増崎が、サビになるとグッと切り込んでくるのが曲をこれでもかと盛り上げる。ソロは小野塚⇒増崎の順序だが、最近あまり聴かないような矩形波の音が強めの「ザ・シンセ」という音色で攻めるキーボードソロ⇒オーバードライヴという程度の歪みでタッチもわかるような繊細でブルージィなギターソロの対比も面白い。ラストにテーマに戻ると勝田はハイノート吹きまくりでぶっ飛んでおり、そのバックのリズムも結構ハデ。一曲の中で何度も表情が変わるドラマチックな曲。

 

28年間不動の3人で作品を造り続けてきたDIMENSIONだが、ついに今年の2月に小野塚が抜け、勝田と増崎の二人になる。解散...ではなくDIMENSIONを継続する選択をした二人。今後どのような展開をしていくつもりなのか...

 

本来機械モノとは相性が良くないフュージョンという音楽で、初期からその体制を模索していた彼らならなんとかしてしまうかもしれない、そんな気にさせてくれる打ち込み主体のフュージョン作品です。

1曲のみ浜家優子がコーラスで参加するが、あとは打ち込み+3人のみの演奏
1曲のみ浜家優子がコーラスで参加するが、あとは打ち込み+3人のみの演奏

 

【収録曲】

1. Lost In A Maze
2. Fly Into A Passion
3. Yellow Sunshine
4. Illusion
5. Real Box
6. 6-Trip
7. Buster
8. Going Back
9. Rendezvous

 

「Fly Into A Passion」

更新: 2020/10/22
必聴度

機械モノとの融合が高度

ハードでヘヴィなロック調の曲が多く、ヒトがリズム隊であればそれはそれで別のグルーヴを醸し出したと思うけれど。

  • 購入金額

    3,000円

  • 購入日

    2009年頃

  • 購入場所

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