所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。アイドル歌手。最近は以前ほど「アイドル」らしいアイドルいなくなりましたが、素材をどうプロデュースするかが問われる芸能分野です。音楽方面だけでもどういう曲調の曲を歌わせるか、どんな衣装で歌わせるか...本人の声質や発声で合う合わないもありますが、それよりもイメージが優先され、それは例えば同じ十代のシンガーソングライター等とは違う所です。群雄割拠時代の1980年代に独自のポジションを得ていたアイドルの、そこにたどり着くまでの変遷が見えるベストアルバムをご紹介します。
オギノメちゃんこと荻野目洋子。「花の84年組」と言われたアイドル豊作の1980年代中盤にデビューし、その後独自のポジションを築いて10年ほど活動したあとは、表に出る機会は減ってきているが、アルバムリリースは散発的に今でも続いており、2017年3月現在の最新盤は2014年発売の“ディア・ポップシンガー”。
1980年代前半はアイドル豊作の年で「花の82年組」には、中森明菜、小泉今日子、松本伊代や早見優といったそうそうたるメンツがいて、その2年後の彼女たち「84年組」は岡田有希子、本田美奈子、堀江しのぶや沢口靖子といった顔ぶれ。82年組に比べるとやや小粒だが、82年組とは違う新規性を狙ったためか、個性的なアイドルが多い。
オギノメちゃんはそんなアイドル供給過剰状態の時代に、滑舌良くキレの良い発声で、ビートの効いた洋楽っぽい曲を上手く歌って独自の勢力を築いた。
そんな彼女の初ベスト“POP GROOVER”。リリースは1987年なので最盛期。デビュー当時のやや方向性が定まっていない感じで出す曲出す曲ビミョーに方向性が違ったあたりから、「ダンシング・ヒーロー(Eat You Up)」のヒットでビート効いた系にフォーカスを絞って以降、当時の流行のユーロービート系へ傾倒を深めるまでの初期ヒット曲ほぼ完全網羅の構成。ただ面白いのは初期の曲はリミックスされていて音造りが派手になっており、ユーロビート系楽曲に対してガン浮きしないよう配慮されている。
「恋してカリビアン」は5枚目のシングル。元々はポップでキッャチーな曲だが、このミックスではドラムス、特にスネアの音が大幅に変えられビートが効いた感じの曲になっている。ただ、元曲の「アイドル然」としたメロディーラインまでは覆い隠せておらず、まだ「正統派」の範疇。洋子の歌もまだ発展途上で、キモチ危なめの部分もある。
最大ヒットの「ダンシング・ヒーロー(Eat You Up)」は「Special English Version」。前作6枚目の「心のままに ~i'm just a lady~」がしっとり系の楽曲だったので、振れ幅がスゴイ。ただ時代(ユーロビート全盛)とキャラクター(ショートカットで快活な感じ)、歌声(滑舌良くビートに音を載せるのが上手い)が見事にマッチし、彼女の楽曲はこのあと当面、ビート効いた系ユーロビート風味の曲が多くなる。
同時代にヒットした他者(Angie Gold)のカバー曲(原題「Eat You Up」)だった「ダンシング・ヒーロー(Eat You Up)」に比べると、「荻野目洋子の曲」という印象が一番強いのが「六本木純情派」。日本レコード大賞金賞や日本有線大賞有線音楽賞など数々の賞を受賞し、当時街にあふれた。そこはかとなく漂う「歌謡曲感」で上の世代にも支持を受け、彼女の人気を決定づけた曲。
このあと彼女はユーロビートの衰退とともにもう少しブラコン寄りに変遷するし、結婚⇒出産を経た後のママドルの現在はもっとスタンダードナンバーや童謡などに表現の場を見つけているが、いわゆる「アイドル」として活動した時代だけでも初期の模索と方針定まってからの怒濤の攻勢の落差が見える面白いベスト。
こうしてみるとアイドルは才能を輝かせてくれる制作陣との出逢いが重要なんだな、と思ったり。
このアルバムは単なるシングル曲寄せ集めのものではなく、次のステップにつながる「D2D」のようなレアな方向性の楽曲も収められ、ベストオブベストの呼び声も高い彼女最盛期を綴った作品です。
【収録曲】
1. 未来航海-Sailing- [1st]
2. さよならから始まる物語 [2nd]
3. 恋してカリビアン [5th]
4. 心のままに ~i'm just a lady~ [6th]
5. ダンシング・ヒーロー(Eat You Up) [Special English Version][7th*]
6. フラミンゴ in パラダイス [8th]
7. 夏のステージ・ライト
8. Dance Beatは夜明けまで [9th]
9. 六本木純情派 [10th]
10. 湾岸太陽族 [11th]
11. さよならの果実たち [12th]
12. 軽井沢コネクション
13. 北風のキャロル [13th]
14. D2D
15. NONSTOP DANCER
*7thシングルの「ダンシング・ヒーロー(Eat You Up)」はシングル盤は日本語詞
「六本木純情派」
「アイドル」が「アイドル」だった最後の時代の名曲集
いつでも会えるアイドルや、ネットを使った双方向交流も否定はしないが、idolとはもともとそういう意味ではないので...
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購入金額
3,200円
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購入日
1987年頃
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購入場所
jive9821さん
2017/03/13
歌の方は王道アイドルからは少し離れた感じで、個性があってよかったと思うのですが。
cybercatさん
2017/03/13
実はこれを購入した時期は彼女の出生地の隣町に住んでいたのですが、最盛期もまったくタイアップだとか、「地元出身アイドル!」とかいう盛り上がりはなかったですね。幼少時にすぐ引っ越したそうなので、彼女の方にも「出生届に記載された街」以上の思い入れがなかったのかもしれませんけれど。
jive9821さん
2017/03/13
地元からの中継があったのですが、本人もむしろ戸惑っていたようでした…。
cybercatさん
2017/03/13
幼少時~小学生時代は別の県のようですから。
親の転勤が多く、転校・転居が多かった人に話を聴くと、一時期的に居住した街に対して「地元」という感覚は希薄で、むしろ祖父母などが住む地の方が地区と結びついた思い出などは多いということなようなので....