ここ数ヶ月の間に、Technics SL-1200Gに使う各種アクセサリーの顔ぶれが変わったことで、出てくる音にも随分変化が表れました。特に劇的な変化が起きたのは、シェルリード線をKS-Remasta KS-Stage401EVO.II-VKにグレードアップしたことによるものです。
しかし、ここでふと気付いたのです。シェルリード線は微弱な電流を通すからこそ、僅かな仕上げの差が出てくる音の違いに直結するわけですが、その微弱な電流はフォノイコライザーによって増幅されるまでは微弱なままの筈です。となると、SL-1200GとPhasemation EA-200の間のケーブルも同じくらい影響が大きいのでは無いかと。
これまで、この間のケーブルは以下の順で入れ替えて使ってきました。
現時点では、SUNSHINE SRC-REFERENCE 1.0に同社製のSpiral Exciterを巻いた状態で使っていて、それなりに満足感はあったわけです。ただ、これ以上を求めるとすれば、手を入れる部分はここだろうと思いました。
ただ、SRC-REFERENCE 1.0+Spiral Exciterの音は、1mで3~5万円クラスのケーブルの音には勝るとも劣らないレベルだと思いますので、半端なケーブルに入れ替えても恐らく意味は無いでしょう。狙うなら10万円クラス以上の特売か中古と考えていました。そこで目を付けたのはコンディション難あり中古品が出ていた、audioquest Cheetahでした。当時128,000円(1m、税別)というクラスの製品です。
外箱等の付属品が無い状態でしたので、この状態で届きました。一応この製品の特徴であるDBSユニット(詳細は後述)にはカバーが用意されていました。
難有りなのはDBS接続側のRCAピンプラグの付け根付近の皮膜がほつれているということです。中の導体は別途皮膜が用意されていますので、実害はそれほどないと思いますが…。
RCAピンプラグは銀メッキであり、かなりきつめの光沢があります。このケーブルは中身の導体もPSS(Perfect Surface Silver)という純銀製のものとなります。絶縁体はテフロン・エアチューブを採用していて、素材固有の音色を排除するよう工夫がなされています。
audioquest独自のDBS
ケーブルとしての仕様だけをみても、10万円クラスといわれて納得せざるを得ないものではあるのですが、この製品の大きな特徴となるのは、audioquest製の上位ケーブルにのみ用意されているDBS(Dielectronic Bias System)です。
これは簡単に言えば絶縁体に通常の音声信号よりも大幅に高い電圧をかけ続けることで、絶縁体の誘電効果を最適に保ち続けるというシステムで、当初は12V(音声信号はせいぜい1V前後)で商品化されたものの、日本でaudiuoquestの代理店を務めるマランツ(当時。後のD&M)側から、より電圧を高くした方が効果が大きく表れると助言した結果、24V→36V→72Vとどんどん電圧が上がっていったという経緯があるそうです。なお、この電圧はループしないように流されているため、電池はほぼ自然放電と同じ状態でしか使われないとのことです。
今回購入したCheetahはかなり古い製品ですので、36VのDBSが添付されています。現行モデルのDBSはすべて72Vに統一されているはずです。Cheetahも初期モデルは12Vでしたので、一応第2世代のCheetahなのだと思いますが…。
こちらがDBSユニットとなります。本来はケーブル本体にくくりつけるための専用バンドが添付されている筈なのですが、このバンドは今回欠品していました。
中には12V乾電池が入っています。これを直列に並べる本数で電圧を決定しているわけです。このDBSは36V版なので12V乾電池3本ですが、現行モデルのDBSではこの電池を6本同時に使うわけです。
欠品だったバンドの代わりには、100均ショップでケーブルタイを買ってきました。丁度4本入りでしたので、片側2本ずつで使えますからね。
純正のバンドよりはちょっと大げさですが、取り付け自体はこれで問題ありません。
あとはケーブルから出ているプラグを、DBSの先端に差し込めばDBSが機能します。DBSを機能させたくない場合には、プラグを抜けば良いわけです。
どうしても銀の癖は出るが、やはり格の違いを感じる
早速SL-1200GとEA-200の間をこのケーブルに交換しました。最初からDBSは有効にしておきます。
まずはここ最近よく聴いている、「CWF 2 / Champlin Williams Friestedt」を聴いてみます。
すると、1曲目「Runaway Dancer」の冒頭でいきなり違いが出ます。バスドラムが明らかに重さと力強さを増しているのです。ハイハットがややソフトタッチになるなど、銀線らしい特徴は出ているのですが、それ以上に低域方向の充実度が別物のように向上していることが目立ちます。
ヴォーカルが入るとまた驚きがあったのですが、今までのヴォーカルが薄っぺらく感じるほど、実在感が大幅に増しました。SL-1200G自体が下位モデルと比較するとヴォーカルがしっかりと濃く出る傾向があるのですが、その特徴がここで初めて自分の環境で実感できた気がします。
高域方向の出方はちょっと小綺麗にまとまりすぎていて、個人的には銅線の方が好みなのですが、それ以外の帯域の質感にあまりに大きな差がありすぎて、些細な問題にしか感じられません。
後は適当にいろいろなレコードを再生してみたのですが、「Amanda / Boston」(LP「Third Stage」収録)のように、今までは単に音が悪いだけだと思っていたようなレコードでも、意外なほどヴォーカルが聴ける音になっています。
以前誤って落としてしまい、傷が入って以来あまり聴いていなかった「Direct Cutting at King Sekiguchidai Studio」も久々に聴いてみましたが、自宅のシステムでこんなに濃厚な空間が表現できるとは思わなかったというほど進歩しました。
当然ソースによって変化の仕方は異なるわけですが、ヴォーカルの質についてはどのレコードであっても文句なしに向上したと思います。
今まで音が悪いと思ってあまり聴いていなかったレコードを引っ張り出してくると新たな発見が色々とあり、レコードを聴く楽しみがまた増えたような気がします。このケーブル交換にはそれだけの価値がありました。
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購入金額
19,800円
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購入日
2020年10月20日
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購入場所
オーディオユニオン
kaerkiさん
2020/10/24
jive9821さん
2020/10/24
まあ、常識的な世界ではありませんよね。
ちなみにこの金額でも当時の最上位モデルではありません。2倍以上高価な製品があったりします。
DBSについても一見うさんくさいのは確かですが、これで結果が良いとなると受け入れざるを得なくなります。
元々ケーブルに金をかけるのはあまり趣味では無かったのですが、どうしてもあと一歩何かが足りないとなった時に、結局はここに行き着いてしまうのです…。