今まで使ったケーブルはいずれも期待通りの働きをしてくれていて、Brise Audioと共にイヤフォンリケーブルに関して私が信頼を置いているメーカーであるWAGNUS.。そのローエンドシリーズとなる「Lily」については、これまでスタンダードモデルのGinger Lilyと、限定生産のChocolat Lilyを使ってきました。
Ginger Lilyは64AUDIO U3と、Chocolat LilyはJH Audio Michelleと組み合わせて、いずれも現在主力級で使っています。
Ginger LilyはLilyシリーズでもスタンダードとなるモデルであり、バランス重視の音作りとなっていて強調感がなく少し柔らかめで音場も気持ちよく広がるタイプです。一方のChocolat Lilyも極端な強調感は無いのですが、中域を中心に少し独特の響きが乗り、ライブ感が増す傾向があります。どちらもリスニング向けとして安心して使える実力を持っています。
このシリーズでは少しだけ高価なCrystal Lilyも試聴させていただいて、かなり気に入ったのですが、ケーブルは十分に頭数が揃っているため急いで購入する必要も無い状況でした。しかし、シリーズ中でも少し異端の音作りであるEaster Lilyの試聴機処分品を見つけてしまうと、ついつい手が出てしまうわけで…。
試聴機処分ではあるのですが、パッケージ等は残っておらず中古品と同様の形で届きました。
ちなみに、このケーブルの製品名である「Easter Lily」は「テッポウユリ」を意味しているのだそうです。ついでにいえば「Ginger Lily」は「ハナシュクシャ」、「Chocolat Lily」(英語の正式な綴りは「Chocolate Lily」)は「クロユリ」をそれぞれ表しています。
本格的ドンシャリ
それでは、今回は傾向のつかみやすさを取ってJH Audio Michelleで試聴してみましょう。2.5mm4極バランス仕様であるため、DAPはAstell&Kern KANNを組み合わせます。
一聴して、今まで使ってきたGinger LilyやChocolat Lilyとは全く傾向が異なることが判ります。
メーカーの製品紹介から、この製品の特徴をわかりやすく紹介した文を引用しましょう。
「Easter Lily」は高域と低域を前面に出したシリーズ最新作です。中域は分離感の良いすっきりとした仕上がりのため、埋もれた印象を与えない絶妙さもポイントになっています。泥臭さのない「洗練されたドンシャリサウンド」としてご堪能頂けます。
(以上 https://www.wagnus.jp/blank-1/easter-lily より引用)
この「洗練されたドンシャリサウンド」という一言は、この製品の特徴を極めて端的に表しています。ドンシャリサウンドというとありがちなのは、沈み込むような深い低音ではなくベースの上の方の音が持ち上がって腰高で不快な低音と、1~4kHz辺りの耳につきやすい音を強調して、とにかく派手に鳴るというものです。はっきり言えば、格安のオーディオ機器でドンシャリというと多くはこのパターンです。
しかし、Easter Lilyのドンシャリはベース帯域でも低めの所が持ち上がり、高域も一般的なドンシャリよりは上の辺りが持ち上がっています。そのため、ドンシャリで想像するような安っぽさは全くありません。
Ginger Lilyと比較すると音場は狭めで、中域の音は硬質です。そのため、ロック系の音作りでは豪快さや鮮烈さが増す一方、アコースティック系の音では直接音が強めであまり情緒が出ないという、ある意味わかりやすい傾向の音となります。
一例を出すと、「Chicago XXXVI "NOW" / Chicago」などは「おっ」と思うような鮮烈さがある一方で、「Ten Summoner's Tales / Sting」などはさっぱりしすぎて味気なさが残るというものです。組み合わせる相手がMichelleであれば、この持ち味を活かしてロックを聴くのに向いているといえるでしょう。
スタンダードモデルのGinger Lilyは幅広いジャンルをそつなくこなす無難さがありますが、Easter Lilyは得意とする範囲が狭めでヴィンテージケーブルに近い使いこなしが求められます。ただ、先ほどからずっと聴いている「Chicago XXXVI "NOW"」の音は得がたい魅力であり、これを聴くために買ったと思っても後悔しない出来といえます。
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購入金額
8,980円
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購入日
2020年04月05日
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購入場所
フジヤエービック
はなちゃん3さん
2020/05/12
jive9821さん
2020/05/13
コメント有難うございます。
ご自身でも色々試していただくようなきっかけとなれば幸いです。