レビューメディア「ジグソー」

高速で飛ばしているような疾走感ある曲、闘いに臨む静かな闘志を感じる曲、戦い終わったけだるさを感じる曲...

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。音楽グループ。複数の人が関わるグループでは、グループを定常的に保っておくことは難しいモノです。それが「音」を通じて、自らの本質をぶつけ合う音楽グループであれば、なおさら。そんな音楽グループで、四半世紀以上にわたって同じメンバーで活動したグループの、「最初の」作品をご紹介します。

 

DIMENSION。世代的には、フュージョンブーム最興隆期に活動したCASIOPEAやT(HE)-SQUARE、NANIWA EXPRESSの「次の世代」で、すでに「フュージョンブーム」が過ぎた1992年からの活動となる。しかし、ブームが過ぎたあと前述の「フュージョン黄金期世代」のグループが、メンバー分裂や方向性変更、活動停止というような変化を受けるなか、不動のメンバーで活動し、ファンを獲得してきた。それが、キーボードとプログラミング担当“DIMENSIONの頭脳”小野塚晃、“DIMENSIONのフロントマン”サックスの勝田一樹、“ギターマエストロ”増崎孝司の3人。複雑なキメやトリッキーな譜割りのシカケが醍醐味のひとつであるフュージョンにおいて、あえてリズム担当がいないメロディ担当楽器3種のグループというのが新しかった(キーボードとギターはもちろんバッキングも出来るが)。

 

そんな彼らのイントロデュース、世に出た最初の円盤が本作、ミニアルバムの“Le Mans”。その名の通り、「ル・マン24時間耐久レース」のTV中継のサウンドトラックとして作られた本作、疾走感がある曲や「闘い終わったあと」というようなセンチでリリカルな曲が多く、新しい世代のフュージョングループの紹介には最適だった。支えたリズム隊は、ドラムスはラテンテイストなプレイスタイルを持つ渡嘉敷祐一、ベースが2006年の急逝まで永くDIMENSIONをサポートした故青木智仁。

 

ヘヴィシャッフルリズムが、なにかの幕開けを告げるような「Out Of Wind」。なじみやすく明快なメロディにキメの多用、トリッキーなラストなど「フュージョン方程式」を満たしていながら、ギター⇒キーボード⇒サックスとあまり長くはないソロが回され、するする曲が進むので、リズム隊の魅せ場は多くないのが、「フロント3人のグループ」というのが明確。キーボードソロの音色やベンドの使い方は、まごうことなき「あのころのフュージョン」なのだが。

 

この作品で唯一のメンバー以外の作となる「Mirage」。筆はZARDやTUBEに多く曲を提供した栗林誠一郎。角松敏生を思い起こさせるような、爽やかで少々の哀愁をもった曲だが、歌う増崎のギターが素晴らしい。リズム隊も、目立った魅せ場はないが、弱ハネの躍動感あるリズムで、軽やかなノリを出している。

 

リズム隊レス、とは言っても、メンツが流動的なわけではなく、比較的固定のメンバーがサポートすることが多いDIMENSIONだが、このデビュー作でドラムスをプレイした渡嘉敷祐一は、以降の関与の割合が比較的少ないドラマー。その彼の色が濃く出ているのが「Tornado」。ラテンフュージョンの第一人者、故松岡直也のグループでもプレイした渡嘉敷のラテンなリズムが、この作品中では特徴的。キメフレーズの前のギターのハーモニクスを使ったアーム奏法の部分はフュージョン色だが、哀愁溢れるサックスの調べや、松岡ばりのラテンピアノ、フラメンコ風生ギターのフレーズがラテンカラーが強く、いい感じ。

 

本作で支持を得た彼らは、このあと自らの名を冠した?アルバム“FIRST DIMENSION”

で正式デビュー。フュージョンロスに悩んでいたオジサンファンの獲得と、イケメンフロントマンである勝田の女性人気などもあり、四半世紀以上第一線のフュージョンバンドとして、メンバーチェンジを行わず活動してきた。

 

しかし今年初め、「不動の」メンバーから、キーボードの小野塚が脱退した。今後は増崎と勝田が「DIMENSION」として、小野塚はソロで活動していくことになるとアナウンスされた。

 

DIMENSIONは全員曲が書けるため、「メインコンポーザー離脱」というワケではないのだが、“DIMENSIONの頭脳”と呼ばれていた小野塚の脱退で、DIMENSIONカラーがどう変わっていくのか、それとも変わらないのか。

 

そんなことが気になり、久しぶりに引っ張り出して聴いた、「原点」の作品でした。

スリーブには3人の詳しいプロフィールがあるが、写真はない。あくまでサントラ扱い。
スリーブには3人の詳しいプロフィールがあるが、写真はない。あくまでサントラ扱い。

 

【収録曲】

1. Out Of Wind
2. Mirage
3. Mind Operation
4. Departure
5. Tornado
6. Silent Dream

 

“le mans”-full-

更新: 2020/03/26
必聴度

後の作品に比べると「DIMENSIONらしさ」はやや薄いが...

「王道」のフュージョンが聴かれる

  • 購入金額

    1,540円

  • 購入日

    2008年頃

  • 購入場所

19人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • 北のラブリエさん

    2020/03/27

    T-SQUAREでもF-1のサントラみたいなのありましたね。
    ってことは期待されてたんだなあ。
    あんまりDIMENSIONは知らないんですが。
  • cybercatさん

    2020/03/28

    DIMENSIONはフュージョンカテゴリーのバンドとしては少々遅れてきたので、知らない人もいるかもです。ただ所属レコード会社のビーイングの演奏部隊のような位置づけだったこともあり、知らないうちに倉木麻衣などのCDなどで彼らの演奏には触れているかもしれません。

ZIGSOWにログインするとコメントやこのアイテムを持っているユーザー全員に質問できます。

YouTube の動画を挿入

YouTube の URL または動画の ID を入力してください

動画の ID が取得できません。ID もしくは URL を正しく入力してください。

ニコニコ動画の動画を挿入

ニコニコ動画の URL または動画の ID を入力してください

動画の ID が取得できません。ID もしくは URL を正しく入力してください。

ZIGSOWリンク挿入

検索対象とキーワードを入力してください

    外部リンクを挿入

    リンク先の URL とタイトルを入力してください

    URL を正しく入力してください。

    画像を挿入(最大サイズ20MB)

    画像を選択してください

    ファイルサイズが20MBを超えています

    別の画像を追加

    ZIGSOW にログイン

    ZIGSOW会員登録(無料)はこちらから