レビューメディア「ジグソー」

オールドカートリッジにビンテージワイヤーの味を

先日試聴会に参加して、その独特の鳴りっぷりが気に入って購入したJICO製SHURE V15 typeIII向け交換針「VN35-KUROGAKI」ですが、自宅で聴いているとややその味が薄いような気がしていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元々プレイヤーがTechnics SL-1200GでフォノイコライザーがPhasemation EA-200ですから、どちらかといえばHi-Fi調のトーンでまとまる分、独特の味が薄れるのは理解できるのですが、あまりにもそれが薄まってしまうと折角のKUROGAKIが活きません。

 

V15 typeIIIはヘッドシェルにaudio-technica AT-LS13、リード線にaudio-technica AT6101を組み合わせていましたので、手っ取り早く性格を変えるにはリード線の交換が効果的だろうということで、最近おなじみとなっているKS-Remastaさんのヤフオク出品分から選ぶことに。

 

今までは現代的な高性能線材を採用したリード線を選んできましたが、今回はV15 typeIIIの雰囲気を演出するためのリード線が良いということで、ビンテージワイヤーを使ったものを選ぶことにしました。以前イヤフォンリケーブルでビンテージワイヤーを選んだことがありますが、このときにも万能性という意味では落ちるものの独特の持ち味には十分魅力が感じられましたので、ある意味同じような効果を期待しての選択です。

 

 

 

 

 

 

ヤフオク出品分でもビンテージワイヤー採用のものの選択肢はいくつかあったのですが、今回は商品説明にある音質傾向から「ビンテージの定番 WE & NASSAU シェルリードワイヤー」という出品名の製品を購入しました。型番はKS-VWS-1024Nとなります。

 

更新: 2020/01/20
総評

やっと「V15 typeIIIの音」に

今回は予めV15 typeIII+AT-LS13で使うことをお伝えしていたため、チップ部がその組み合わせに沿った太さにチューニングされていて、極めて簡単に取り付けができました。この辺りのきめ細かいサポートはとても有難いところです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

線材はAWG24と細めではありますが単線ですので、見た目よりは結構硬いものです。普段使っているリード線よりは曲げる加工がやや大変でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

組み合わせるヘッドシェル、audio-technica AT-LS13と。AT-LS13は以前中古で買ったカートリッジに付いていたもので、純正のリード線からaudio-technica AT6101に交換してありましたが、それをさらにKS-VWS-1024Nへと交換しました。

 

 

 

 

 

 

 

まずはヘッドシェル側へ組み付けます。

 

 

 

 

 

 

 

 

カートリッジ側に結線します。多くの場合、ヘッドシェル側とカートリッジのターミナルピンとの間でクロスするように結線されますので、ここでのリード線の曲げ方にも多少の工夫が必要になります。まあ、昔からカートリッジを頻繁に取り替えていたようなレコードユーザーであれば何ということも無い作業なのでしょうけど…。

 

 

 

 

 

 

 

 

組み付けが終わり音を出しているところです。

 

取り敢えずの慣らし再生を始めた時点で、今までとは全く違った音になっていることに気付かされます。

 

AT6101で使っていた時には、淡泊でメリハリが無く、何となく寝ぼけたような音だったV15 typeIIIが、若干粘っこさを感じるベースラインの帯域など特徴は残しつつも、一気に躍動感あふれる音へと変わっているのです。

 

VN35-KUROGAKIを装着して、KS-VWS-1024Nと組み合わせたV15 typeIIIは、エネルギーバランスがやや低域寄りで、ベースラインの弾力感が特徴的です。その分やや高域方向が奥に引っ込む感じではあるのですが、決して出ていないわけでは無く、やや控えめに感じられる程度です。

 

ヴォーカルの質感の良さはVN35-KUROGAKIのキャラクターなのかもしれませんが、「Agent Provocateur / Foreigner」を再生すると、あのルー・グラムの粘っこいヴォーカルが映えます。

 

ただ、VN35-KUROGAKIは針先が丸針でることも影響しているのだと思いますが、どうしても微細な音は拾わなくなったなという感じはあります。直前に付いていた針がV15 typeIII用でも最も現代的Hi-Fiサウンドとなる、JICO製ジルコニアSAS針なので、余計にそう感じられたのかもしれませんが。

 

リード線をビンテージワイヤーに替えたことで、やはり時代なりのレトロ感が出てきた感じはあります。今までV15 typeIIIを使っていても、音に古さは感じられても「古き良き」までの印象はありませんでした。しかし、リード線を交換してからは「古き良きMMカートリッジの音」になっていた感じがするのです。同じプレイヤーで同じレコードを再生しても、現代的なMCカートリッジである、audio-technica AT-OC9/IIIとは全く違った表現となります。

 

 

 

 

 

 

当然、オーディオ的に正確なのはAT-OC9/IIIの方でしょう。再生するレコードが優秀録音盤であればAT-OC9/IIIの正確で緻密なHi-Fiサウンドが活きることの方が多いのは間違いありません。しかし、古いレコードに音質の良さでは無く雰囲気を求めるのであれば、KS-VWS-1024Nを組み合わせたV15 typeIIIはかなり魅力的な音に仕上がっています。

 

KS-Remastaさんで購入したリード線では初めてのビンテージワイヤーとなるため、「今までのリード線とは全く違う音になるのでご注意ください」とメッセージをいただいていましたが、純粋な高音質とは異なる、この独特の味に魅力を感じられるかどうかでしょう。

 

今回はJICO KUROGAKIの持ち味を引き出すための選択でしたので、これで正解だったと思います。

  • 購入金額

    3,000円

  • 購入日

    2020年01月14日

  • 購入場所

    ヤフオク

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