森広隆。ギタリストであり、ボーカリスト。前回
で紹介したように、このファーストアルバムに含まれるデビューシングル「ゼロ時間」が深夜の天気予報番組でかかっていたのを聴いて気に入った(厳密に言うとこのアルバムに含まれるのはメジャー版セカンドシングルの「ゼロ地点」であり、この前にインディーズの「ゼロ地点」があるが)。彼のHPによると「好きな音楽は、Char, jamiroquai, James Brown, Stevie Wonder, 山下達郎など」というから方向性はバッチリ合致。
このアルバム、とにかく評価が高い。ファンキィでポップ、ブルージィでソウルフル。彼の声は変幻自在で伸びるハイトーン、シャウトしてもえげつなくならない。少し枯れ気味で、でもちょっと声質が女性的な感じもする不思議な声。特にこのアルバムではいくつかの曲でボーカルエフェクトをかけており、そのためちょっとクセがある仕上がりになっている。ギターも上手く、なんせカッティングがイイ。キレと粘りが両立しているまさにファンキィギター。
メジャーデビューシングルのタイトルチューン「ただ時が経っただけで」で幕を開けるが、なんとトリオ。森が粘るギターカッティングとちょい枯れのシャウトで歌う。ベースラインも良く歌っている。一カ所だけ5拍子が入るところが感情のほとばしりという感じでイイ。ラストのスキャットに入る前のロングトーン、ファルセットのスキャット、結構ドファンクだ。次の「黒い実」は3rdシングルのカップリングだが、トリオにRhodesが加わっただけの構成。ここでドラムを叩くのはこのアルバムでのシングル系ではないほとんどの曲で演奏する波多江健。CHEMISTRYのLIVEサポートなどで知られる彼は結構叩きまくり。次の「Pebama」で叩くKENSOで活躍した村石雅行が地味に感じるほど。「エレンディラ」はTHEATRE BROOKで魔人、佐藤泰司をサポートするキーボーディストのエマーソン北村とドラマーの沼澤尚が名手、ベースの松原秀樹とバックを組むが、森の切れすぎるギターカッティングとスピード感あるボーカルがそれに負けていない。COOLな北村のオルガンのオブリも沼澤の叩きまくりのバックも、雄弁な松原のベースラインも決しておとなしいわけではないのだが。
このあと彼は9ヶ月後にミニアルバムを、その1年後にシングルを遺し、メジャーシーンから去る。その後はよりソリッドによりアツくなって還ってきてくれたのでイイんだけど。でもこの若さとアツさと時代背景とが渾然一体となったアルバムはもう二度と作れないだろう。彼も成長したし、時代も流れた。若さとエネルギーとのカオス。そこにこのアルバムのすばらしさがある。
【収録曲】
1. ただ時が経っただけで
2. 黒い実
3. Pebama
4. ショートケーキ
5. 共生
6. エレンディラ
7. ゼロ地点
8. ISN'T SHE LOVELY
9. 退屈病
10. 並立概念
11. BOMBER
12. Trash
13. 不思議な模様
森広隆オフィシャルウェブサイト
「黒い実」
-
購入金額
3,059円
-
購入日
2002年頃
-
購入場所
ZIGSOWにログインするとコメントやこのアイテムを持っているユーザー全員に質問できます。