レビューメディア「ジグソー」

期待の延長線上にはなかった作品だが、後から聴くとよい曲ばかり。

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。リユニオン。制作側の企画であるにしろ、本人たちの意向であるにしろ、一度解散(活動停止)したグループが、年を経て再起動することがあります。ただその場合、連続的活動をしているとき以上に、方向性は難しいモノです。リリース当初は、活動停止前の作品の延長線上になかったため、面食らったものの、徐々にその意図がわかってきた作品をご紹介します。

 

NANIWA EXPRESS。日本でのフュージョンブームの際、CASIOPEA、THE SQUAREに継ぐほどの人気を誇ったバンド。しかし、CASIOPEAとTHE SQUAREがメンバーチェンジを経ながらもフュージョンブーム後も長く活動し続けたのに対して、NANIWA EXPRESSは1986年に活動を停止する。

 

ジャズ~フュージョン界の大御所、日野皓正をゲストに迎えて5thアルバム

をリリースしてから1年も経っておらず、「もったいない」という感じだったが、ジャズ側に傾倒したいメンバー、ファンキィでビートが効いた方に行きたいメンツと各メンバーの嗜好と指向の違いが際立ってきたときで、ある意味仕方がなかったのか、という気もする。

 

それから各メンバーはソロアルバムを出したり、ファンクバンドを組んだり、スタジオワークをこなしたりしていたが、16年後の2002年にデビュー時のメンバーで再始動、翌2003年に6thアルバムをリリースした。

 

それが本作、“life of music”。

 

18年ぶりのオリジナルアルバム、パッと聴きの風合いはかなり変わっていたが、ある意味変わっていなかった。

 

カズボン(岩見和彦)の、リズム的トリックがあるファンキィなカッティングから始まるオープニングチューン「YOU GOT THE LOVE」は、なんと洋楽カバーのヴォーカル曲。Rufusの大ヒット曲で、オリジナルではChaka Khanがとったヴォーカルは、ゲストのmimi(宮本典子)。mimiは早くからアメリカに渡り、Graham Central Stationの全米ツアーに同行するなどの活動をした、筋金入りのファンキィシンガー。さらにKG-Kによるスクラッチがオーバーダビングされ、フュージョンというとテクニックを前面に出す形の曲が多い中、全く違うグルーヴ。とても「フュージョングループ」の復帰第一作のオープニングチューンとは思えない曲。でも、この懐の深さがNANIWAか。

 

ONE DAMN GROOVE」は、B.Bandjによるラップががっつり入った2ビート系のダンスチューン。リーダーの清水興曰く、「とにかくLIVEで2STEPをやりたかった」とのこと(ライナーノートより)。リキヤ(東原力哉)の叩き出すビートがグングン前に進ませるが、中村建治のCOOLなオルガンと泣きの入った青柳誠のサックスソロが素晴らしい。これはダンスビートは強調されているものの、比較的従来路線。

 

MY LOVERSOUL」は21世紀型ブルースフュージョン。Aメロはブルースチックだが、バックの16ビートがCOOL、Bメロに入るとフュージョン。カズボン(ギタリスト)も「つい声が出た」というスキャット入りソロが古くささを感じさせない。様式としては伝統的なのだけれど、リズムの暴れ方が尋常でないというかwドラムセットに組み込んだテインバレスを使ったリキヤのオンビートソロが心地よい。

 

他にも、DRUM'N'BASS系の「THE GROUND LEVEL」、サルサ調の「CERVEZA,POR FAVOR」、ジャジィでドラムスはブラシプレイの「EPILOGUE」といろんな曲が詰め込まれていて、18年の進化が見える。

 

ただ前活動期のラストアルバム“Silent Savanna”、あのジャパニーズフュージョン路線の「次」を期待した自分にとっては、アレ?と感じたのは事実。

 

わりにキャッチーで、王道を行っていた5thアルバム“Silent Savanna”と比べて、本作はよく言えばかなりバラエティ豊か、悪く言えば統制取れていない。ライナーノートの本人たちのコメントから、それぞれ好きなことやった...ということみたい。

 

この感じどこかで...と思い返してみたら、1stからの路線を突き進んでロック調のフュージョン路線だった3rdアルバム“WIND UP”

の「次」として、静かめの曲が一気に増えて、ジャパニーズフュージョン本流ではない、ジャズやファンクが表に出ていた4thアルバム“Modern Beat”

を聴いた時と同じ。各メンバーの指向性を収束させず、いろんなものを詰め込んだそのアルバムを聴いたときに感じた落差に、さらに年月の経過による音の変化を掛けあわせたような風情。

 

前期最終作品の5thアルバムは、「フュージョン路線」で作品としてはまとまってはいたが、彼らのやりたいことすべてではなかったのかも。そういう意味では、いろいろな曲調のものがあって、混沌としていた4thの方が彼らすべてを表していたのかと。

 

その延長線として聴くと理解が進む、「再始動」の作品です。

白黒の写真の裏のライナーノーツには、各曲に対するメンバーのコメントが。
白黒の写真の裏のライナーノートには、各曲に対するメンバーのコメントが。

 

【収録曲】

1. YOU GOT THE LOVE feat.mimi
2. SOLDIER PLEASURE
3. ONE DAMN GROOVE feat.B.Bandj
4. MY LOVERSOUL
5. DAYDREAMING feat.mimi
6. THE GROUND LEVEL
7. JAZZALKA
8. CERVEZA,POR FAVOR
9. AURORA
10. EPILOGUE
11. DOKOZO
12. FRIENDS

 

「MY LOVERSOUL」

更新: 2020/05/18
必聴度

アルバムを「作品」としてみると(聴くと)絞れていない感じ

彼らのそれまでの歴史を知りつつ聴くと、外で経験したことをホームでやる、という喜びにあふれているが。

  • 購入金額

    2,940円

  • 購入日

    2003年頃

  • 購入場所

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