先日アナログプレイヤーTechnics SL-1200Gと、フォノイコライザーPhasemation EA-200の間を接続するRCAケーブルを、NEUMANN製からVan Den Hul製D102MKIII HYBRIDへと交換しました。
これにより音場の密度が濃くなり、楽器やヴォーカルの質感も向上したとは思うのですが、特に高域方向の解像度がやや低くなった気がしていました。D102MKIII HYBRIDは結構古い製造分を中古で購入しているので、劣化がある可能性は否定できません。
そこでもう少し新しいケーブルを用意しようとは思ったのですが、何分D102MKIII HYBRIDは元々1mで3万クラスのケーブルですから、下手に入れ替えただけではむしろグレードが下がってしまう恐れもあります。かといって、より高いケーブルを買う予算などあるわけがありません。
そこで以前から気になっていた、SUNSHINE製のケーブルを試してみようと思いつきました。SUNSHINEは元々マグネシウム製のオーディオアクセサリーを、圧倒的な低価格で投入したことで存在感を持ったブランドです。私も同社製のターンテーブルシートを愛用しています。
そのSUNSHINEが、電源ケーブルSAC-Reference 1.8を投入したことでオーディオ用ケーブルにも参入してきました。もっとも、これはSUNSHINEと協力関係にあるケーブル・アクセサリーメーカーであるTIGLONが開発・製造したハイコストパフォーマンス製品をSUNSHINEブランドで販売するというのが正確なところのようです。
SUNSHINEブランドのケーブル製品の大きな特徴は、導体となる銅に米国General Electric由来のDIP Forming 無酸素銅(DF-OFC)材を利用していることです。簡単に説明すると、薬剤処理を行わず銅の純度を上げることで、素材本来の特性を発揮させると共に、表面を滑らかに仕上げることが出来るため信号伝達がスムーズに行われるという特徴を持つ素材です。通常は異種金属を組み合わせた導体を製造する場合に使われる製法だそうです。
このDF-OFC材に、TIGLONが他社と共同開発したHSE(Hyper Saturated Energizer、超飽和電流型ケーブル活性装置)処理を施すことにより、ケーブル内部のストレスを低減し、単結晶状態に近づけているとのことで、従来であればTIGLON製の高価なケーブルで無ければ導入されない素材や技術を、一般的な価格帯で惜しげ無く投入したものとなっています。
さらに、RCAケーブルとなるSRC-Reference 1.0では、プラグの影響も強く表れる性質を鑑みて、RCAプラグには金メッキ絶縁体フッ素樹脂を採用していて、平凡な見た目に反してかなり尖った仕様であることが判ります。
今回はこのSRC-Reference 1.0が諸事情により特売されていたため、これを購入して早速D102MKIII HYBRIDと差し替えてみました。
鮮度の高さ、力感は特筆に値する
先日オーディオユニオン アクセサリー館で、2日間にわたりオーディオサクセサリーメーカー各社によるリレー試聴会が開催され、その際に数社からお買い得品が店頭に持ち込まれたようです。
SUNSHINEでは、このSRC-Reference 1.0とACケーブルのSAC-Reference 1.8、マグネシウム製アクセサリーを用意したようで、両製品ともパッケージ無しの処分品が普段よりも安く放出されたと思われます。
ただ、その場で全てが売り切れたわけでは無く、余ったものが通販に掲載されて購入可能となっていたため、それを見つけて急遽購入することにしたのです。本来は年明けに買いに行くつもりでした。
「パッケージ無し」という表記は伊達では無く、本当にビニール袋に無造作に入れただけという状態でした。もっとも、SUNSHINEの製品は元々装飾されたパッケージなどは用意されていませんので、大差ないといってしまえばそれまでなのですが…。
メーカー希望小売価格18,000円というケーブルですが、せいぜい1m4~5千円という程度の見た目ですね。率直に言って高級感はありません。
SUNSHINEのロゴの横にHSE by TIGLONと書かれています。実際には設計も製造もTIGLONと、SUNSHINE自身が明かしていますが…。
一見ごく普通のRCAプラグですが、これが実はこの製品のDIP Forming、HSEと並ぶキモとなっている、金メッキ絶縁体フッ素樹脂採用プラグで、ここにかなりコストを割いているとのことです。
取り敢えず、しばらく慣らし再生をした後で、「Desert Rose / Sting」(アルバム「Brand New Day収録」)を比較試聴してみます。
すると一聴して大きな違いがあったのはベースラインの力感と明瞭度です。何処となく淡泊さがあったD102MKIII HYBRIDとは異なり、グイグイと迫ってくるようなベースです。
そしてヴォーカルが入ってくると、声の質感に大きな差がつくことに驚かされます。SRC-Reference 1.0の音を聴いた後では、D102MKIII HYBRIDでは、ヴォーカルが薄い布の向こうで歌っているように感じるほどでした。SRC-Reference 1.0では一気に肉声に近づいたような感覚を受けます。
音場も広さがそれほど違うわけではないのですが、音の密度がSRC-Reference 1.0にすることで大きく向上します。ひょっとすると、RCAケーブルで扱う信号としても、特に微小信号となるアナログプレイヤーからの出力で使ったことで、通常よりも差がはっきりと表現されたのかも知れません。D102MKIII HYBRIDも今までCDの出力などで使っている限り、それほど弱点が目立つケーブルではなかったのですが、アナログプレイヤー-フォノイコライザー間で使うと、細かい部分ではあるものの今までよりも不満が目立つ結果となってしまいました。
強いていえば、SRC-Reference 1.0の音はエネルギー間に優れ鮮度も良いため、上品さのようなものは感じさせず、良くも悪くもストレートな音というイメージを受けますので、好みによってはこの音がしっくりこないという方もいらっしゃるかも知れません。
個人的には、SL-1200Gで求めていた方向性に沿った変化でしたので、文句なしに高評価です。
約2ヶ月経過後の変化
導入後約2ヶ月が経過しました。
アナログ盤再生には温度も結構大きく影響しますので、極端に寒い日などはあまり鳴らし込みが出来なかったのですが、最近になって明らかな音質上の変化が出てきましたので、その点についてここで追記しておきたいと思います。
まず最も大きく変化が見られたのは低域で、明らかに沈み込みが深くなり、マグネシウム製ターンテーブルシートの効果と相まってSL-1200Gの特徴であるやや軽めの低域という印象が無くなってきました。ヘッドフォンで聴いていても低域のパワー感や深さが変わったのが実感できるほどですから、かなりの変化量ではないかと思います。
また、導入直後よりも音場の広さも一回り以上は広く感じられるようになりましたし、導入直後から感じられていたヴォーカルの鮮明さなどは相変わらずはっきりと実感できています。
強いていえば、相変わらず良くも悪くも脚色が無い音であり、雰囲気の付け足しのような効果は期待できず、淡々と正確な信号を伝えているという印象です。ケーブルに何らかの音色の変化や付け足しを期待するのであれば、あまり選択するべき製品では無いということでしょう。
個人的には期待していた通りの傾向になってきましたし、購入価格からすれば文句ない完成度のケーブルと思っています。
ただ、この製品は販売価格に比してかなりコストが高いとのことで、残念ながら次回出荷分より値上げが入ると告知されました。次回出荷分が出荷される前に購入予約した客には旧価格で販売するという措置は執られるそうですので、気になっている方は今のうちに購入予約されておくと良いかもしれません。
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購入金額
9,800円
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購入日
2019年12月23日
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購入場所
オーディオユニオン通販
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