レビューメディア「ジグソー」

合わないものはやはり合わない

ヘッドフォンマニアの間では定番ブランドの一つであるULTRASONE。しかし、私は今までこのブランドの製品を良いと思ったことがありません。いくつか試聴した製品の印象も良くなかったのですが、決定打だったのはこちらを入手したことです。

 

 

 

 

 

 

仮にもオーディオ機器である以上、ここまで原音の再現を潔く諦められてしまうと、さすがに素直に受け入れるのは難しいと感じました。どういう音楽を聴けば、この音が良いと思えるのかは未だに見いだせていません。

 

強いていえば、実質的ローエンドモデルであるGO Bluetoothを聴いたときには、少なくとも値段なりのクオリティは保っていると感じていて、これが年度末に安売りされていたときには買うかどうか真剣に考えていたほどです。

 

ただ、超ハイエンドイヤフォン、SAPHIREを聴いたときにはある意味期待に違わないULTRASONEの音で、やはりこのブランドの音を受け入れるのは無理かなと思いつつありました。

 

そこで、最後に試してみようと思ったのが、ハイエンドヘッドフォンのEditionシリーズであり、新品処分品が格安で売られていたオンイヤー型のEdition Mを入手してみることにしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相変わらずというか、こういったパッケージの演出などは上手いと思います。何となく「高いヘッドフォンを買ったぞ」という満足感は得られますので。

 

 

 

 

 

 

 

箱を開けると、ケーブルとセミハードタイプのキャリングケースが現れます。ヘッドフォン本体はこのケースの中に収納されています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真ではわかりにくいかもしれませんが、意外とコンパクトです。本体は153gと、密閉型ヘッドフォンとしてはかなり軽量に仕上げられています。表面のコーティングなども高級感があり、外観は元々10万円をオーバーしていることにも納得できるものです。

 

 

 

 

 

 

 

ヘッドパッド、イヤーパッドはエチオピアン・シープスキン・レザーで造られていて、質感は素晴らしいですね。ただ、長時間装着していると、若干蒸れる感じがあります。

 

更新: 2020/04/19
総評

リアリティにはほど遠い

それでは、オーディオ的な部分をもう少し見ていきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケーブルは着脱式で、PROシリーズ等とは異なり、ヘッドフォン側の端子はMMCX形状となります。イヤフォンでは定番となるMMCXですが、ヘッドフォンではそれほど多く採用されているわけではありません。採用例としてはSHUREのヘッドフォンSRHシリーズの比較的上位製品などがMMCXタイプですね。

 

 

 

 

 

 

 

取り敢えず純正ケーブルでしばらく試聴した後、musashino label CantabileやORB Clear Force MMCX Ver.2など、イヤフォン用リケーブルも組み合わせてみました。ただ、かなりキャラクターの強いケーブルを組み合わせても、このヘッドフォンの印象を変えるほどの変化にはなりません。

 

ヘッドフォンアンプは、普段使っているFOSTEX HP-A8を組み合わせます。また、バランスタイプのイヤフォンケーブルを試した際には、2.5mmバランス-3.5mmシングルエンド変換アダプターを介して、Acoustic Research AR-M2も使っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一言で印象を語ってしまうと、「一音ごとの質が大幅に改善したPRO900」です。PRO900はバランスの悪さだけではなく、楽器やヴォーカルの音色があまりにひどすぎて、リスニングに耐えられる音ではありませんでした。

 

その点、Edition Mはそれらの質がPRO900よりは遙かに向上していて、聴いていられないような酷い音ではありませんでした。

 

とはいえ、やはりULTRASONEなんだなと思ってしまうのは、独自機構S-LOGIC Plusによる独特の不自然な定位や、低域の特定の部分の強調感の強さ、閉塞感の強い音場などです。ケーブルをORB Clear Forceに交換すると閉塞感も多少和らいで何とか聴いていられる程度の音にはなりますが、10万円オーバーのヘッドフォンを買って我慢しながら音を聴くというのも妙な話です。もっと安くても快適に音楽を聴いていられるヘッドフォンなどいくらでもあります。

 

ヘッドフォンの頭内定位を嫌って、ULTRASONEのS-LOGICなど、いろいろな機構でそれを緩和する製品は出ていますが、現時点では頭内定位よりも不自然さが増すような定位のものばかりという印象です。JVCの各人に合わせてカスタマイズするものはさすがに試したことはありませんが。

 

ひょっとすると、EDMなどを聴いていればULTRASONEの音でもバランスが成立するのかなと思うことはあるのですが、ヘッドフォンを使うためにソースを選ぶというのも不自然ですし、少なくとも自分が普段聴く範囲の音楽で、Edition Mを快適に使うことは難しそうです。

 

もう少し印象が良ければ、個々の楽曲を聴いた際の印象について細かく言及しようと思ったのですが、何を聴いても本質的な印象は変わらなかったため、それは止めることにしました。

 

 

結論としては、私がこのブランドのヘッドフォンを受け入れることは多分不可能だということです。イヤフォンでもそうですが、どうやってもそのブランドの製品の良さを理解することが出来ないものはあります。私にとってのULTRASONEはそういうブランドであると結論づけておきます。

  • 購入金額

    25,300円

  • 購入日

    2020年03月21日

  • 購入場所

    CAVIN大阪屋

17人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (7)

  • cybercatさん

    2020/04/19

    音は感性の世界ですし、耳の構造や可聴周波数域なども個々人によって違うので、どうしても合わない音、というのはありますね。

    さすがに自分は「合わない」とわかっているものは買っていませんが、最低限ラインはクリアしているはずの1万超えの商品でも、「ただでくれても使わないなぁ」というイヤホンはいくつかあり、それは特定のメーカーに偏っている感じです。

    商品開発時にはさすがに周波数特性だけで構造を決めることはあり得ないので、各メーカーによって商品の「音決め」をしているひとはいるはずで、その人の感性や好みのジャンルと合わないんでしょうね。
  • harmankardonさん

    2020/04/19

    ゾネホンの音は特異ですからね.
    私は,DJ1PROとSignatureは好きです.
  • harmankardonさん

    2020/04/19

    改めて考えると,ゾネホンは音質ではなく音色と定位ですね.
    ハマると楽しいです.
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