格安の中古品を見つけて、何となく買ってしまったDAPです。
CayinのDAPといえば、フラッグシップモデルのN8がずば抜けて素晴らしい音の持ち主で、そこから製品のグレードが下がるごとに順当に少しずつ弱点が増えてくるという印象があります。
上から2番目のN6iiはマザーボード交換型であり、当然組み合わせるマザーボードによって音質は大きく異なるわけですが、先頃発売されたラダー型DAC搭載ボード、R01を組み合わせたN6iiとN8を比較試聴してみても、やはりN8の方が総合的に上回っていた印象です。
それでもN6iiは10万円オーバークラスのDAPとして妥当な実力を持ち合わせているとは思います。問題はそこから更に1グレード下がるN5iiです。Cayinの現行商品としては、本来1つ下のクラスとなるN3シリーズの最新モデル、N3 Proと近いクラスとなる製品だけに、N6iiと比較試聴すると結構な性能差を感じざるを得ませんでした。ただ、この試聴は販売店の店頭で短時間試しただけのものであり、じっくり使うことで印象が変わるかも知れないという期待もあったわけです。
外観はこのクラスの中国メーカー製DAPとして標準的な水準でしょうか、背面は結構凝った仕上げですが、総合的に見て特に高級感に優れているという印象も受けません。
注目はmicroSDカードスロットが2基搭載されているということです。公式に1スロット当たり400GBのメモリーカードをサポートしているということで、容量不足に陥る心配はまずなさそうです。
この製品のように一昔前の5~10万円クラスのDAPではmicroSDスロットを2基持っているものもあった(ONKYO DP-X1系やFiiO X5系など)のですが、近年はなかなか見かけなくなった仕様ですので、この点はメリットとなり得ます。
今回は取り敢えず、普段鞄の中に突っ込んでいるAstell&Kern AK70からメモリーカードを拝借して試聴してみることにします。
音場や間接音は悪くないがキレや明瞭度はあまり無い
メモリーカードを拝借したAK70は、若干価格帯が異なってはいますが、実際に購入を検討する際にはライバルとなり得る存在ですので、試聴時の比較相手となってもらうことにします。
試聴ソースは、いずれもレコードから起こした「Chicago XXXVI "NOW" / Chicago」や「CWF 2 / Champlin Williams Friestedt」などを使いました。
イヤフォンは、写真にある通り64AUDIO U4にWAGNUS. Petit NEUTRON Lilyを組み合わせているものを使いました。
N5iiとAK70とを比較すると、両者の持ち味が全く異なっていることが判ります。AK70はやや細身で明るくキレの良い音、N5iiはふくよかで音場の奥行き感は出ているものの、やや不明瞭でキレがあまり感じられない音になります。いずれも最低域の深さや、最高域までストレス無く伸びる高音という要素はあまり感じられず、レンジ感は程々程度です。
今回試聴したソースはロック系が多かったため、率直にいえばAK70の方が得意とするソースが多かったように思います。ただ、AK70は奥行きが無く平面的に感じる部分があるため、楽曲によってはN5iiの方が魅力的な場合があるというところです。
恐らく当時新品でこの両者を検討していたとすれば、私は恐らくAK70の方を選んでいたでしょう。N5iiの音には派手さが無いため、店頭で試聴すると印象が弱く感じられるという側面も否定できません。しかし、その当時はTOTOなどの楽曲で比較することが多かったため、じっくり聴き込んでもAK70優位は動かなかったと思いますが。
N5iiは部品構成などから考えれば意外なのですが、高域方向のクリアさがあまり無いのです。空気感の表現はまずまずですし、音場が左右だけでは無く前後にも展開しているのはAK70を上回る点なのですが、定位もビシッと定まるわけでは無く、輪郭がぼやけたような定位となります。
購入価格からすれば素晴らしいが
今回は中古品とはいえ、1万円を大きく下回った購入価格ですから、その価格を踏まえた上で判断すれば素晴らしい製品といえます。
新品当時は実売価格が5万円弱で、AK70よりも1万円程度は安かった訳ですが、その当時の価格で比較してもコストパフォーマンスは優劣つけがたいレベルだったのではないかと思います。いずれも2.5mm4極バランス端子を装備していて、当時のバランス接続対応DAPとしてはローエンドクラスに位置していたことになりますが、バランス接続の優位性が感じられる程度には仕上がっています。
N5iiのD/AコンバーターはESS9018K2Mで、私自身このDACを搭載したDAPは何台か使ってきましたが、他のESS9018K2M搭載モデルと比較しても、N5iiの音質傾向はかなり独特といえます。Cayinは元々真空管を採用したオーディオ機器を得意としているブランドであり、N5iiは真空管とは関係ない製品ではあっても音色傾向はそちら寄りということなのかも知れません。
機能面では、メモリーカードスロット2基というアドバンテージがあり、Bluetooth 4.0もサポート、DSDはDSD256(11.2MHz)まではネイティブ再生、WAVは64bit/384KHzまでサポートと、表記上の数字は見事です。機能面での充実度はクラスを大きく超えているといえるでしょう。それだけに、そのスペックに見合ったほどではないという音質だけが残念なところです。
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購入金額
8,000円
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購入日
2021年07月01日
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購入場所
eイヤホン
harmankardonさん
2021/07/13
Cayinの音が気になって,入手しました.
このDAPのネックは,起動時間が異常に長いことだと思っています.
jive9821さん
2021/07/14
気にならなかったのですが、確かに長いと言われれば長いですね。
そういえば、文中で触れたFiiO X5シリーズなどは結構その辺りは
優秀だと思います。X5 3rdは買ったまま殆ど使っていないので、
レビューを掲載することすら忘れていました…。