レビューメディア「ジグソー」

グルーヴにおけるドラマーの果たす役割がよくわかる作品

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。ライヴアルバム。ライヴ会場では、ファンにとってはお気に入りのアーティストが目の前で演奏してくれるだけで満足度は上がるものですが、そのアルバムとなるとその録音状態やプレイの内容はオリジナルスタジオ作品には及ばないことがほとんどです。しかし、ライヴアルバムならではのアレンジがあったり、永い歴史を持つグループであれば、オリジナル演奏者と違うプレイヤーのプレイが聴けたりもします。初代ヴォーカリストが復帰することによって、多くの初期黄金期の作品をその時点のメンバーで再現することになったツアーを収めた作品をご紹介します。

 

TOTO。すでに何度もご紹介しているアメリカンロックグループ。メンバー全員が現役の凄腕スタジオミュージシャンであり、ロック、ポップス、インストものなど幅広い音楽経験をもとに、ハイテクニックで、しかも高品質な楽曲を揃えて、鮮烈な印象をもってデビューした。一時活動中止時期はあるが、今でも活動中のバンドであり、1977年からの永い歴史の中ではメンバーチェンジを何度も経てきている。1st~4thオリジナルアルバム

制作時までは不動のメンバーだったが、その後は3作と同一のメンバーで制作しておらず、それに伴ってバンドのカラーが揺れ動いた。

 

オリジナルメンバーは

・Bobby Kimball:ヴォーカル
・Steve Lukather:ギター、ヴォーカル

・David Paich:キーボード、ヴォーカル

・Steve Porcaro:キーボード
・Jeff Porcaro:ドラムス
・David Hungate:ベース

という布陣。もともと3人リードヴォーカルがとれるメンバーがいるが、David Paichは一部のソウル色が強い曲でしか歌わず、Luke(Steve Lukather)は「通る」声質ではないので、バラード中心。したがってメインヴォーカリストはハイトーンのBobbyだった。

 

それが4thアルバム~5thアルバムの間に、BobbyとベーシストのDavid Hungateが脱退することになる。ベースは、ちょうどJeffとSteveのPorcaro兄弟の次兄Mikeがベーシストだったことからバンドに迎えられ、その後永く定着することになる(もともとTOTOの原型となったセッションバンドでは、Mikeがベースを弾いていたこともあるらしいので、デビュー前のオリジナルメンバーと言えるかもしれない)。一方、Bobbyが抜けた後のヴォーカリストはなかなか定着せず、Fergie Frederiksen⇒Joseph Williams⇒Jean-Michel Byron⇒Steve Lukather(単独ヴォーカリスト不在でLukeがメインを務めた)と、1~2作ごとにコロコロと変わっていた(Josephはのちのリユニオンメンバーにもなるので、「合わなかった」わけではないようだが)。

 

そして、バンドのグルーヴの要で、精神的支柱でもあったドラマーのJeffの急死、Porcaro兄弟末弟Steveの正式メンバーからサポートへの立場の変更などを経て、デビュー20年を経たあたりではバンドの形態は当初とは大きく変わってしまっていた。

 

それが11thアルバム“Mindfields”で、オリジナルヴォーカリストのBobbyが復帰し、また後に家族との時間を優先するため一時期ツアーに帯同しなくなるDavid Paichもこの時期はまだ参加しており、当時として望める最も「原型」に近いメンバーで行われた1999年のツアーを収めたのが本作品“Livefields”。所々聞こえるMCにフランス語が交ぜられているので、収録会場は計16公演行われたフランスのどこかと思われる。

 

参加メンバーは

・Bobby Kimball:ヴォーカル
・Steve Lukather:ギター、ヴォーカル

・David Paich:キーボード、ヴォーカル

・Simon Phillips:ドラムス
・Mike Porcaro:ベース

※他にサポートとしてTony Spinner(ギター)、Buddy Hyatt(パーカッション)、John Jessel(キーボード)

 

ヴォーカリストがBobbyであるため、彼が関わらなかった5th~7thアルバムからは選曲されておらず、ほとんどが当時の最新アルバム“Mindfields”と、黄金期たる1st~4thアルバムからの曲で構成されていて、「TOTOらしさ」が強い曲で固められている安心感と、タメとうねりが素晴らしかった初代ドラマーJeffに対して、切れが良くダイナミクスが大きいSimonのプレイの差で初期の「定番曲」がどれだけ変わるか、という楽しみが、同時に満たせる作品となっている。

 

TOTO...というかJeffを代表するリズムパターン、Half-Time Shuffleがフィーチャリングされている名曲「Rosanna」は、やはり一番大きく変わっている。「Rosanna」を一番歌ったであろう“Toto IV”のあとのツアーではすでにベーシストはMikeになっていたので、違いはドラマーだけなのだが(あと今回はSteve Porcaroが参加していないのもあるが)、このJeffが編み出して、現在のドラマーの必修項目?になっている、ゴーストノートを多用してグルーヴを引き出すHalf-Time Shuffleは、Simonのキレが徒になり?、Jeffのうねるような推進力は感じられない。

 

一方、Jeff参加最後の作品となった“Kingdom of Desire”の技巧インスト曲「Jack To The Bone」では、弾ける音色のドラムチューニングも相まって、Simonのダイナミクスが大きくてキレっキレのプレイが光る。Jeffも決して技巧でSimonに劣るわけではないが、Simonのチューニングも含めた音とプレイの相性が、こういったキメとスピード感が重視の技巧曲には合っている。メチャクチャカッコイイ!

