この作品は、以前映画館で鑑賞しているのですが、もう一度細部に注意しながら観てみたかったということで、改めてBlu-rayを購入しました。
この作品を制作したのは、京都アニメーション。どうしても、昨年7月に起こった悲劇に触れないわけには行きません。事件後の報道にあった通り、通常は一定以上のキャリアを積んだスタッフのみがエンドロールに名前を記されるのですが、本作に限っては藤田監督の強い希望で関わったすべてのスタッフの名前が記されることとなっています。
本作はあの事件直前に完成されていたため、ベストメンバーによって制作された最後の作品となってしまいました。ただ、それだけに以前から定評のあった丹念に描写された美しい映像は、一つの到達点に達しているとすら言えるものとなっています。
内容についてはあまり詳細に触れるわけにもいきませんので、まずは今回のBlu-rayパッケージについて見ていきましょう。
このパッケージはあくまで外箱であり、この中にBlu-rayやその他添付の特典が収納されています。
こちらがBlu-rayそのもののパッケージとなります。
特典としては
・36Pオールカラーブックレット(キャストコメント等)
・46P解説付き絵コンテ集
・原作者 暁佳奈 書き下ろし短編小説冊子「エイミー・バートレットと春の木漏れ日」
・縮小版劇場版ポスターカード
・入場者特典の短編小説冊子表紙原画カード
が用意されています。
ただ、丹念に描写することでここまでの物語が創られる
あまりネタバレを書くべきではありませんので、内容の詳細については解説しません。気になる方は、京都アニメーションさんへの応援の意味も込めて、是非本作をお買い求めいただければと思います。
19世紀末のフランスをモチーフとしたと思われる舞台で、エッフェル塔をモデルとしたと思われる電波塔が建設されている最中という時代が描かれます。
なぜか主人公ヴァイオレットの義手だけが、現代よりも遙かに高水準の技術で造られているというのはご愛敬ですが、このある意味荒唐無稽ともいえるような設定すら、ごく自然に描いてしまう説得力はやはり京都アニメーションの力なのでしょう。
この作品はTVシリーズで公開されていた「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の外伝となる作品であり、主人公のヴァイオレットそのものを描いているというよりは、ヴァイオレットの存在を軸として、血の繋がらない"姉妹"の絆を描いたものとなっています。
昨今のアニメ映画に多い、スケールの大きな展開や、手に汗握るようなエンターテインメント性などは全くありません。ただ、差し挟まれる風景や植物など、すべての要素が登場人物の描写のためだけに費やされていると言っても過言ではありません。
それだけに、派手な映画では味わえないような登場人物の心情の移り変わりなどが、観ている側に直に伝わってくることで、このスケールの小さなストーリーから感動を引き出すことに繋がっているのでしょう。私が劇場で観ていたときには、それほど多くはない入場者でありながら、至る所からすすり泣きの音が聞こえていました。
以前の日記でも書いたのですが、この映画に描かれているシーンの意味を一つ一つ考えながら観ていると、文学作品を味わうことにも繋がるような読解力を求められていることがわかります。アニメ作品ではありますが、ある程度成熟した大人の鑑賞に向いた映画ではないかと思います。
なお、一つだけ注意点がありますが、添付の特典の内、書き下ろし短編小説だけは必ず本編を一度見終わってから読むようにしてください。本編のエンディングで元「エイミー」のイザベラが、どのような心情であったかがこの小説で深く掘り下げられます。エンディングを見ないと、この小説の持つ意味が半減してしまいますので…。
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購入金額
6,766円
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購入日
2020年03月17日
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購入場所
楽天ブックス
kaerkiさん
2020/03/26
うるうるした。
嫁まだいない私のPC師匠が「買え買え」とlineしてきます。困惑w
早く現実を見て所帯を持って欲しいです! とは言えない
jive9821さん
2020/03/26
まあ、私も所帯は持っていないので他人のことはとやかく言えませんが…。
ジブリや新海誠作品以外にも良質なアニメ作品があるということが、皮肉にもあの事件で知られる形となってしまった感はありますが、余計なことは脇に置いてまずは観て欲しい作品ですね。
ただ、ながら観には全く適していませんので、じっくりと観ることが出来る方にお薦めしておきます。