所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。時代を制したようなビッグヒットを生み出した制作陣を変える決断はアーティストにとっては大きな賭です。「史上最も売り上げたアルバム」として記録に残る作品を制作した制作陣と引き続き制作した作品の売り上げが前作の半分にとどまり、思い切って当時勃興していたジャンルに挑戦すべく新しい風を入れたビッグアーティストの作品をご紹介します。
“King of Pop”ことMichael Jackson。1970年末~1980年代に3枚の大ヒットアルバムを制作してきたQuincy Jonesとのコンビを解消し、新たにTeddy Rileyと組んで発表された8枚目のアルバム、“DANGEROUS”からの2枚目のシングル。1990年前後のブラックミュージックのサブジャンル、「New jack swing(NJS)」の第一人者だったTeddyの最高傑作と呼ばれているのがこの曲、「Remember The Time」。
このマキシシングルには、5つのミックスが納められている。
1曲目の「Remember The Time (Silky Soul 7")」、「7"」は一般的に7インチシングル、つまりドーナツ盤を示す言葉であり、曲順も1曲目なので、一番ベーシックなミックスかと思いきや、むしろ一番印象がちがう作品となっている。ブリッと撥ねるような躍動感あるビートが核となっているTeddyのオリジナルに比べて、SilkことSteve "Silk" Hurleyがプロデュースしたこのミックスはとてもシルキーでスムース。若干スピードも速められ、Silkが追加で入れたキーボードがファットでムーディな面も醸し出している。
アルバムプロデューサーのTeddyがリミックスをプロデュースしたテイクは、2曲(2曲目と3曲目)収められるが、「Remember The Time (12" Main Mix)」の方が長い分堪能できる(...と言っても差は48秒だが)。Silkのスムースさとは打って変わって、ヴゥンと響くベースとリズムマシン然とした軽めのドラムスがリズムを刻む「重くて軽い」絶妙なビート、まさにNJS。
最も印象が変わっているのが、ハウス系のプロデューサーMaurice Joshuaが手がけた「Remember The Time (Maurice's Underground)」。フワフワとした感じのコードがループされる中、サンプリングされたMichaelの歌のフレーズが抑えめレベルで繰り返される。「曲を鑑賞する」というよりは踊るための曲であり、極論言ってしまえば「Michaelの曲/声でなくても良い」くらいの崩し方。トランペットやフルートのような音色の「ソロっぽいシーケンスパターン」が繰り返され、曲が伸ばされているのはまさにあの頃のハウス。
一部は元歌がMichaelでなくても...と言うほど「素材化」されているミックスもあるが、他はそれまでの巨匠Quincyとのコンビとは明らかに「違う」新しいサウンドを提供してくれる。
自分の今まで築いたポジションを降りてまでも、「次の峰」を目指そうとするアーティストの気概を感じられる作品です。
【収録曲】
1. Remember The Time (Silky Soul 7")
2. Remember The Time (New Jack Radio Mix)
3. Remember The Time (12" Main Mix)
4. Remember The Time (E-Smoove's Late Nite Mix)
5. Remember The Time (Maurice's Underground)
「Remember The Time (Official Video)」
1990年代前半のダンスシーンを把握するには必聴
NJS、ブームだった時期は短いが、ものすごく強いムーブメントだったので、その分時代と強烈に結びついている。
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購入金額
1,800円
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購入日
1992年頃
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購入場所
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