レビューメディア「ジグソー」

カッティングが上手いギタリストって、本当に上手いと思うンだよね

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。「楽器が上手い」、そう言われるプレイヤーは数多くいますが、何を持って「上手い」と言われるのでしょう。ギターのようにリードもサイドもとる楽器に関しては、一番「目立つ」部分であるギターソロの、速弾きやライトハンド奏法、強烈なアームダウンなどの、誰が観てもわかりやすい部分に注目が集まりがちです。しかしリズム感とセンスが問われるカッティング(コードをリズミカルに奏でる奏法)が上手いプレイを聴くと、曲を通してノれて、とてもアガります。そんなバッキングのギタープレイが印象的な作品をご紹介します。

 

森広隆。シンガーソングライター。ファンクの濃いところにいて、スガシカオよりやや濃く、フライングキッズよりやや古めのあたりのテイスト。結構ポップな一面もあるのだが、特に最初の頃がかなり濃い。

 

「ゼロ時間」というのが初期の名曲で、インディーズ時代のデビューシングル

であり、メジャーになってからも新録音で再リリースもしているのだが、彼のメジャーデビューシングルは実は本作、“ただ時が経っただけで”。

 

録音のクリアさなどはまごうことなき21世紀モノなんだけれど、ラフな感じのグルーヴの楽曲にしろ、粘るヴォーカルにしろ、ファンキィで、ちょっと懐かしい泥臭さ(イイ意味で)。そしてこの曲(とカップリング曲の)ギタープレイが、良い。いわゆる「わかりやすいテクニック指向」のギタープレイではないのだが、バッキングのギターのカッティングの素晴らしいキレと、随所に入るスライドなどで感じる粘りがなんとも良い味になっている。

 

表題曲の「ただ時が経っただけで」は、前述のインディーズ時代の“ゼロ時間”に収録されていたモノと思われる(リミックスもされていない感じ)。キレの良さと粘りが両立した森クンのカッティングギターの音と、スキマスイッチや秦基博のサポートで名を馳せる紺野光広の抜けきらないベースの音色、ガシャッとしたラウドでノイジィな関口源八のドラムの音色が、すべて「近く」、なんともエネルギッシュな、アーシィなファンク。いわゆる「流行り」の音、音楽ではないが、それらには迎合しない強烈な個性がある。

 

エレンディラ」は、メジャーになっての録音というのがはっきりわかる、スピード感があって洗練されていて、(インディーズ盤)「ゼロ時間」を昇華させたような、ファンクポップ。森クンのキレの良いカッティングで始まるのだが、鉄壁のリズム隊(“日本一忙しいドラマー”沼澤尚+ステディなベーシスト松原秀樹)とオルガン弾かせると天下一品のエマーソン北村という凄腕メンバーが支えていて、すごくアグレッシヴかつエネルギッシュ!!

 

イツモドオリ」は、一転してスロー16ビートで夜のたたずまい、アシッドな薫り。森クンもファルセット気味に歌い、まさに和製jamiroquaiと言う感じ(jamiroは森の好きなアーティストのひとつでもある)。レコーディングメンバーは「エレンディラ」と基本同じなのだが、この曲では森クンはギターを弾かず、口笛太郎Duoでギターを担当する大里和生が入る。もの悲しくも小粋なフリューゲルホルンのソロは平田直樹。曲調的には、シングル「A面」とはならない曲なのだが、ものすごく質が高い。後のアルバムには収録されていない曲なので、貴重。

 

このデビュー作、「ただ時が経っただけで」の粘っこいカッティングと「エレンディラ」のキレッキレのカッティングの2種が楽しめる。このプレイが、玄人筋にはかなりアピールしたみたい。ギタリストとして他アーティストのサポートを務めることもあるようなので、聴いてるひとは聴いてる??(そう言えばスガシカオのオープニングアクトを務めたこともあったな)

 

キレと粘りの、風合いが違うカッティングが聴くことが出来るこの盤、時々引っ張り出して聴きたくなる作品となっています。

この爽やか目の装丁はどちらかと言えば「イツモドオリ」のイメージだけれど..
このCOOL目の装丁はどちらかと言えば「イツモドオリ」のイメージだけれど..

 

【収録曲】

1. ただ時が経っただけで
2. エレンディラ
3. イツモドオリ

 

「ただ時が経っただけで」

更新: 2020/05/11
必聴度

「イツモドオリ」を聴くためだけにでも購入する価値あり

粗くエネルギッシュな「ただ時が経っただけで」、スピード感溢れる「エレンディラ」、小粋な「イツモドオリ」。さすがメジャー1stシングル、まんべんなくアピールし、必聴度は高い。ただ、キャッチーでハードな曲調で、「一般受けしやすそうな」「エレンディラ」を表題曲に選ばなかったのはコダワリなのかな...

 

ま、自分としては、これにしか収録されていない「イツモドオリ」が一番好みなのだけれど...

⇒ライヴテイクの一部が聴けます Twitter @morihirotaka 2019/02/11

  • 購入金額

    1,260円

  • 購入日

    2001年頃

  • 購入場所

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