レビューメディア「ジグソー」

いつも新たなことに挑戦するCandy...今度はヴォーカルだ。

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。長い芸歴をもつアーティストは時代の要求などに合わせて、方向性を調整していることが多いものです。あまりに違ってもそれまでのファンが離れていくため、その調整は緩やかであることが多いものですが、アルバムごとに大きく方向性を変えて新たな魅力を見せ、ファンに驚きと興奮を与えているアーティストがいます。そんなアーティストの作品をご紹介します。

 

Candy Dulfer。父親(Hans Dulfer)も現役のサキソフォニストだが、その父に連れられて11歳で初レコーディングを果たした彼女は、2020年2月現在御年50歳の現役プレイヤー。ソロでの頻繁なライヴと、女性ばかりのソウルヴォーカルグループ、Ladies of Soulのヴォーカリスト&サキソフォニストとしても活躍している。

 

彼女の名が、日本において識られたのは1993年の2ndアルバム“Sax-a-Go-Go”に含まれる表題曲が車のCF曲に使われたとき。時代はフュージョンからスムーズ・ジャズに動き始めていたが、日本ではまだT-SQUAREのF1テーマ曲などのヒットもあり、熱くビートが訴えるフュージョン~ソウル系ジャズというのが一定の支持を得ていた。当時24歳という彼女の愛くるしい外見と相まって人気を博し、以降何度も来日している。

 

そんな彼女の2017年リリースのソロアルバムが“Together”。この前作、2014年の“Crazy”

でもクレイジィな変化を魅せてくれた彼女だが、今回はLadies of Soulでの活動に刺激を受けたのか、ガッツリとヴォーカルがフィーチャーされている。何曲かはヴォーカリストがフィーチャレングされているが、自身でも歌っている。もともと彼女の楽曲はサビやキメフレーズがコーラスのものも多く、それに彼女も参加している...というタイプの曲も多かったが、今回は完全なヴォーカル曲というのも多い。そして、以前のアルバムより確実に歌が上手くなっている。

 

出だしの「How It's Done」でガッツリヴォーカルが入っているのに驚く。Candy姐さん若い!!アルトも泣きまくりで、エロくヴォーカルに絡む。最初期からの制作メンバーであるUlco Bedも入っているけれど、今まで曲よりかなり縦ノリ。これはドラムスにYoran Vroomと作曲者(共作)のDennis Letnomの二人がクレジットされているので、どちらのテイストかわからないけれど。

 

ブラコンテイストの「Promises」。この一曲だけ聴いて、サキソフォニストのソロアルバム曲だと思う人、どれだけいるのだろう?中間部のソロ~ラストのブラスにかぶせながら入っていくサックスのラインはさすがのセンスだけれど、ヴォーカルがメイン。しかもカッコイイ!リズムもシンべとエレベが絶妙にまじりあっている。

 

Together RMX」は表題曲のリミックスだが、曲全体としては元曲より良いかも。元曲はCandyのヴォーカル...というかコーラスが入っていたが、このリミックスでは全カットされていて、女声は全くなし。つまり、「vAn」ことIvan Perotiの男声ヴォーカル曲になっていて、Candyはそれにエロ絡みするサックスのみという感じだけれど、追加されたアコギ(エレアコ?)風の音色の響きがよく、こっちのアレンジの方がCOOL。ただ、Candyの登場比率は下がっているので、だから「Bonus Track」なのかな。

 

自分は、一番ファンキィな作風だったころのインスト曲プレイヤーとしてCandyを識ったので、どうしてもそのあたりを求めてしまうが、彼女の現在の考えとしては、曲を表現するのには歌でもサックスでもどちらでもよい、というスタンスみたい。このアルバムでは、歌とサックスの主従が、明らかに歌>サックスとなっている曲すらある。でもそれが妙にしっくりくる曲が多いのがクヤシイ←w

 

Candy姐さん、次はどちらの方向に参りましょうか...?

 

Candy姐さん、まだまだ現役です。
Candy姐さん、まだまだ現役です。

 

【収録曲】

1. How It's Done
2. Together (feat. vAn)
3. Show Ur Id
4. Age
5. Sincerity
6. After Tonight (feat. Rico Greene)
7. Out of Time (for P) (feat. vAn)
8. What U Do (when the Music Hits) (feat. Andy Stewlocks Ninvalle & vAn)
9. Promises
10. L.O.V.E. (feat. vAn) [Intro]
11. Hold Up (feat. Chance Howard)
12. So Close
13. D.I.S.C.O.
14. L.O.V.E. (feat. vAn) [Outro]
15. I Cannot Believe

16. Together RMX (feat. vAn) [Bonus Track]

 

「Promises」

更新: 2020/02/25
必聴度

いにしえの「フュージョン」を求めるなかれ

Candyは常に変化している。変化し続けている。

  • 購入金額

    2,700円

  • 購入日

    2017年06月17日

  • 購入場所

    TOWER RECORDS

14人がこのレビューをCOOLしました!

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