レビューメディア「ジグソー」

ギタリストばかり3人がフロントを取るインストモノのライヴは...言わなくても解るよね?w

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。自分も経験がありますが、パーマネントバンドは、各メンバーの力量や音楽的指向、クセなどを識っていますので、楽曲を高いレベルで再現できます。それに対してセッションバンドや企画バンドは互いを知り尽くしてはいないため、手探りな面もあり、緻密な完成度はパーマネントバンドに譲るものの、意外なハーモニーや火事場の馬鹿力的スーパープレイが生まれたりします。そんな一夜限りのバンドにおけるライヴパフォーマンスを収めた作品をご紹介します。

 

OTTOTTRIO=オットットリオ。「音楽の杜」シリーズレビューの最初期、2011年3月にもご紹介したバンド。

...と言ってもパーマネントバンドではなく、空いてしまったハコを埋めるために急遽組まれた即製バンドで、ギタリストの是方博邦が発起人。

 

...それなら何故に声をかけたのが、ギタリストばかりなんだい?w

 

当時のフュージョン衰退期にあってもまだ高い人気を保っていたCASIOPEAとT-SQUARE。その看板ギタリスト二人に声がかかった。野呂一生と安藤正容(当時の表記は「まさひろ」)。この日本におけるフュージョンスタープレイヤーは、後に互いのバントを率いて共演したりしているが、これがステージ上での初共演じゃ??

 

他のメンツも、キーボードがマライア(MARIAH)の笹路正徳と矩形波倶楽部の(最近はゴスペルピアニストとして有名な)吉弘千鶴子。リズム隊が、ベースは名手美久月千春、ドラムスは当時T-SQUAREの則竹裕之。

 

彼らテクニック十分なフュージョンスターたちが、「後腐れなし?」のライヴで爆発してる。

 

CONGA」。Miami Sound Machineの1985年の大ヒット曲。キューバ系アーティストであるGloria Estefanがヴォーカルを務めたMiami Sound Machineは、ラテンダンスミュージックで一世を風靡したが、このアレンジは元曲に結構忠実。ただ、曲のBPMがオリジナルより全然速いのと、元曲でも切れの良い早口のヴォーカルを、フレーズほとんど変えずにギターでなぞっているので、早弾き大会の様相。野呂、安藤、是方のフルユニゾンのテーマと、ラテンなピアノ(どちらのプレイかクレジットはないが、多分笹路かな)が盛り上げる曲だが、素晴らしいのはキレっキレのフットワークでダンサブルなフィールを曲に加えている則竹と、ミュートと長音の対比で腰に来るグルーヴを創っている美久月のリズム隊!ラスソロ前の圧巻の全楽器フルユニゾンは現場で観たかった~

 

野呂らしさが爆発しているのが、「SPECIAL HAPPENING」。当時のCASIOPEAカラーが強く、キレの良いリズムとブラスのオブリが気持ちよいシャープな曲。ただCASIOPEAではあり得ないアレンジなのが、ギターが絡まない長~いキーボードソロが挟まれていること。いつもならギターとキーボードの掛け合いになるところが、この日の二人のキーボーディスト(笹路と吉弘)のバトルになっているので新鮮。また、通常であれば野呂一人の演奏に、ギターシンセやエフェクターを駆使したダブリング奏法で厚みを付けるのだが、3人スーパーテクニシャンのギタリストが揃っているので、ダブリングならぬトリプリングがユニゾンで表現できていることか。前半のギターソロは三人三様で面白い。

 

今からは半世紀以上前、当時でも20年以上前のWilson Pickettのオールディーズ、「ダンス天国」こと「Land of a Thousand Dances」。聴けば「あの曲ね」と誰もが識っている曲で、テクニック的には難しいことはないので、各楽器のソロ回し合戦に。♪ジャーン♪と一度終わりかけてテーマを再奏し、短いドラムソロを挟んで、ふたたび♪ジャーン♪というアレンジは定番だが、ライヴラストには盛り上がるよねーというもの。

 

本来一回限りのスペシャル企画だったはずのモノが、その10年後にスタジオ録音盤

をリリースしたりもしたので、意外に本人達も面白かったのかも。

 

特にこのライヴが行われた1988年は、CASIOPEA黄金期の最後のオリジナルアルバム“EUPHONY”

が発売された年。このリリースのあとCASIOPEAは分裂する。一方T-SQUAREの方は、世の中のフュージョンブームは過ぎかけていたのだが、F1人気で火がついた“TRUTH”リリース直後で、今までとは違うファン層に囲まれ...と変化が大きかった時期。その時に中立的な立場の是方から持ち込まれた「一夜限りのお祭りライヴ」企画。結構たがが外れたメンバーのプレイが聴けて、30年後の今でも十分楽しめるライヴ作品。

 

現在は最盛期に比べると個々のグループの活動量も下がって手空きの時間ができたのか、いろいろなところで共演している彼ら。しかし本作は、お互い若く主張が激しい時期に、一夜限りの祭り、という限定がついたからできた奇跡。そのぶつかり合う若くとがったパッションがたまらなく愛おしい作品です。

ギタリストが3人いる...というところですでにおかしい?
ギタリストが3人いる...というところですでに変?あ、Jeff Baxter時代のDoobiesもか。

 

【収録曲】

1. CONGA (Miami Sound Machine)
2. EYES OF THE DRAGON (Masahiro Andoh)
3. SPECIAL HAPPENING (Isei Noro)
4. SAVING ALL MY LOVE FOR YOU (Whitney Houston)
5. TRIPLE FIGHTING (Hirokuni Korekata)
6. ダンス天国(Land of a Thousand Dances / Wilson Pickett)

 

「上を向いて歩こう(“HOT LIVE”に収録)」~「Conga」(エアチェックらしく、音は悪いです)

更新: 2020/04/20
必聴度

コレはライヴならでは。

スタジオの、冷静な状態での個別の「録音」では出ない、互いに触発されたプレイも多い。

ただ版権的に互いの代表曲は演っていないので、フュージョンファン目線では曲が若干物足りないが。

  • 購入金額

    2,800円

  • 購入日

    1988年頃

  • 購入場所

17人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • 北のラブリエさん

    2020/04/20

    あれ、こっちまだ取り上げてなかったんですね。
    これも大好きで聴いてます。

    矩形波倶楽部ってのがなつかしくてよいw
  • cybercatさん

    2020/04/20

    そうですね。
    こういった部分的に取り上げたものって、自分の中で「終わった」ような気になっていて...

    >矩形波倶楽部ってのがなつかしくてよいw
    そうですねぇ

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