森広隆。現在インディーズで活動しているが、非常に玄人受けする歌を創り、歌う。メジャーで活動していた時と変わらず、その当時のミュージシャンがライヴに協力するのは彼のその世界に魅せられているからか。
そんな彼のメジャー時代3枚目のシングル。メジャー時代唯一のフルアルバム、“並立概念”
の直前のリリース。メジャーデビューシングルの“ただ時が経っただけで”も、ノリノリという感じではない曲だったが、3枚目のコレ(=表題曲「Pebama」)は完全スロー。バラードというには歌われているのがもっと深い愛だったり。♪ハニー/あの木の隣/二人/並んで座ろう/冷たい風に吹かれないように/あと少し傍においで/あの光を見届けよう/また今日と云う日が終わる/眩いその美しさは/刹那の輝き/今/全て赤く染まる/儚きもの/その生命が/やがて消える時も/いつも僕が傍に居るよ♪暮れゆく海辺、夕日が落ちていくのを二人並んでみている、そんな情景が見えるようだ。この曲はMISIAの音楽的ブレーン、重実徹がアレンジした美しいストリングスと彼の弾くピアノ、村石雅行のドラマチックなドラムスと、高水健司のウッベが下を支え、後にKōkua
に参加するギタリスト小倉博和が曲に彩りを添える。これは沁みる。
「黒い実」は、ちょっと他に演れる人がいないんじゃないか、というジャンル不定の曲。バンドのメンツはキーボード河内肇、ベース紺野光広、ドラムス波多江健と2ndシングル(メジャー版の)“ゼロ地点”と同じだが、表題曲と比べると録り方もよりライヴでいい意味でラフ。ドラムのオンビートソロもある比較的激し目の曲なのだが、どことなく暗く、ソリッド。
最後の「DON'T LET ME BE LONELY TONIGHT」はこのシングルにしか収録されていない、カバー曲。James Taylorの名曲で邦題は「寂しい夜」。Claptonの泣けるカバーや、Chuck Loebのインストアレンジなど多くの追従者を出したこの曲を、森は比較的オリジナルに忠実に歌っている。時々混ざるファルセットが「らしい」。大里和生のギターのオブリが切ないなぁ...
ノリの良いことをウリにした曲はなく、ちょっとシングルとしてはインパクトは大きくないが、どの曲も彼の良さを示している。とてもエモーショナルでリリカル。ここまで詩的な世界が広げられるアーティストは多くない。
ファンキィでギターのカッティングがキレっキレの森も、こういった叙情的な「和」を感じる森も、同じ森。とても心に入ってくる、癒やしの歌、です。
【収録曲】
1. Pebama
2. 黒い実
3. DON'T LET ME BE LONELY TONIGHT
「Pebama」
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購入金額
1,260円
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購入日
2002年頃
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購入場所
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