 

途中に4曲が、エレキギター⇒アコースティックギター、シンセサイザー⇒アコースティックピアノと変更されて「Acoustic set」と銘打って演られるが、その中では懐かしの「Mama」がいい感じ。元々オリジナルもアコースティックピアノが大きく入っているので、印象が著しく違うわけではないのだが、Lukeのかき鳴らすアコースティックギターと、若干ジャジィなテイストのオブリを入れるDavidのピアノの絡みがよかった。パンっと切れが良いSimonのドラムスと、よく動く饒舌なベースでそれに絡むMikeの対比も良いし。

 

気持ちルーズでヘヴィなJeffのパターンとは異なるが、硬質でメタルな響きのSimonのドラムスも違う魅力があるのが、ハードな「Girl Goodbye」。Simonが使うドラムスは奇しくもcybercatの使うのと同じTAMA

のドラムスだが、大手ドラムメーカーの中では最も早く「胴の中に金具を入れない」固定法

を採ったTAMAならではのチューニングレンジの広い音を聴くことができる。

 

この作品、今はほとんど見られないCD Extraが特典としてついているパッケージ。音声トラックとしては仕様地によって3種類の収録曲ヴァリエーションがあるが、この日本正規盤が最も収録曲が多く、コレクション的価値がある。一部の仕様ではLukeの甘いヴォーカルが聴ける「Won't hold you back」も収録されなかったが、唯一日本盤のみの収録なのが1stアルバムのオープニングナンバー「Child's anthem」。これはTOTOに対してデビュー時から熱狂的な支持を送った日本のファンへのサービスなのかな。

 

CD Extraの映像部分は、当時最新のアルバム“Mindfields”からのMV、「Melanie」と「Cruel」が収められる。ただこれ、CD Extraの容量制約もあって、およそ350×250程度の大きさであり、QVGAより多少大きい程度の「ガラケー品質」くらいの映像で、「鑑賞する」程のものではない←そもそもWindows10でサポート終了しているCD ExtraのQuicktimeファイルを再生するには、少々知識が必要だが、そこまで苦労して観なければならないほどのものでもない。

CD Extra部分のメニュー映像(原寸)
CD Extra部分のメニュー映像(原寸)

 

「」は合成の背景の前で演奏するメンバー
Melanie」は合成の背景の前で演奏するメンバーというMV

 

「Cruel」はライヴ映像。今は亡きMikeの姿も見える
Cruel」はライヴ映像。今は亡きMikeの姿も見える

 

最近でこそいくつかのライヴ作品をリリースするようになったTOTOだが、当初は「ライヴ盤」をほとんどリリースしておらず、貴重だった本作。とくに本作はJeff在籍時の黄金期楽曲が、オリジナルヴォーカリストで歌われたので、ドラマーの差が直接感じられる作品となっている。こうなると逆に、近年(2016年)リリースされたJeff在籍時のライヴ盤“Live At Montreux 1991 ”でのJeffのプレイが気になったりw。

 

最近の楽曲では、プログラミングで代用されることも多いリズム楽器の「ヒトによるプレイの差」を強く感じた作品でした。

ドラマー以外は限りなく「原型」に近いメンツ
ドラマー以外は限りなく「原型」に近いメンツ

 

【収録曲】()内初出スタジオアルバム

<CD>

1. Caught In The Balance (11th “Mindfields”)
2. Tale Of A Man (20th anniversary “Toto XX”)
3. Rosanna (4th “Toto IV”)
4. Luke's Solo
5. Million Miles Away (3rd “Turn Back”)
6. Jack To The Bone (8th “Kingdom of Desire”)
7. Simon's Solo

8. Dave's Going Skiing (9th “Tambu”)

-Acoustic set-

9. Out Of Love (Best “Past to Present 1977–1990”)
10. Mama (2nd “Hydra”)
11. You Are The Flower (1st “Toto”)
12. The Road Goes On (9th “Tambu”)

--------------

13. Better World (11th “Mindfields”)
14. Girl Goodbye (1st “Toto”)
15. Dave's Solo
16. White Sister (2nd “Hydra”)

<Bonus CD Extra>

-Audio-

1. I Will Remember (9th “Tambu”)
2. Hold The Line (1st “Toto”)

3. Won't hold you back (4th “Toto IV”)

4. Child's anthem (1st “Toto”)

-video-

1. Melanie (11th “Mindfields”)

2. Cruel (11th “Mindfields”)

 

「Girl Goodbye」

更新: 2020/08/02
必聴度

名作“Toto IV”のツアー時に近いメンバー、でも決定的に異なる差を愉しみたい

JeffとSimonの差は大きい。ただ、それはそれでお互いの良い面がわかって興味深い。

  • 購入金額

    3,780円

  • 購入日

    2000年頃

  • 購入場所

15人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (4)

  • jive9821さん

    08/06

    「Old Is New」収録曲の一部では、ドラムがVinnie Colaiutaになっているので、さらに別物感が強いですね。Vinnie自身は業界屈指の凄腕かつ売れっ子なのですが、TOTOの音かといわれると違うという感じです。

    TOTOのサウンドは予想以上にドラムに支配されている部分が大きかったんだな、と再認識させられました。
  • 北のラブリエさん

    08/06

    サイモン・フィリップスも好きなんですが、やっぱりこう、染み付いているイメージが。
  • cybercatさん

    08/06

    jive9821さん
    Vinceのプレイはチョー好きなんですが、

    TOTOとなるとちょっとチガウ...という感じですねぇ
    改めてJeffが偉大だったと...
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