レビューメディア「ジグソー」

あのころの「アイドル」は「アイドルしてた」ナー...

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。最近は、「音楽を入手する」方法は、曲単位のダウンロードやリコメンドつなぎのサブスクで出逢いが優勢になり、アルバムというまとまった形での評価はされづらくなってきています。しかし前世紀、特に80年代に関してはランダムアクセスができるCDでさえ普及途中で、多くは早送りに時間が掛かるカセットテープや、頻繁な曲飛ばしや繰り返しが難しいアナログレコードが入手元でした。そのため「アルバム」は楽曲単体の良さだけでなく、並び順を工夫したり、コンセプトを定めて制作したりと、全体としてひとつの作品となるように考えられていました。そんな時代のアイドル系コンセプトアルバムをご紹介します。

 

荻野目洋子。1980年代のアイドル。1980年代というとアイドル最盛期で、松田聖子、中森明菜の両巨頭に加えて、小泉今日子、原田知世、斉藤由貴のような現在でも活動を続ける息の長いアイドルがいたのが特徴だが、オギノメちゃんこと荻野目洋子も今でも時々「懐かしのヒット曲特集」とか「日本で流行った洋楽特集」などで見かける息の長いシンガーとなっている。

 

その彼女の最盛期と言えるのが、“NON-STOPPER”

というベストアルバムを出したあたりの1980年代中~終盤。上記のベストアルバムには、彼女の最大のヒットである「ダンシング・ヒーロー(Eat You Up)」が収められていたので大ヒットしたわけだが、他にもNOBADYが提供した「フラミンゴ in パラダイス」や「Dance Beatは夜明けまで」、小室哲哉の筆になる「NONSTOP DANCER」、売野雅勇作詞の「六本木純情派」など、これでもかとヒット曲が詰め込まれていた。ただ、(ベストアルバムなのである意味当然だが)アルバム通しての統一感は全くなく、アルバムを「一つの作品」と見た場合に、とっ散らかった感じがしたのも事実。

 

その点を改善しようと思ったのか、続くオリジナルアルバム“246コネクション”は制作陣を絞ってきた。

 

作詞は、全曲売野雅勇。曲は、発売済みの直近のシングル「湾岸太陽族(実際にはテイク違いの「Version II」を収録)」の山崎稔以外は、ヒットメイカー筒美京平が作曲した。その素材をアレンジするのも、原則として鷺巣詩郎、武部聡志、新川博の名アレンジャー3名で(「湾岸太陽族」だけ西平彰)、かなり統一感が高く、アルバムとしてまとまっていた。

 

個別の曲ごとのクレジットはないが、アルバムとしてはプレイヤーもドラムスがJohn Robinsonだったり、ベースがJohn Pierceと美久月千晴と東西の名手を押さえていたりと豪華(リズム楽器は打ち込みも多いが)。さらにキーボードが西平以外の3人のアレンジャーに加えて、ChicagoやKenny Logginsへのサポートで西海岸にこの人あり、と言われる名手Tom Keane、ギターは当時一日中彼のプレイを耳にせずに生活するのはムリとまで言われた売れっ子スタジオミュージシャンMichael Landauに、凄テクフュージョンバンドPARACHUTEの双頭ギタリスト故松原正樹に今剛といった凄腕たちとゴージャス。

 

一番ノッといた頃のオギノメちゃんの歌声が、ある程度色合いが揃った「ビート強めのJ-POP」に乗って届く。

 

出だしの「246プラネット・ガールズ」は、リズムは打ち込みだが、当時流行った洋楽っぽい女声コーラス(コーラスグループEVE)がついていて、ゴーシャスかつスピーディ。オギノメちゃんも気持ちよさそうに歌っている。この曲はアウトロに聴こえるギターソロが素晴らしい。フレーズ的には松原正樹のプレイかな...

 

悲しきヘアピン・サーカス」は、激しい中間部のギターソロにも耳を奪われるが、実はヘヴィでロックな曲をずっしりと支えているのはリズムセクション。この曲は一聴して生、というのがわかるのだが、ゲートで切ったヘヴィな音色はJohn Robinsonで、ベースは多分John Pierceなんだろうなー。何にせよリズムがヘヴィで、オギノメちゃんもドスの効いた声で歌う。

 

アルバム中1曲だけ制作陣が違う「湾岸太陽族」も、「Version II」となって統一感が出ている。シンセブラスだった元曲(シングル)から、Jerry Hey率いる生ブラス隊が入ってとてもゴージャス。元曲ではライトハンドやアーミングを使ったハードなギターソロだった間奏が、近年Doobiesにも参加しているMarc Russoの、泣きかつスピード感あるサックスソロになっていてかなり印象が違う。オギノメちゃん、この位の速度の曲で、英語混じりの歌詞だと、ふわっと立ち上がる長音の伸びと、ヴィブラートの付け方が最強だな。

 

全体としては、売野雅勇+筒美京平の王道アイドルポップス楽曲なのだが、ちょっとリズムが強調されていて(三連系シャッフルなどノせるのが難しい曲もあるのだが)、リズム感が良いオギノメちゃんが上手に歌いこなしていて、とても「アイドルして」いる。

 

この頃のアイドルとしては、セカンドグループ程度の人気のオギノメちゃんだったが、それでもこのクオリティ。

歌詞カードには様々な衣装のオギノメちゃんが。
歌詞カードには様々な衣装のオギノメちゃんが。

 

あのころのアイドルはキラキラ輝いていたなー...と懐かしく思い返した作品です。

 

【収録曲】

1. 246プラネット・ガールズ
2. 北青山3丁目4番地
3. 続・六本木純情派
4. キラー通りは毎日がパーティ-
5. バビロン ア・ゴー・ゴー
6. さよならの果実たち (Version II)
7. 悲しきヘアピン・サーカス
8. 軽井沢コネクション
9. 少年の最後の夏
10. 湾岸太陽族 (Version II)
11. 避暑地の出来事

 

「湾岸太陽族」-Version IIではない-

更新: 2020/05/14
必聴度

アルバム通した統一感があってよい

現在のダウンロード販売中心の「切り売り」ではなく、CDにしろLPレコードにしろカセットテープ(!)にしろ「アルバム」として売られた時代。通しだとバリエーションがありながらも風合いが似ていて、それでいていろいろな声の表情が見える絶妙な統一感。

  • 購入金額

    3,200円

  • 購入日

    1987年頃

  • 購入場所

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